第22話 吸血鬼の本能

 ここは堕落した気配とは無縁な場所だったようだ。街は夜が訪れ、繁華街の熱気が盛り上がり始める時間には、もう寝てしまったらしい。

 夜の眷属である私には、ここからが活発になるというのに。

 街の夜は心地よく、私の本能を開放する世界となる。


 しかし、その本能を封印してもうどれくらいになるだろうか。

 今となっては、生きて知る者はいなくなり、まだ眠りに就いている始祖たちを起こさない限り、私の本性を知る者はいないだろう。

 その者の中でも、吸血鬼である仲間も滅ぼされた者も多く、寿命を全うしようと自ら飢えて滅んだ者もいた。


 自らを擁護するわけではないが、私は、最初から血に飢える獣のような存在ではなかった。

 強欲な始祖の子孫により、戦奴隷として生かされ、戦いに明け暮れた日々を送っていた時、敵の血を吸い、本能に溺れる狂った獣になった。


 全てを奪われ、恨みという生を得た事もある。しかし、戦争に打ち勝ち、全てを終えた瞬間、全てを失った気がして自ら眠りに就こうとした事もあった。

 勝つためだけに、私の中の始祖の血を蘇らせ、敵を打ち破った私の魂は濁り、何もする気が起こらなくなっていったな。

 生に喜びを見い出せれず、ただ飢えを抑えるにだけ生きる私は、生に絶望したからだ。


 方法がないわけではない、死んで眠り復活する時には生まれ変わるのだ。

 もしくは、強大な力を付け、始祖の遺伝子を超えさえすれば、自らの獣を抑えられる。

 そして、始祖の血を濃い私は、死んでも滅びることは無い。

 そのうち強大な力を得て、始祖の血に打ち勝ち、自由を勝ち取った。


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