第3話


加藤さんは、そこから何度か顔を合わせたり話したりする機会があった。


「新城くん。この文章、語尾が変な形で終わってるけど。」

「あ、ミスったわ。」

「中間レポートも大切になってくるから、気は抜けないよ?」

「はいは~い。加藤さんも気を付けて。」

「分かってる。」


相変わらず、加藤さんは冷たいし、まるで先生かのようにアドバイスをしてきた。俺はそれに対し、別に嫌な思いはしなかった。第一、大学に入学して女子と話すこともあまりなく、大学で仲の良い異性の友人ができていたわけでもなかったので、加藤さんから話に来てくれることは悪くなかった。


それに…俺は加藤さんと接するうち、いくつか彼女のいい所を知った。


一つ目に、彼女はルックスがいい。2020年に入ってから、世間ではマスク必須の世界になったため顔全体は見えていないが、彼女は目元がとても綺麗だった。くっきりとした二重に大きめの涙袋があり、それが化粧か何かでさらにくっきりとして見えている。


二つ目に、彼女は仕草が綺麗だった。髪を耳に掛ける動作はもちろん、パソコンで文章を打ちこんでいる時も、彼女とても綺麗だった。何が彼女をそうさせているのかは分からないが、彼女の行動は、綺麗だった。


三つ目に、彼女は言葉遣いが丁寧だった。冷静ゆえにグサッと刺さる言葉も多いが、彼女は「これ以上は言わない」といった、節度をわきまえる能力にも長けていた。幸い俺には、回りくどく言われることよりも端的に言ってくれた方が楽な性分なので、彼女との会話には苦労しなかった。




そんなことを考えるうちに、俺は、彼女のことが好きになっていることに気づいた。




―――そして3回目の授業が終わった時に告白し、振られ、今に至るわけだ。

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