第5話 序章⑤『それはおわりでありはじまり』

 さて、ここで百鬼洸太朗なきりこうたろうという少年について少し説明をしておこう。

 彼は真面目な生徒かと言われれば彼の通っている学校関係者は口を揃えてこう言うだろう。

 ふざけるな、と。

 洸太朗は別に自分から喧嘩を売ったりだとかそんな事はしない。

 ただ自分を育ててくれた師匠から使と言われたことを真面目に聞いた結果が彼の現状だった。

 イジメられている人を助けた結果、彼が標的になったりする場合もある。

 ただしやられたらやり返すというのが洸太朗なので永遠にループしてしまう。

 結果として町中の不良から目を付けられ要らない喧嘩もしてしまうのがいつもの日常だった。

 それは休日に勘違いで学校に来てしまったが、珍しくバスを使っても変わらないみたいで―――――――――――。

 「ぎゃんっ!?」

 町でも使われなくなった廃工場にて短い悲鳴が上がった。

 辺りには悶え苦しんでいる若者が死屍累々と化していた。

 その数おおよそ十人。

 真ん中で立っている洸太朗は汗一つ掻いていなかった。

 「なぁ、今日の百鬼さんは非常にへこんでいます。休日に間違って学校に行こうとするわバスで変な二人には絡まれるわってもうそりゃ大変な朝だったんですよ? なのにへこんでるとこわざわざ喧嘩売ってくるお馬鹿さんたちはいるし……って聞いてる?」

 洸太朗の呟きは誰も聞いていない。

 ほぼ洸太朗の八つ当たりも入っているのだが喧嘩を売ってきた相手は十人全員のびている。

 「はぁ、今日は散々だ」

 平日と休日を間違え、珍しくバス通学にしようかと思ったら変な二人組には絡まれ、帰ろうと思ったが途中で小腹が空いたのでこれまた珍しく商店街に立ち寄ったら数日前に喧嘩を売ってきた他校の不良が絡んできてめんどくさくなり少し黙ってもらった。

 「ってかイマドキ廃工場に呼び出しって……………昔のヤンキー漫画じゃないんだから」

 もう今日は素直に家に帰ってふて寝でもしようかな? と洸太朗が思っていたら妙な違和感を覚えた。

 「ん?」

 その違和感は倒れていた不良から感じる。

 なにやら変な―――――――――――というよりもうっすらとだが陽炎のような湯気が立っている。

 そんな不可解な現象に洸太朗は背筋から嫌な汗が噴き出てきた。

 「(なん、か)」

 彼の記憶の奥底に眠っていたものが溢れ出てくる。

 あれは―――――――――――――――――――――。

 「ッッ!!」



 ブワッと陽炎が爆発したように広がった。



 その現象を

 十年前、その現象を彼は見ていた。

 忘れもしないを世間ではこう呼んでいる。

 「〝神災しんさい〟―――――――――――」

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