加藤さん side.

第7話


「……そう。」


私は、冷静を装い自分のパソコンに向き合うと、急いで授業の準備を進めた。少し動揺していたのが、バレたかもしれない。




新城竜也。


私の心を乱している、その人の名前だ。


前期で、私はその人―――新城くんを見たことはなかった。多分、違う学科なのかもしれない。友好関係が薄い私には、彼がどの学部・学科なのか、見当もつかない。

彼は、大学デビューの王道を行く人に見えた。が、ある意味「イタイ人間」には見えなかった。鮮やかに染められている金髪は、彼にとても似合っていたし、オシャレな服装も難なく着こなしている。顔も綺麗な部類に入るし、きっとモテたのだろうと予想できる。





『俺、加藤さんのこと、好きになったんだ。』


――――そんな彼から告げられた数日前の言葉が、私の脳裏にはあった。


『え…?』

『俺、初めて人を好きになったんだ。それが加藤さんなんだ。』

『……』

『付き合って…くれませんか?』


何度思い出しても鮮やかなそれは、私の顔を何度も赤面させるには十分過ぎる力を持っている。思い出す度に、嬉しい思いが募ってしまう。

ただ――――その言葉を、私は受け取っていない。


『新城くん…私、恋愛無理なので。お断りします。』


もしこれを聞いた人がいたら、「なんで?」と間髪入れずに聞いてくるだろう。また、それを聞いた唯一の彼自身も、驚いた表情を私に向けていた。

それを見た途端、「ごめんなさい。」という気持ちと、「これには訳があって。」という言葉が浮かんだ。

それでも、私はその言い訳を言わず、すぐにカバンを持って講義室を出た。




きっと私は、彼から嫌われてしまうのだろう。

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