第3話 七咲先輩が居場所に……………?
「ふ〜食べた食べた〜!」
「凄い食べっぷりでしたね先輩」
「いっ、言わないでよ///」
七咲先輩は顔を赤くしながらそう言う。俺はそんな七咲先輩をみて昔の姉さんを思い出した。姉さんは俺の三歳上で七咲先輩の一つ上になる。姉さんはいつも俺に笑顔を向けてけれた。照れた笑顔、幸せそうな笑顔、純粋な笑顔、とても言い表せないほどの笑顔をくれた。その姉さんはもういない。だから俺は笑顔を作れない。笑えないんだ。もう。
「それじゃ私はコッチだから。今日はホントにありがとうね」
「いえ。もう付きまとわないでくださいよ先輩」
「……………分かってる。もう付きまとわないよ」
「じゃぁね!橘くん!」
「はい。先輩」
七咲先輩は俺に手を振り走っていく。俺はその背中に軽く手を振りながら見送った。俺も帰ろうとして振り向こうとしたときふと足元に視線が行った。そこには七咲先輩のハンカチが落ちていたのだ。
(今から追いかけるか……………明日渡しに行ったら絶対めんどうになる)
俺はそう考えてハンカチを拾い七咲先輩を追いかける。追いかけていくと人気のない公園に誰かと入って行くのが見えた。俺は嫌な予感が頭をよぎっていた。姉さんも人気のない公園で変なことをされ生きるのをやめた。俺が気付けなかったばかりに姉さんは4冊の小説を残して死んで。病気で弱っていたこともあったのだろうが…………………………。
「はぁ………………仕方ないか」
俺はその公園に入って行く。辺りはかなり暗くなってきていた。もう5時半を過ぎている。七咲先輩は一人の男と一人の女と話していた。
「ちょっと志織さ〜。今日何してたのよ」
「私が何をしていようが勝手でしょう」
「なら私がコレから何させるかも勝手よね?」
「はぁ?!フザケてるの?」
「ならさ〜。あの子から手を引きなよ〜」
「はぁ?」
「一年の橘くんだよ〜。私が狙ってたの〜」
「振られたしもう付きまとう気も無いわよ」
「そう言ってまたまた〜」
「本当よ!」
「仕方ないな〜。嘘つくんだったら〜。いいよがずやく〜ん」
「へ〜こんなに可愛い子をいいのか?」
「好きにしちゃって〜」
「へへ。楽しめそうだな」
がずやと呼ばれたその男は私の手を強く引っ張ってどこかへ連れて行こうとする。私は身の危険を感じたが相手の力のほうが強いから私は何もできなかった。私は涙を流していた。その時、あの子の声が聞こえてきた。
「ちょっと待てよ」
「アァ?」
「透くん!」
「た、橘くん?!」
「………………くだらなくてつまらなくてしょうもないことしてんなお前ら。んなことして楽しいのかよ」
「なっ…………………」
「んだとガキ!」
「その手を放して失せろ。俺の怒りを買いたくないならな」
「チ。黙らしてやらぁ!」
「いいよ。別に」
俺は適当に煽る。男は俺の挑発に乗ってくる。チョロいし沸点が低すぎる。こんな事でキレていては身が保たないだろうに。自分で言うなもおかしな話だが俺は天才だ。だから予めパトカーのサイレンの音を5分後になるように設定してある。だからこそ更に煽る。男は完全にやる気だった。
「それじゃいいこと教えてやるよ。もうすぐ警察くるぞ」
「何をふざけたことを言ってやがる!」
「ん?ほらほら〜。どんどんちかくなってくるんじゃねーか?」
「チ。覚えとけよ!」
男は逃げて行く。まさか少し聞こえただけで逃げていくとは。ヘタレでクズなやつはどこもかしこも一定だな。
「あ!あの!橘くん!私と付き合ってほしいの!」
「断る。アンタに興味もネーし、こんな汚い手を使っといてよくもヌケヌケと言えるわな。俺はお前らのような奴らがこの世の中で一番嫌いなんだ。嫌い?いや、消えていいと思っている」
「なっ…………!!覚えてなさいよ!」
そう言うと女はどこかへ行ってしまう。俺は七咲先輩に視線を向ける。七咲先輩は泣いていた。それだけ怖かったのだろう。姉さんもこれくらい怖かったのかもしれない。泣きながら必死に助けを呼んでいたと考えると俺は胸が痛くなった。
「と、と…………お、る…………………くん」
「ゆっくり、落ち着いてください先輩」
「うっ……………………ウグッ。ウワーン!怖かった、怖かったよとおるくん!!」
七咲先輩はとにかく泣き叫ぶ。俺は七咲先輩を優しく抱きしめる。七咲先輩は俺に抱きつきながら泣き続ける。七咲先輩が落ち着くまで俺は待っていた。
「はぁ……………ヒクッ………はぁはぁ………。あり………か、と。とおるく、ん……………………」
「無理しないでください先輩」
「う、ウグッ。れ、れも……………………」
「……………………いいんです。とりあえず家は遠いですか?」
「そ、その………。お願いがある、の………………」
「なんですか?」
「親が、いなくて………………」
「俺の家に泊まって行ってください。気にしないでくださいよ」
「う、うん……………………!」
俺は七咲先輩をおんぶして俺の家まで行く。
(なんで俺は先輩に頼まれて了承したのだろうか………。おそらく姉さんに重ね合わせたのだろう。全く……………………)
俺は先輩をなだめたあと七咲先輩のためにベッドをきちんと整える。俺は布団をしいている。七咲先輩は怖いという言葉で表せない程の恐怖を味わっただろう。だからこそ俺は七咲先輩をベッドで寝かす。それで俺の冬休みが賑やかな毎日の始まりになルノだった。
俺の新たな居場所…………………。俺はそれをまだ受け入れることはできなかった……………………。
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