第2話 先輩との待ち合わせ

六時限目が終わり終業式が終わる。この高校は終業式でも授業がある。なぜなら勉強をしない日はほとんど無いからだ。だから終業式も10分程度で終われるように校内放送でされる。普段はここですぐに変えるのだが俺は帰らない。なぜなら七咲先輩との約束があるからだ。俺は教室で待つ。スマホを操作してSNSを見る。俺は趣味で曲を投稿しているのだがその曲への感想を見ていた。書き込みには、『何この鋭い曲!』『なんか寂しいけど癒やされる』『曲だけで人殺せるんじゃね?』『なんか吸い込まれそう』などなどの書き込みがされていた。

(こんなくだらない物によく熱中できるな)

俺は冷ややかに書き込みを見ていく。『安心して練れそう』『憂鬱になる曲だ』『悲しんでるね』

(?!)

俺は一つの書き込みに目を留めた。『悲しんでるね』その書き込みに俺はなぜか悪寒を感じた。

「おまたせ〜」

「あ、先輩。案外早かったですね」

「うん!そりゃ当然じゃんか!」

「はぁ。そうですか?それじゃ行きますか」

「うん!」

俺は先輩と学校を出て行く。

「寒っいね。今日は特に」

「そこまで寒くないですよ?」

「君は体感温度が狂っているのか?」

「別に。寒さと暑さに極端に強いだけです」

「それを体感温度が狂ってるって言ってるの」

「そうなんですね」

「冬より冷たいね〜君は」

「そこまで酷くないですよ」

「そこまでだよ?」

「そうですか。なら」

俺は七咲先輩に自分がしていたマフラーをまいた。

「ふぇ?くれるの?!」

「あげませんよ。俺の大切な物の一つですから」

「な〜んだ。でもありがとうね」

「別にいいですよ」

「それじゃ急ごっか」

「分かりました」

俺は七咲先輩に付いて行く。七咲先輩は楽しそうに俺の隣を歩いている。七咲先輩はとてもウキウキに話している。俺は特に話もせずにただ話にあいずちを打つ。そうして25分ほどして七咲先輩が行きたがっていた店に着く。

「ここですか?」

「うんうん!ここだよ〜!」

「で、さっさと済ませましょうよ」

「そうだね!行こ橘くん!」

「はいは……うぉ。引っ張らないでくださいよ」

「いいじゃない!」

「何がですか?!」

先輩は俺の質問に答えずに店に入って行く。

「いらっしゃいませ。カップル様ですか?」

「はい!」

「へっ………………はぁ?!」

「二階の三番席へどうぞ」

「はい!」

「お、おい…………俺は別に!」

「いいからいいから!」

どうやら一回が、酷い方向に向かってしまったようだった。

「ふんふふんふふ〜ん♪」

「お、おい七咲!」

「やっと名前で呼んでくれたね、橘くん」

「は、はぁ?!」

「ふふっ。やっとカップルみたいになったね!」

「おい、コラふざけんなよ。俺は…………!」

「しっ。今回だけでいい。だからここで食べたい物があるの」

「うぐ………………。今回だけですよ」

「もちろん!」

俺はその言葉を聞いて仕方なく席に着く。七咲先輩は楽しそうにメニューを見る。俺はその七咲先輩をみて罪悪感を覚えた。やがてメニューが決まったのか店員を呼ぶ。

「ストロベリーパフェとロイヤルレモンティーで、橘くんは?」

「コーヒーで」

「かしこまりました。少々お待ちくださいね」

「はい!」

「……………」

「どうかした?」

「別に。ただなんで俺だったのか気になっただけです」

「私っていないんだよね。友達も大切な人も、さ」

「そうですか」

「うん。だから、さ。今日だけでも確かったよ」

「そうですか」

やがて頼んだ物が来る。俺はコーヒーを飲みながらスマホを操作していた。七咲先輩はストロベリーパフェをとても美味しそうに食べている。とても幸せそうに。俺が捨てた『幸せ』を感じながら食べる姿はとても見られなかった。その時七咲先輩は唐突にこんな事を言い出した。

「今日はありがとうね。とても楽しかったよ、橘くん」

「もう付きまとわないでくださいよ」

「分かっているよ。私は約束は守る」

「ならいいんですがね」

「心配症だね〜橘くん」

「付きまとわれるとめんどくさいだけです」

「分かったから楽しも?」

「……………分かりました」

俺はそうしてスマホをしまいコーヒーを飲む。俺は七咲先輩を見つめる。先輩は相変わらず美味しそうに食べている。

「ん、んん?そ、そんなに見ないでよ。食べられない///」

「すみません、つい」

「う、うん。だいじょぶだけど///」

先輩は照れながらおとなしく食べだした。俺は七咲先輩から目を放して外を見る。外は少し暗くなっときていた。それも当然だった。もう4時を過ぎているからだ。とりあえず今日を耐えればいつも通りの日常に戻れる。そう思っていた。だから……………。だから俺に簡易的でも居場所をくれた七咲先輩には感謝しかなかった。

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