第3話 序章③『この出会いは果たして?』

 百鬼洸太朗の住んでいる場所は都会というほどでもなく、少し寂れた感じの残る町並みだった。

 学校に行くにも自転車やバイク、通学用バスで通わなければ不便な場所にあった。

 洸太朗の場合は本人が急ぐような性格ではない為徒歩、もしくは自転車のどちらかが通学手段だった。

 だが、今日は気分的に洸太朗は数ある登校手段から珍しくバスを選び他の生徒たちが待つバス停で時間をつぶしていた。

 特にする事も無く自身の携帯電話を片手に操作しネットに溢れているニュースを眺める。

 大体は先日、都内で起きた〝神災〟関連のニュースで内容は今朝方やっていたものばかりだった。

 他は最近頭角を現しているアイドルの特集や、どこかの国の王族が日本にやってきたなどというものだったので特に興味を無くした洸太朗は携帯を閉じバスを待っていた。

 「ってか美穂ちゃーん。車は出なかったわけ? おじさん歩くの辛いんだけど」

 「神代さん、何度も言ってますが美穂ちゃんと呼ばないで下さい。セクハラで訴えますよ?」

 ふと、聞き慣れない声がする方に視線を向けると、これまたこの町では見かけない男女がバス停に向かってきた。

 男は無精髭を生やしていてくたびれた灰色のスーツを身に纏っている。

 対して女性は紺色のスーツに身を包んでおりシワが一つもなくピシッとしていた。

 端から見てもまともな二人とは思えず、不倫旅行だろうか? などと少し不安にしていると二人は洸太朗の横に並んだ。

 「しっかし、ホント何もない所だねぇ…………少年もそう思うだろ?」

 「うぇっ!?」

 突然話しかけられて戸惑う洸太朗に隣にいた美穂という女性がため息をついた。

 「神代さん。いきなりで反応に困っているじゃないですか…………ホント死ねばいいのに」

 と、とんでもない毒を吐き出した。

 「えーっ、良いじゃん。ってか美穂ちゃん毒がきついよ?」

 神代かじろと呼ばれた男がそんな事を言っている間にバスはやってきた。

 今から一緒に乗るのは気が重いと感じた洸太郎だった。

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