10《村に残りし言い伝え》
ここはギルドマスターの部屋。
リューセイ達は、ルドフからいろいろと話を聞いていた。
「じゃ、俺たちが今身につけている装備って」
そう言いリューセイは、自分が身につけている装備に目をやる。
「なるほど。もともと、ここの倉庫に眠っていた伝説の……って!? じゃあ!」
クライスはそう言いかける。
「もしかして!? それって、勇者の装備ってことだよね!」
だがユリエスは、クライスが言い切る前に割って入り、身を乗りだしながらそう言った。
「いや、すまん。勇者ではなく、英雄の装備なのだが。まぁ、似たようなもんか」
「だが、なんでこの村にある? それもギルドの倉庫に」
リューセイは、不思議に思いそう問いかける。
「詳しく話せば長くなる。だが、おまえ達はその装備を纏うことができた。そうなると、ちゃんと教えておいた方が良さそうだな」
思い出しながらルドフは説明し始めた。
__約七百年前。かつて、この世界がそれほどまだ発展していなかったころ。
この村に王都ロゼレイヴィアから、一人の神官が伝説の装備をたずさえ派遣されてきた。
そうそれは、ある予言をこの村に伝えるためである。
その者は、村の皆を集めると話しだした。
『これは、神ルビス様からのお告げです。主は、この世界の終わりと始まりを告げる時。五人の英雄がいにしえの装備を纏い王都に現れる。……と仰せになられました』
それを告げるとその者は、手に持っていた五つの装備を村長にあずける。
そしてその者は、ここがその始まりの地になるだろうと言い王都に戻っていった。
数百年がたちその五体の装備は、いつしか冒険者ギルドができギルドマスターの手に渡る。
そう力のある者が、英雄を見極め渡した方がいいだろうという事になったからだ。
なぜそうなったのか。それは、かつて英雄の装備の噂を聞きつけた強者たちがこの村に押し寄せた。
だが誰一人として、その装備を着こなす事ができない。それに、その英雄の装備には透明な宝玉がセットになっていた。そう、それが願望の宝玉だ。
この英雄の装備を託した神官は、当時の村長にこう言い残した。
『もし装備できる者が現れた時、この宝玉が反応しその者に試練を与える。それを乗り越える事ができた者こそが英雄となる者です』
その事を代々村長に語られる。
そのため仮に装備できたとしても、この宝玉に選ばれ尚且つ試練を乗り越えた者でなければならないのだ。
この村にギルドができたころの村長は、強者が集う場所で、強くて信用できる者であるならばこの装備を預けても大丈夫だろうと思った。
そういう経緯があり、英雄の装備はギルドで管理することになる。
願望の宝玉は、それだけを狙う輩が多く、当時のギルドマスターが洞窟に封印した。
そして、神官が残した予言を忘れないためにこの村には、代々そのことを語り継ぐ習慣が根付いた。__
ルドフは話し終えると、はぁ〜と溜息をつく。
「……ってことだ。だがそれを、あの予言者かぶれがぁ。わが娘ながら、さすがにイタ過ぎるわい。あきれて怒る気力さえ失せた」
「そうだったんですね。ご心労、お察しします」
軽く頭を下げるとアベルディオは、視線をルドフに向ける。
__って。勇者かぶれの一人である、あんたがそれを言うんかい!
「ああ、いや大丈夫だ。まぁ、それよりも。状況がどうあれ、おまえ達はその装備を手に入れた」
ルドフは一呼吸おき五人を見回した。
「これで、英雄となる第一歩を踏み出すことになる。だがおまえ達には、冒険者登録をすませたあと、二つほどクエストを受けてもらいてえ」
「クエストって。依頼のことですよね」
そう言うとリューセイは、真剣な面持ちになりルドフに視線を向ける。
「ああ、そうなる。ってことで、早速だがおまえ達の登録をしなきゃな」
そう言いルドフは、登録に必要な書類を五人の目の前に一枚ずつ並べると、説明しながらテーブルの上に置いてある巻物を持った。
「それは、なんの巻物でしょうか? 見たことのない色ですが」
イシスはしろみがかったキレイな巻物をみて魅入っている。
「これか。この巻物は、水晶を加工してつくったものだ」
「水晶を加工って!? そんなことが、可能なんですか!」
信じられないと驚き、アベルディオはそう問いかけた。
「まぁ、驚くのもムリねぇか。これは冒険者ギルド連盟が、冒険者の能力を測定するために特注でつくったものだからな」
「冒険者ギルド連盟って!?」
クライスは驚き身を乗りだすとそう問いかける。
「そうか。その様子じゃおまえ達、何も知らねえみてぇだな」
そう言うとルドフは、冒険者ギルド連盟のことについて話し始めた。
「……そうなると。その連盟に属しているギルドなら、どこでも報酬がもらえる」
「いや、アベルディオ。それだけじゃない。
リューセイは、今までの不安がウソのように消え急にワクワクし始める。
そして五人は、さらにルドフからいろいろと聞き手続きを始めたのだった。
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