第18話 三章③『とある少年との邂逅』
地元でも有名と言えば有名だった〝彼〟は気になる話を聞いたことがあった。
それは自分の舎弟たち(本人たちが勝手に言ってるだけなのだ)が束になっても勝てない相手がいると聞いたことがあった。
彼は幼少の頃から
理由は? と聞かれれば特にないのだが、敢えて言うならその生き様とでも言うべきなのだろうか。
別に喧嘩無双を繰り広げて有名になりたい不良だとか、この町の頂点を目指すなどそんな理由なら自分もそこまで興味は出なかっただろう。
遠目でその少年を見たことはあったが第一印象はどこにでもいるような〝普通〟の少年だった。
一対一なら難なく勝ち、それが二人や三人なら辛うじて、それ以上になってくると地形やその場にあるものを利用して何とか勝ちにいく―――――そんな彼と喧嘩をしたい、そう思うようになってきたのだ。
なので約十日ほど前に自分が住んでいた地域で神災発生、及び禍神の顕現と言う知らせを受け、しかもその場には自分を慕ってくれた自称舎弟たちが巻き込まれたときいた時は流石に気が少し動転してしまった。
なのに、
現場に向かえば見知った少年が素手で禍神とやりあっていたのだ。
何とも言えない複雑な心境だった。
その少年は自分の知り合いを助けた。
しかも自分に敵意のあった不良十人全員をだ。
その少年は大した訓練を受けずに禍神とやりあった。
結果、途中で乱入してきた〝戦神〟がトドメを刺していたが。
その少年は人助けするのに理由はいるのか? と言っていた。
何故か自分とは面識もなければ会話をしたことがないが、何故か誇らしくもあり、少し嫉妬をしてしまった。
そう、
結局はその
「
舞い散る礫を矢に変換し大砲のように発射する。
無数にも変換された礫の矢は禍神の赤く燃える禍核に吸い込まれるように突き刺さる。
グギャオオオオオオォォォォォォッッッッッ!!
効いているようで全く手応えがない。
これが
籠手型の
しかも、
「また来る―――――ッ」
禍神は巨腕を振りかぶり、またも大気を叩きつける。
それによって大気が震え衝撃波が大和を襲った。
「グッ!?」
鍛え上げた強靭な肉体も体内から撃たれるとダメージが尋常ではない。
思わず片手を地面に着いてしまった。
「これは―――――厄介だな」
得意の接近戦に持ち込もうとするも両の巨腕が邪魔をし、それを避けれたとしても身体から生えていた十対の腕が邪魔をする。
運良く掻い潜れても禍神の剥き出しの禍核が異常に硬いのだ。
「一人では無理か………………いや」
災厄は突然やって来る。
禍神を討伐するのに準備不足などと通用はしない。
結局は不意にやって来るこの災害は突然、忘れた頃にやって来るものだ。
不意にあの少年ならばどう戦うのか、と考えてしまった。
力もなく、ただただ今出来ることを全力でやりきった少年ならばどうするか? そんな事を思ってしまった。
「ふん………………末期だな」
再び拳を構え『明王』に刻まれた
さて、どうするか? と大和が次の一手を考えていたときだった。
グッ、アアアアアアアアアアアアアアアア!!
禍神は対の巨腕を大きく振り上げた。
そして、
単純にその腕を振り下ろし地面に叩き付ける。
ズンッ!
ズズンッッ!!
ズズズンッッッ!!!
地面に波紋は広がり、
そして――――――――――。
巨大な地震が周囲に起きたのだ。
「な――――――――――」
想定外の攻撃に大和は不意をつかれた。
周囲の建物は倒壊し全てを巻き込もうと襲いかかる。
大和は『明王』を振りかぶり地面に拳を叩き付ける。
すると石の柱が倒壊する建物を支え大事には至らなかったが、
「しまっ―――――」
その一瞬を禍神は見逃さない。
大和が倒壊する建物を支える為に石柱を繰り出した事によって逆に身動きが取れなくなったのだ。
岩色の禍神がクラウチングスタートの体勢を取る。
ならばこの先に何をしてくるかが大和にも分かってしまった。
ゴッッッッ!!
大地を捲り上げ突進する禍神は弾丸のスピードで大和に向かう。
どうにか退避を考えたが今大和が集中を切らせば石柱は崩れ倒壊する建物に押し潰される。
詰みだ。
そう覚悟を決めた大和は全身に力を入れる。
どこまで耐えることが出来るか分からないが何もしないよりマシだ。
次に来る衝撃を受け入れる覚悟を決めたとき、禍神の攻撃を受けようとする刹那、
「どっ、せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいッッッッッ!!」
トドメを刺す瞬間の僅かな隙を突き禍神の身体を大槌が突き刺さる。
激しい衝突音が響き、禍神の巨体が横に吹き飛んだのだ。
何が起きたのか?
そう疑問を持つ大和だったが目の前に現れた大槌を携えた少年が立ち塞がり声をかけてきた。
「一人でやらせて悪かったな。でもこっからは俺らの反撃だ―――――まだ立てるか?」
少年、百鬼洸太郎は不敵に、素敵に、無敵に笑いながら不動大和に手を差し伸べた。
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