4,なに言ってるんですか艦長!

「貴様に用はない」

 マスラー総統の映像に向かって西郷艦長は吠えた。

「安心な場所から顔出ししおって、卑怯者! こっちは第一線で戦っているんだ。外野はさっさと引っ込め!」

「ふん。強がりを言っていられるのも今のうちだけだ。オソロシヤ艦隊の力を思い知るがいい」

 憎々し気に言い、マスラー総統の顔が、スクリーンから消えた。


「おい、しっかりしろ!」

 先ほどの衝撃でシートから転げ落ち、頭を打ったクルーが眼を開けない。脳震盪でも起こしたのか。

「困ったな、いい狙撃手なのに」

 その声に、内田が挙手した。

「僕、やります」

 クルーもクラスの皆もハア、な顔だが、

「シューティングゲームといっしょだよ」

 ふてぶてしく言い、席に着く。豪語した通り、正確にオソロシヤ艦隊の戦闘機を落としていく。


 艦体が、また大きく揺れた。

 爆音と衝撃。

「左舷上部に被弾!」

 悲痛な声が響く。

「バリア張れ! 全艦、ミサカを援護せよ!」

 なんとしてもミサカを守らねばらない。ミサカは防御バリアを張って攻撃に耐え、その間、他艦が攻撃に専念する。

 シサカ、ゴサカ、ムサカ、シチサカ、ヤサカ、そしてクサカ。

 すべての艦が全力を尽くし、バリアもよく持ちこたえたが、ついに綻びが発生した。すかさずそこを狙うオソロシヤ軍。

「これまでか」

 西郷は死を覚悟した。が、激しい閃光と衝撃と共に大破したのは、シサカだった。ミサカを守るために敵弾の前に立ちはだかったのだ。

「四ツ谷ーっ!!!!」

 士官学校からの親友・四ツ谷岩男が艦長を務める艦がやられた、ミサカを守るために。クサカの艦長・九里頼馬よりまは、口惜しさに、血がにじむほど唇を嚙んだ。


「艦長、あれを!」

 九里が絶叫する。

「あれを使ってください、もうそれしか」

「そうだな、確かにもう、あれしかない」

 艦長がつぶやく。

 大久保はぎょっとして、

「あれって、まさか」

「そう、そのまさかだ」

「無茶です。まだ実験段階だ」

「どのみち、このままでは我が艦隊は全滅だ。他に道があるか」

「くっ」

 このやり取りを見ていた佐藤があきれ顔で、

「これマジ実戦? 普通、グダグダやってるうちに撃沈されてるよ」

「艦長。シサカの、四ツ谷の弔い合戦をさせてください!」

 九里の訴えに、西郷は静かに、

「わかった」

 と答えた。

 いちかばちかだ、あれを試そう、それでダメなら華々しく銀河に散ろう。

 西郷は、全艦に伝えた。

「変身!」

「なに言ってるんですか艦長!」

「やかましい!!」

 西郷は、大久保を殴り倒した。

 命を受けたミサカ艦隊は、猛スピードで姿を変えていく。




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