加藤さん side.
第7話
「……そう。」
私は、冷静を装い自分のパソコンに向き合うと、急いで授業の準備を進めた。少し動揺していたのが、バレたかもしれない。
新城竜也。
私の心を乱している、その人の名前だ。
前期で、私はその人―――新城くんを見たことはなかった。多分、違う学科なのかもしれない。友好関係が薄い私には、彼がどの学部・学科なのか、見当もつかない。
彼は、大学デビューの王道を行く人に見えた。が、ある意味「イタイ人間」には見えなかった。鮮やかに染められている金髪は、彼にとても似合っていたし、オシャレな服装も難なく着こなしている。顔も綺麗な部類に入るし、きっとモテたのだろうと予想できる。
『俺、加藤さんのこと、好きになったんだ。』
――――そんな彼から告げられた数日前の言葉が、私の脳裏にはあった。
『え…?』
『俺、初めて人を好きになったんだ。それが加藤さんなんだ。』
『……』
『付き合って…くれませんか?』
何度思い出しても鮮やかなそれは、私の顔を何度も赤面させるには十分過ぎる力を持っている。思い出す度に、嬉しい思いが募ってしまう。
ただ――――その言葉を、私は受け取っていない。
『新城くん…私、恋愛無理なので。お断りします。』
もしこれを聞いた人がいたら、「なんで?」と間髪入れずに聞いてくるだろう。また、それを聞いた唯一の彼自身も、驚いた表情を私に向けていた。
それを見た途端、「ごめんなさい。」という気持ちと、「これには訳があって。」という言葉が浮かんだ。
それでも、私はその言い訳を言わず、すぐにカバンを持って講義室を出た。
きっと私は、彼から嫌われてしまうのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます