車内恋愛

 私は恋をする。ほとんど知らない相手、電車内でしか知らない相手。彼は普段もう一人の女性と登校している。私はそんな彼の笑顔が好きだった。もう一人の女性はきっと幼馴染だろう。その女性もまた、彼に恋い焦がれていた。私はわかっていた。この思いは秘めていたほうがいいと。先約は彼女なのだ。私は首を突っ込んではいけない。そうわかってもなお、彼のことを想うことはやめられなかった。


「いやでもさぁ、彼女はまだ別れて三か月もたってないじゃないか。」


「でも美優、すきだー!って屋上で叫んでたよww」少し笑って


「漫画かよwwそうかぁ、そんなものか、僕にはわからないなぁ」


「まぁ颯太彼女いたことないもんねww」少し小ばかにするように笑う。


「おっ?やるか?ぼこぼこにするぞ?ww」冗談交じりの二人は


「おらっ!デュクシwデュクシww」とても楽しそうに見えた。


「やめっww優月ちゃん、めーっ!!」


「犬みたいに言うなしwwあとちゃん付けすなww」


 毎朝こんなやり取りをして、電車の中に入っていくのだ。もちろん、私も電車に乗るが、彼らを見るのはむかむかするので、別の車両に入った。この光景を見ればわかるとおり、彼らは青春を全うしているのだ。でも、対する私は、特にそういった話はない。ただ日々が過ぎていくだけなのだ。そんな中に現れた恋心。私は強く揺れた。

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