第23話 四章③『世界救済機構――アルカディア――』

 「世界救済機構『アルカディア』――――それがボクの所属している組織の名前だよ」

 目の前にいる病田の表情はとても穏やかだった。

 この混沌と化した場所で気味が悪いほどだ。

 「ある、かでぃあ? って何だよそれ」

 洸太郎は拳を握る。

 先ほどの禍神との戦闘で災禍狩具を全て失ったので今彼の攻撃手段はその身一つしかなかった。

 「フン、貴様が

 大和が忌々しく吐き捨てる。

 その言葉に病田は顔を歪める。

 「イカれた……………だって?」

 その華奢な身体つきならは想像できないほどの殺気が向けられる。

 「おいおいおいおい! どういうこった!? 説明しやがれッ」

 一人置いておかれている洸太郎は何が何だか分からない。

 大和は病田から目を離すことなく、その世界救済機構というものについて語り始める。

 「世界救済機構『アルカディア』………………要するにを目標として掲げているイカれ組織だ。その世界創造の為にと妄言を垂れる奴らだ」

 「な――――――――――」

 あの地獄が…………必要なシステム?

 言葉を失った。

 正気なのだろうかと問いかけたかったが上手く言葉が出なかった。

 「あのさ、さっきから聞いていればイカれてるって―――――本当にキミたちは

 病田は両手を挙げ演説を始める。

 「この世界はね病んでいるんだよ」「何でって?」「決まってるじゃないか」「こんな身体になった時」「誰も助けてくれなかったッ!」「世間はこの体質のボクを」「遠くから見てるか」「石を投げるか」「実験材料モルモットとしてしか見ない!!」「何故?」「どうして?」「ボクが何をした?」「これは何かの試練?」「だったら!!」「ボクは」「私は」「ワシは」「ボクたちは」「私たちは」「ワシらは」「あぁ」「この悠久のときを生きる」「我らにしか出来ないことを」



 「だから―――――この身を禍神あなたに捧げます」



 最早これは呪詛だった。

 目の前で病田凪は女に、男に、老人に子供に成人に小さく大きくまるで聖人のように魔人のように変わっていく。

 狂気に彩られたに恐怖した不動大和は災禍狩具を展開する。

 術式を展開、籠手を地面に叩きつけ石柱を繰り出す。

 洸太郎も遅れずに一瞬で病田凪との距離を摘める。

 二人のタイミングはこれ以上ないほど完璧だった。

 だが、



 「躾がなってないなぁ……殺し合う時は名乗り合うのが礼儀だろう? ボク? 『世界救済機構アルカディア』三柱の一人、〝時を統べる使徒クロノス〟」



 ブツンッ、それはまるでチャンネルが切れたときの感覚に似ていた。

 二人の意識はそこで途切れた。

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