情恋の話
現貴みふる
図書室の二人
図書室で一人で本を読んでいた。いや、待っていた。彼女は僕の前の椅子に座り、その黒く長い髪を縛り、勉強し始めた。読書中は集中してるから話しかけないでと言ったから、彼女はもくもくとペンを動かした。実は僕、全然集中していない。しいて言うなら、彼女のことを考えるのに集中している。その髪、唇、きれいな肌、匂い、雰囲気、笑顔。彼女が心底好きであった。理想の女性などいなかった。彼女と出会ってから、彼女が理想の女性になった。少し頭が悪くて、可愛くて、優しくて、たまにはしゃいで、かと思ったら急に気持ちが落ち込んで、慰めたら甘えてきて。そんな彼女が好きであった。僕が本を閉じると彼女はこう言った。
「おもしろかった?」ペンを消しゴムの上に置いた。
「うん。まぁけどこれは駄作だね。主人公が馬鹿すぎる。」僕は本の背をなぞった
「そっちじゃない。君、ずっと私のこと見てたでしょ。」微笑。ばれてたか、、
「いや、君が解いてる問題が面白くてね。」彼女は少しほほを膨らまし
「ごまかさすな!私のこと、舐め回すような目で見てたくせに。」指をさされた。
「そんな目してたかなぁ、、」彼女はスマホを取り出し
「これだよ?」写真を撮られていたようだ。確かに、これは舐め回してる。
「そんなおふざけしてないで、君は少しは課題を進めたらどうだい?理数科系と社会科系は教えてあげるからさ。」彼女はスマホをしまい
「ぐぬぅ、、」彼女はしぶしぶといった顔で課題に取りかかる。
僕は今が一番幸せだ。新しい本を読みだす。もうどんな本でも関係ない。彼女が隣にいて、笑ってくれるだけでいい。告白はできない。本当に隣にいてくれるだけでいいのだから。
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