第16話 三章①『第二次神災――フェーズ2――』
最初に見た時は〝岩山〟を連想した。
それほどにそれは巨大だった。
次に腕が見えた。
ただしその一対の巨大な
そして別に十対の小さな腕が身体から生えていた。
身体の中央には禍神の弱点でもある禍核が剥き出しで炎のように赤く輝いていた。
まず、異変に気付いたのは試験の様子をモニター越しに見ていた神代と美穂だった。
「か、じろ―――――さん………………」
「美穂ちゃんアナウンスで彼らに試験は一時中断を伝えて。それからすぐに現場に行こう。アレはマズイ」
二人の様子に見学客も騒ぎ始める。
それもそのはず。
本来の試験は大蛇型禍神の討伐三体、及び仮想神災を鎮めるものだったのだ。
仮想神災に至っては
しかも、追い討ちを掛けるように禍神も同時に顕現したとなると―――――。
「(今日の編入試験を狙った? 第三者が絡んでるってことかな。しかもあの禍神―――――明らかに
どうか間に合ってほしい。
神代はそう願わずにはいられなかった。
一方で――――――――――。
六メートルはあろう体格に洸太郎は言葉を失っていた。
ただ言えることは、
先ほどの大蛇とは違いプレッシャーが段違いだ。
足が疎んで動けなかった。
「これはこれは」
それでも、病田は落ち着いた声を出していた。
「試験にしてはかなり難易度が高そうだねぇ」
余裕があるのか片手には銃型の災禍狩具をくるくると回している。
すると、異形の禍神を見つけた他の受験者たちが集まってくる。
「こんなところにも獲物がいたぞ!」
「こいつさえ祓えれば………………」
「全員で囲め!」
騒ぎを聞き付けた七人はそれぞれ手に武器を持っている。
大槌を持つ者もいれば槍や剣、楯なども持つ者と様々なデヴァイスを装備していた。
それもそのはず、ここにいる者たちは全員鎮守になるための訓練を受けているのだ。
自分が出なくても上手くしてくれる――――――――そう思っていた。
しかし、不安は隠せない。
何か嫌な予感がする。
そう思っていると、
『緊急です! 受験者のみなさんは早急に退避してください!! 只今この場所で
美穂の慌てたアナウンスが流れたと同時に禍神が先手を打った。
禍々しい大腕に力を入れ何もない空間を叩きつけるような仕草をすると、ドォン! と大気が震えた。
身体の芯に響く衝撃が洸太郎を含む周囲にいた者を覆うかのように広がっていく。
「がッ!!?」
声が出ない。
平衡感覚を失った洸太郎は膝を着く。
「(な、んだ――――今のは)」
体内の水分に衝撃が迸ったような感覚。
よく見ると我先にと先走った他の受験者たちは血を流して倒れている。
「いやぁ~、凄いねぇ」
病田も洸太郎と同じように膝を着いていたが、顔色が悪い。そんな洸太郎の意を汲んだのか病田は続けた。
「ふふっ、ごめんねぇ。ボクは身体が弱くてね…………遠距離系のデヴァイスしか使えないんだけど、まさか向こうも遠距離で攻撃してくるなんて、ね」
そう言うと病田は倒れ込んだ。
「やま―――――」
駆け寄ろうとするも岩色の禍神はどうやら獲物を逃がすつもりは無いらしい。
もう一度その腕を振りかぶると、とどめを刺そうと大気を震わせる。
ヤバい、
そう覚悟を決めた時―――――。
「
ゴッバッッッッッッッッ!!
誰かの声が響いたとき炸裂音と共に洸太郎の脇を大きな塊が通り過ぎ禍神を吹き飛ばした。
何が起きた? と疑問を持つ洸太郎の隣に誰かいた。
「無事なようだな」
それは先ほど洸太郎とぶつかった大男だった。
「アンタは?」
その質問に対して答えるつもりが無いのか大男は両手に装備された黄土色の
「アレは俺が相手をする」
無表情のまま男は禍神に向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます