11《クエストをする前に》

 ここはランズベール村の北東側にある草原。その近くには森があり、その奥に願望の宝玉があるとされる洞窟がある。



 あれからリューセイ達は冒険者登録をすませ登録証水晶のペンダントの使い方を聞いた。


 その後ルドフから、なんのクエストをするのかを聞きこの草原にくる。



 リューセイ達五人は森を目の前にし、どうするかと話し合いをしていた。


「まさか、いきなり宝玉を取ってくるクエストとはな」


 地べたに座りアベルディオは、そう言い森のほうに視線を向ける。


「ああ。マスターに言われた時は、まさかって驚いた」


 リューセイは自分の剣と盾のチェックをしながらそう言った。


「そうですねぇ。本当に、今の私たちの力で、宝玉を手に入れる事が出来るのでしょうか? それに、どのくらい魔法が使いこなせるか分からないのですが」


「イシスの言う通りだね。僕も、まだこのクロスボウの使い方も分からないしなぁ」


 そう言いながらユリエスは、背負っていたクロスボウを両手で持つとみる。


「確かにな。それに無策で動くのも得策じゃない」


「珍しいですねぇ。クライスが冷静に物事を考えているなんて。雨が降らなければいいのですが」


 イシスは両手を前に出すと、雨が降らないかと心配そうな表情で空を見上げた。


 そう言われクライスはイシスの腕をつかんだ。


「おい! イシス。俺をなんだと思っている!?」


「ちょ、離してください! なんだと聞かれましても。そうですね……。今のほうが、いつものクライスらしいと思いますが」


 そう言い返されクライスはイシスを離すと疲れた面持ちになる。


「はぁ、なるほどな。俺は、イシスにそんなふうに思われてたってことか」


「クライス。僕もだけど。多分、みんなもそう思ってると思うよ」


 ユリエスはニカッと笑いながらそう言いきった。


 するとクライスは、リューセイとアベルディオのほうに視線を向ける。


「リュー、アベル。おまえらもそうなのか?」


 そう聞かれリューセイとアベルディオも、そう思っていたが口に出せなかった。そして、どう返答したらいいのかと困惑しその場で固まる。


「……おい、二人とも。なんでそこで黙る! って、まぁいいか。それより、どうする?」


「そ、そうだな。んーこの際だが。お互いフォローし合いながら、行ける所までトライしてみるっていうのはどうだろう」


 そう提案するとアベルディオは四人を見まわした。


「ほう。さすがはアベル。それはいい案だ。確かに、おまえが言うように、ここで議論しているよりもそのほうがいいかもな」


 クライスはそう言いニヤリと笑みを浮かべる。


「じゃ、役割を決めないとな。そうなると。俺の装備はこの剣と盾だ。って事は、前線で魔獣と戦ったほうがベストか」


「ああ。リューはそのほうがいいだろう。んー俺はこの大剣だが。盾がない分、思いっきり剣をぶん回せる。だが、魔獣の攻撃をモロに受けやすいのがネックだ」


「そうなると。クライスはリューセイのあとか、一緒に前線でってのがいいのかもしれない」


 アベルディオは、真剣な面持ちで考えながらそう言った。


「そうだな。まぁ、状況に応じてにはなるが。その時、どっちにするか判断して行動するつもりだ」


「それがいいだろう。そうなると俺は……」


 アベルディオは回復を優先するか、付与系のほうに重点を置き行動したほうがいいのかと悩んでいる。


「アベルディオ。私はどうしたら?」


「イシス。そういえば、おまえは攻撃の魔法を実際に使った事がなかったんだったな」


「ええ。ですので、どうしたらいいのかと」


 イシスは不安な表情で問いかけた。


「そうだなぁ。クエストの前に、俺が教えてもいいが」


「それは助かります」


 そう言いイシスはアベルディオに軽く頭を下げる。


「ん〜僕はどうしよう?」


「ユリエス。使い方が分かればいいのか?」


「うん。リューセイ、この使い方って知ってるの?」


 ユリエスはそう言いリューセイのほうを向いた。


「使った事はない。だけど、父さんが使っているのを見てたから。ある程度なら分かる」


「そうなんだねぇ。じゃ教えて!」


 そうユリエスが言うとリューセイは、うんと首を縦にふる。


「じゃ、俺は……。そうだな、素振りでもしてるか!」


 そう言いクライスは、リューセイ達からすこし離れると大剣を構え素振りを始めた。


 その後リューセイ達は、各自クエストを受けるための準備を始める。


「……みんな。気づいてるよな?」


 リューセイが小声で言うと四人はうなずいた。


 そうその時五人は、自分たちを監視するある気配を察知する。だが、わざと気づかないフリをした。




 一方ルルカは、草原にそびえる大きな木に隠れながら、そんなリューセイ達を目を輝かせながら見ていた。


(いよいよね。彼らが願望の宝玉がある、あの洞窟に……。って! せっかく私がうわさを流したのに。結局は父様が依頼してしまったみたい。

 でも、まぁいいわ。これで彼らの活躍が見られるし)


 そう言い五人に熱いまなざしをおくる。


 そしてルルカは、五人がその場から動くまでずっとこの木に隠れていたのだった。

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