第9話 一章④『決着、そして』
百鬼洸太郎は化け物に対し拳を握りしめていた。
その辺にいる不良とは違う
数年前に潰れてから誰も立ち寄ることが無くなった工場には古びた重機や錆び付いた機械などが置かれていた。
障害物になるだろうか? そう思った洸太郎だが、その考えは甘いとすぐに思い知った。
アアアアアアアァァァァアアアアアアアアアッッッッッ!
雄叫びを上げる化け物はまるで紙を千切るかのようにその辺の重機や機械を破壊していく。
「ぬおッ!?」
思った以上の俊敏さに驚きながら洸太郎はその飛んでくる破片をかわしていく。
「(クソがッ! なんつー無茶苦茶な事をしやがるッッッッッ!?)」
普通なら工場にある重機類などを投げ飛ばす者など存在しない。
当たれば一発でアウト。
「ったりめぇだ!!」
そう、これは不良の喧嘩ではない。
相手は〝神〟の名が付く化け物なのだ。
「(師匠の言葉を思い出せ! 冷静に相手をよく見ろ!!)」
心は熱く、そして頭は冷静に、心頭滅却を以て
逃げの一手にしかなす術が無いことを知った化け物は不快に嗤う。
そして、化け物が油断した瞬間を洸太郎は逃さなかった。
「ここ―――――だッッッッッッ!!」
化け物の死角になる部分を先程までのやり取りで洸太郎はある程度目安を付けていた。
そして、彼の手には鋭利に尖った木材が握られている。
それを振りかぶり、化け物に付いている人型の頭部と胴体の付け根に射し込む。
黒いもやに吸い込まれるように木材は突き刺さり、やがて固い部分に到達する。
「見つけ―――――た!!」
『禍神』やどういった原理か不明だが『禍神』には共通して〝
それを破壊すれば消滅出来るのだが、それはあくまで『対禍神特殊部隊』が使用している
そう、人間は決して神には勝てないのだが、
「お、あ――――――――――」
ミシリ、と乾いた音が耳に届いた。
その音が何なのかは洸太郎よりも、化け物が一番知っている。
何故なら自分の禍核にヒビがいき始めている感触が全身に伝わったからだ。
慌てて木材ごと洸太郎の腕を掴むがそれよりも速く、
「ああああああああああああああああッッッッッッ!!」
パキンッ! と乾いた音が響いた。
確かな感触と共に化け物の身体がピタリと止まった。
――――――――――――――――――――――。
静寂が辺りを支配する。
そして、
静かに化け物はその場に崩れ落ちた。
「―――――っはッ!」
心臓が破れんばかりの勢いで鼓動を打つ。
今まで色々と喧嘩はしてきたが
人間でも禍神に勝つことが出来る――――――今回はその事が証明出来たのだ。
「う、ぐぅっ」
身体が重く息苦しい。
例え初期神災とはいえ普通の人間なら身体はとうに限界なのだ。
それは洸太郎も例外ではない。
一気に緊張が崩れてきたのか足元がふらふらとしてきた。
「あ、やべぇ………………」
膝を付き、呼吸を整えようとするが―――――
ハァァァァァッッッ―――――
背後には完全に崩れ去っていない化け物が体勢を整えていた。
「く、そっ――――」
洸太郎が足に力を入れようとするも動かない。
勝った―――――そんな風に嗤う化け物がその強靭な腕を振り上げたとき、
「詰めが甘い―――――そう言いたいけどよくやったよ、少年」
そんな声が耳に届いたと同時に化け物の身体に無数の線が
その瞬間化け物は粉微塵に吹き飛ばされていた。
風圧に目を閉じたがうっすらと見えた先には男が立っていた。
無精髭を生やしていて、くたびれた灰色のスーツを身に纏っている男を洸太郎は知っていて―――――。
「やぁ少年、さっきぶりだね」
片手には歪な形をした刀剣を携えている
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