第20話 賊狩り再び

 ドローンからの連絡で、衛星の反対側に対艦砲の設置が完了したと告げてくる。

 万が一にも敵艦隊が現れた場合、応戦する必要がある為、少しでも用意しておくためだ。

 防御シールドも展開できるようにしてあり、沈まない要塞になった。


 それとは別に、再び武装集団が村に接近しつつあるという報告がある。

 航空写真から衛士ではない、小汚い集団だとわかる。

 前回と違うところは、規模が50人になって少し大きいところと、中に身分の高い者が乗るらしき、箱型の馬車があるところだ。

 全体的には歩兵が騎兵の後ろから続き、馬車を守るように周りを兵で固めてある。

 後ろからは兵站が追従し、長期戦にも耐えられる物資が積んであるようだ。

 貴族かなんかだとすると嗜好品や生活物資である可能性もあるな。

 そして、やはりなぜか奴隷を連れている。


 やつらは皆、屑、決定でいいだろう。


 イーリスも共有しているので、早速、盗賊狩りに行く。

 やり方はほぼ同じ、街道の見通しの良いところで幻惑をかけ、ブラスター小銃での一連射する。

 そして、奴隷をそのまま歩かせて帰らせるか、村へ行かせるか。

 イレギュラーがあった場合にはその限りではないが、こちらに戦力差があるので対処できるだろう。

 フェイスも連れて行き、作業を手伝ってもらう事にしようか。


 ビークルに乗り込み、フェイスを乗せて説明しながら、作戦通りの地点へ向かう。

 フェイスはすぐに理解し、走行に飽きてビークルのシートで寝ている。




 待ち構える場所は丘に囲まれ、外からは見えにくい場所にある。

 こちらは50メートル離れた木の上にいて、その集団が来れば全体が見れる場所にいる。

 ここから射撃すれば、斜め後ろから気づかれずに仕留められるだろう。

 もし撃ち漏らしても、フェイスが追って噛み殺す。



 しばらく待っていると、集団の先頭が見えてくる。

 装備が前回とは少し良いようで、青銅の胴当てと足通しにヘルメットを被っている。

 それに続く歩兵も、革の鎧や盾を持つものがちらほらいた。

 ベットより少し大きいくらいの馬車にはドアと窓が付き、乗り心地悪そうだが2人乗っているようだ。

 やはり身分の高い者らしく、宝石を身に着けても鎧は着けていない。

 追従している奴隷も見えてくる。

 最後尾の騎士が丘の上から超えてくると、急に空が薄暗くなってくる。

 気象情報は確認してたが、上空にそのような雲は無かったはずだが。

 ドローンから異常気象の通知が送られてきて、イーリスが心配して連絡してきた。


 まぁ、そうだよね。



「始めようか。」

 とフェイスに話しかける。


「うーん。」と伸びをしてから走りだし、森の中を迂回して前方へ。


 雷鳴が響き、あやしい雲が増えてくる。雨は降らないが、今にも降りそうだ。

 全体に幻惑をかけ、標的の感覚を奪うと。狙いをつけて後方の騎士からブラスターを連射する。

 静かに確実に葬り去る破壊の矢が標的を捉えてゆく。

 約70発。ほぼ一撃で倒された死体が辺りに転がり、それを無表情の奴隷がゆらゆらとしながらまっすぐ歩き、村へと死体を超えてゆく光景になった。


 馬車の中もブラスターが貫通し、標的の体を破壊している。

 御者は何も表情を変えないまま、奴隷と共に最後の生き残りになって、主人の亡骸を乗せた馬車を歩かせる。

 彼だけ馬車の陰にあった武器にブラスターを反射されたため生き残ったのだった。

 だが、馬が何歩が進んだ時、フェイスのエネルギーが放たれたのを感じた瞬間、馬車が雷光に包まれ、更に、爆音と共に彼の体と馬車は炎に包まれた。

 馬車はコントロールを失って走り出し、脇の岩に車輪をぶつけて転倒してしまった。


 空は不思議な雲が晴れてきて、急に元の静かな林に戻った。


 ブラスターで馬と馬車の連結具を切り離してやる。

 馬は逃げて距離をおいて止まった。


 予定通り、物品を散らかし、金と食料を奪って、武器を壊し、争った跡のように見せかける。

 死体から今回の遠征の経緯を得る。

 そして、死体を集めて燃やした。


 奴隷はそのまま歩いて、明日、村へ着くだろう。




 盗賊たちの目的は金で、貴族に雇われただけであった。

 その貴族の目的は、村の襲撃と、村に現れる不思議な美しい女だったらしい。

 共にいる男は抵抗すれば殺し、そうでなければ戦奴として連れて行くつもりだったようだ。


 その不思議な美しい女に、めちゃくちゃ思い当たる人物がいる。

 イーリス。

 そして共の男は私か。

 そうか。

 初めから敵だったのだな。


 これからも、行く先でそういった敵が現れるかもしれない。

 映像を共有していたイーリスから、ドローンからの敵の消滅の確認と怒りのメッセージが送られてくる。

 その怒りは、街を焼き払う勢いだった。




 帰りながらフェイスに聞いてみる

「雷すごかったな。一撃で黒焦げだった。」

「うーん。もう少し弱くして、外の人だけにしたかったんだけど。」

 ちょっと残念そうにしてる。


 あー、そう・・・。


 完全にこの惑星の生物を超えてしまってる。

 大気を操り、雷を起こして直撃させるなんてことは、吸血鬼にはできない。

 嵐の夜の蛇への一撃はフェイスの仕業なんだな。

 なんとも恐ろしい眷属を生み出してしまったのか。

 おそらくだが、今まで見てきた多数の眷属の中でも上位の部類になるだろう。

 始祖の直系である子孫の眷属でワーウルフが最強だったが、肉体の強さと幻惑や毒を操るみの強さである。

 空間を操る種はいても、フェイスのように強大な力を持っていたわけではない。


 こんなもふもふのふにふにのぷにぷになのに。


 わしわしと撫でやると飛びついてきて、くっついたまま離れなかった。





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