第19話 商品と熊

 小屋に帰るとすぐに狩に出る。

 熊、蛇、猪、兎、鹿と大量だった。

 捌いて肉と皮を処理して、保存してゆく。

 あまり食べていなかったが、肝臓や心臓を食べてみる。

 それほどうまいと思わなかったが、イーリスの手にかかってしまうとうまい料理になって、保存の利くつまみになっていった。



 そろそろこの間の村へも物品を持って行きたかったし、急いでモノづくりにいそしむ。

 運搬用の荷車も作ったし、鉄鉱石と塩も持っていこう。

 そのうち茶、以外の嗜好品なんかも持って行きたい。


 3日の後、完成した薬、乾燥した薬草、獣肉のつまみ、ナイフ、鎌、矢じり、鋼の斧、何種類かの釘やかすがい、鍛冶用に精錬し伸ばされた鉄の棒、ペンチ、針、鍋、鉄の鎖、苛性ソーダ、石鹸、金槌、鹿の角、貝殻、ナフタリン、宝石のくず石、鋼のノミ、石筆、なめし用のクロム塩、炭酸石灰、ピートモス、硫黄、ケイ酸石灰、リン酸石灰、ロープ、鉄の塊、塩、甘い樹液、ゴム、天然の香油をブレンドした香水、茶葉素焼きの壺。


 どれも村で感じた足りない物を適当に持って行く。

 一貫性の無い、支離滅裂な品揃えであるが、鉄の精錬で出たスラグも、精製したら良いものが出来たりしていたので、売れなければ使い方を教えてやってタダで置いて帰るつもりだ。


 これでも今回は少し自重したつもりではある。

 なめし液と石鹸以外。これに関しては、試供品としてほんの少しだけにしてある。


 今回も、ある程度までビークルで行く、そこからは荷車に積み替えて運ぶ。



 村へ行く途中、4メートル以上もある熊に遭遇した。しかも、気が立っていて攻撃性が増していた。

 距離があったので、脅威とはならないが、刺激すれば、すぐにでも襲い掛かってきそうだった。

 まぁ、無視したが。




 村へ入るとすぐに人が寄ってきた。

 薬は一瞬で売れた。余剰として残りそうなものまで持ってきていたが、全て村の備蓄として買い上げてくれたのだった。

 薬草も備蓄として買い上げてくれる。

 塩も持ってきた60キロの全量売れた。

 皆は鉄を欲しがるが、高価すぎて手が出ない。あまりに厳しいようなので、物々交換や条件付きで買っていく。


 商品にかなり残りはあったが、説明をしている途中で熊狩りに呼ばれた。

 最近、村の近で大きな熊が現れ、荒らして回る事件があったという。

 ついに、村の外で気配があり、討伐する隊が組まれることになったらしい。

 最低でも追い払ってしまいたいという。


 それなら、手っ取り早く、私がこっそりブラスターで始末すれば早かったのだが。

 ここまで熊狩りの士気が上がり、やる気満々な面々が集まっていればそうはいかんだろう。

 そんなもの、遠くで眺めていたいところではあるが。

 集まっている面々を見ると、そうは言ってられない。任せておくと、大怪我した奴が出るに違いない。



 剣を背負い、売り物の鋼のナイフと手斧2つを腰につけ、槍を持つとそのまま隊に加わる。


 賢そうな猟犬がいた。

 だが、私に怯えていたので、落ち着けてやった。

 ハンターは不思議がり、そのことで不振がったが、熊に対する絶対的な戦力になると感じ取っていたのでそれ以上は何も言わない。

 装備も隊の中で群を抜いていい装備をしている。


 イーリスは村に残るが、もし熊が現れても心配ない。

 彼女はこう見えて格闘術が使え、物語かと思う程の剣術が使える。

 しかも、毎秒、30pプロセスのパターンを分析して返す。

 ゲームでいうならば、ベリーハードの100万倍の難易度のラスボスがいるようなものだ。

 熊のパンチなど、彼女にとっては止まって見えるだろう。


 ベリーハードの格闘熊とラスボスが戦ったらどっちが勝つんだろうとか、考えていると出発になった。




 言われた通り、すぐ近くで見つかった。

 ハンターは落ち着いていたが、衛士はかなり引いていたので、ずっと村に近いところまで下がらせる。

 猟犬を放し、追い立ててこちらに向かわせるようにするらしい。

 うまくいけば、こちらに誘導できるという。

 私にはわかる、血に飢えた熊の本能が。

 他の敵に怯え、戦いに高ぶり、この村を襲って生き延びようというところなのだ。


 私は移動し、村と熊の間に陣取る。

 そして、静かに息をひそめ、猟犬を物ともしない様に、こちらにゆっくりと接近してくる。


 この種の興奮状態をした捕食動物は、狂ったように攻撃性を示し、ひたすらに暴れる。

 恐怖を攻撃性に替えて立ち向かうため、動き自体は鈍いものの、動きを止めることは無い。

 普通の人間には、スピードもパワーも桁違いなため、恐怖そのものだろう。


 ハンターがこちらに引けといった意味の注意を向けたが、大丈夫と返して待ち構える。



 ほぼ一撃で止めをしなければならないため、弱点である鼻や心臓を狙う。

 ふと、以前に村で話した、熊を倒した話を思い出す。

 今回は、その話をなぞる倒し仕方もいいかもしれないと、手斧を両手に構え直す。


 手斧の射程距離に来た時、熊が立ち止まる。

 何かを感じ取り、警戒しているようだ。


 感のいい奴め

 そのままこっちに来い


 まぁよい。ここから相手してやる。


 手斧を勢いをつけて2つ投げる方法を固め、立ち上がり走る。

 同時に熊もこちらに激突せんばかりに走りだす。

 手斧を顔面に投げつけ、1.5秒差で少し左上に投げる。


 手斧は回転しながら飛び、1発目が左目と鼻の間に刺さる。

 激痛と驚きと恐怖で体を浮かした熊に、2発目の斧が右目に刺さる。

 両目の視界をほぼ失って、恐怖で腕を振り回そうとする熊に、飛び込んでゆく。


 熊は突進の勢いを失ってないまま、必死で襲い掛かる。


 全く見えないのはわかっているが、振り回す腕は、攻防の立ち位置を一変する破壊力がある為、死角から槍を突き下ろす。


 鋼の槍先がドッと一瞬で深く心臓に達し、鉄の冷たさを残す。

 刺さったままの槍を残して、そのままの勢いで熊の背を蹴って飛び越え、背後に回り剣を抜く。

 槍のダメージで直ぐには反撃は無いと踏んで、用心深く身構える。


 熊は勢いのまま走り抜けて、村の方へ走ってゆく。


 あらら。止まらんか。


 しかし、流石の熊も、心臓を刺されては生きては行けず、村には届かない。

 会敵した場所から、まっすぐ進み、今度は沢に当たったところから下って10メートルのところで茂みに入って死んでいた。



 熊は滑車を使い引き上げて血抜きをして、その場で解体する。

 大きすぎて解体しないと村へは運べない。


 その作業を坦々とやっていると、討伐隊のハンターと衛士の皆がポカーンとしていた。

 見るなら手伝ってほしいが、その間が抜けた顔も何とかしてほしい。


 荷車から滑車を4つ出して、2連の滑車を2つで引き上げる。

 ギリギリとロープが切れそうだが、何としても血を抜きたい。

 何とか首が浮くと、木を切り倒してきて、更に支える。

 何とかなったな。

 しばらく時間を置いてから次の仕事をしよう。




 道具の用意の為に、村へ一時的に帰る。

 ざわざわしている。

 まぁ。あんな熊が現れたのだ。それは恐怖だったろう。


「おかえりなさい。ブラド。」

「ああ。血まみれになった。井戸を借りてくるよ。」

「血は慎重に落とした方が良いですよ。」

 何か言いたげなのだが、そのうち解るだろう。その時には慎重になるさ。



 熊の現物を確認しに行った衛士が、青ざめた顔で戻ってくる。

「バケモノだったよ。あんなのがいたなんてな。だが・・・。」


「なんだよ。大丈夫か。」


「見ればわかるよ。」

 衛士はそのまま黙って道具を用意する。



 井戸で血まみれの斧と手を洗い、道具の用意を手伝ったりしながら、他の衛士と談笑していた。

 ハンターは、猟犬を呼び戻して戻ってきた。

 衛士に状況を説明して、皆で解体して持ち帰るつもりだ。

 大きさが大きさだけに、肉や皮が大量になるからだ。


 前回来た時の衛士はいなかったが、この衛士も経験の豊かな方だったので、あの熊をどうやって倒したのか確認したがり、武器を見せて欲しいだの、どこで習ったのだの、興味があるようだった。

 そりゃ、2、3撃で倒されていれば驚くとは思うが、見切れば可能なはずの事だし。

 能力は使ってないから、特別おかしなことはあるまい。


 と、思う。

 自信が無くなってきた。



 待っている間に、老人に会いに行く。

 茶葉と硫黄を渡すと、硫黄の使い方をあれこれ質問してきた。

 熊を倒した話をすると、

「早速、やりやがった。気をつけろと言っておいたのに。」

 などという。


 なんでだよ。



 茶を一緒に飲んでから、広場で皆と合流して、熊の解体に行く。

 改めてみても、かなりの大きさがある。

 ハンターは、この辺りの主だという。

 十年かに一度、こういう熊が一帯を荒らし周って、死者を出すらしい。


 このタイミングで私が来たのは、私にとっては運が悪かったとしか言いようがないが、彼らにとってはむしろ逆ではないか。


 くそっ。あの時にドローンからレーザで蒸発させてやればよかった。



 そんなことがあり、村では完全に浮いた存在になりつつある。

 かといって貴重な物資ばかりを持ち込む私たちは、歓迎されていないわけではない。

 だが、恐れも同時にあるので、表情は微妙だ。

 イーリスに対しても、得体のしれない薬を持ち込むが実に的確で、従っていれば病気はなんであろうと治るので、一種の宗教の神ように思われている。

 貴族しか使わないとされる薬や菓子、宝石、香水、剣士は村の中では見る事は無かったはずだ。

 目に見えないもの、違いすぎるものは恐れられるのが常だが、そういった枠に完全にはまった気がする。




 吊るされた熊の下は血だまりだったが、衛士の一人が、沢から水を汲み流してくれた。しかし、やはり辺りは血生ぐさい。


 熊の解体にはよく切れる私の打った鋼のナイフが重用され、衛士からの注文があった。

 そりゃそうだ、クロムやモリブデン等の添加物を加えてあるのだから、青銅のナイフなどとは切れ味も扱いやすさも違う。

 熊の厚い皮をバターでも切るように割き、骨を削ってなお切れ味を保っている。


 この世界にも自然物でそういった金属の混ざった状態で産出する鉄はあるはずだ。

 問題ない。

 多分。


 皮を剥ぐのには、別の道具と一緒に使う。サイズといい、切れ具合といい最適なものがある。

 皮を剥ぎ、部位ごとに肉をそぎ並べていると、村人も来て肉や皮を村へ運搬する。

 全てを持ち帰るらしいが、そんなものを喰うのかと思うような臭いのある部位や内臓を切ろうとしている。

 少し待ってもらい、血管を割いてちを出来るだけ抜き、胆のうや消火器管を切り出した血管で縛り取り出す。


 頭部さえも切り分けられ、肉は食用になり、歯は抜いている。

 有用な部分は余すところなく持ち帰り、あとは埋めて片付ける。

 大きい獲物であったので量はあったが、慣れた者の手伝いもあって短時間で済んだ。


 村ではイーリスと村の女が切り分けていた。

 そのほとんどをイーリスが、均等に分けてゆく。もちろん、私が打ったこの村初めての、高価な鋼の包丁を使っている。

 いい部位と悪い部位の配分、筋や脂の取り方も完璧に処理されて、村の者も驚いた。

 見たこともない刃物の使い方をし、味や特徴のある部位ごとに正確に分離してゆき、量りに乗せる事無く平等に分けてゆく。

 見事な切れ味の包丁に、正確で綺麗な仕上がりに、切り分けるだけの作業は、ショーと化していた。

 しかも保存分や加工部分の加減も含めて、寸分の差もなく分割し終わった為、横で計量してい男が青ざめてゆくのがわかる。


 またざわざわとざわめく。

 あはは。やり過ぎじゃないかと笑ったが。

 人の事は言えないと気が付いて、ずっしりと背中の荷を感じる。



 内臓は捨てる部分がいくつかあったが、イーリスの手にかかれば製薬の材料となる。

 簡単な精製や分離などで作られる薬は良いのだが、やり過ぎになってしまう作業のある薬を作るのは諦めておう。

 やはり、イーリスが何かを言いたげにしていたが、今回は見送ってもらう。

 必要ならば、また取れば良いのだと言ってやる。


 それ以外で、その場の簡単な道具で乾燥や濃縮、還元、分離などでできる薬を作り、急いで病人の元へ走り、投与してやっていた。


 イーリスで救われる命は多数になるだろう。

 それはテクノロジーの塊である彼女しかできないが、彼女でも見送る命もある。

 そういう過去の経験からそういった者を生かす事に執着する。

 それが、自分とは違った生命体であろうが、助けを求められれば弱い部分があるらしいのだ。




 熊の肉や毛皮の取り分として、一番の権利があると衛士やハンターが備蓄は十分にあると言って断った。

 毛皮など、前回の売れ残りの処分もしたいくらいだ。


 その代わりに、馬を買わせてもらえないかと持ち掛ける。

 今回の一番の目的の一つでもあった。


 今は、村の馬は、前に殲滅した盗賊の馬を含めて、十分な数があるはず。

 処分したり、街へ売りに行ったとしても、1、2頭は余裕があっても良さそうだからだ。

 何もすぐに手に入れたいわけでもないので、近々で良いと付け加えたが、今なら余りがあって2頭譲ってもらえるようだ。


 熊狩りから以来、衛士やハンターは畏敬の眼差しで見ている。どうもやりにくいので、明るく酒を回し飲みしてから、一緒に馬を見ている。

 私の体格にはずんぐりとして小さい農耕馬だったが、馬車用の馬なので、2頭立てにすれば問題ないだろう。

 馬具は造るつもりでいたが、余りがたくさんあるとのことで着けてもらった。

 代金は少なめで良いらしかったので、代わりに蹄鉄の、材料の精錬し均一に伸ばした棒と鉄と釘を、金と渡す。

 主は感激し、蹄鉄の打ち方の技術で皆で盛り上がる。その話の中で、馬具についても聞いておく。




 夜明け前、いつのまにか私と呑んでいた衛士とハンターと老人が、飲んでいた焚火の傍で酔っ払って眠りこけてている。

 狩の話をしているうちに何人か集まり、戦いの話や武勲を立てて出世した話をしていたら、遅くにまで呑んでこうなった。


 イーリスの薬の効果で回復しつつある人たちが出てきて礼を言っていた。

 その中の何人かは、神にでも祈るような仕草でイーリスを見つめる。

 この世界では、ある意味神のようなテクノロジーの塊の存在なので、あながち間違いではないのかもしれない。

 また薬と治療に必要な物品を約束し出発する。




 宙にはドローンが常に1機は待機し、地上を警戒して待機しているのが、ぽつりぽつりと点になって見える。

 この森には、昨日の熊や嵐の時の蛇のような敵が、多数存在している事をドローンが伝えてきているが、私たちには脅威などではなく、時にやかましく、時に恵みを分けてもらえる隣人のようなものだという感覚である。


 私たちには、・・・だが。





 帰るとフェイスと食事をしながらこれからの行く先を話し合う。

 フェイスは、食べ物の豊かな地で暮らせれば何の問題もないという。

 イーリスは、ある程度進んだ文明を持った地を目指した方が目立たない分やり易いのではないかという意見だ。

 私は、この不便さが気に入っていて、森の中や鉱山等のある場所が望ましい。

 ある程度文明が進んでいる方が良いという点では同意見だが。


 他に細かい部分で話し合ってみると、農産物の種類だとか、海の恵みが豊富だとか、いろいろな妥協点を探してみる。

 そして、ここから街を通り越して行った、場所にある漁村に行ってみようということになった。

 一度、街へも行ってみた方が良いし、漁村の産業も気になる。

 街や漁村という言葉や航空写真ではわからないこともあるからな。


 早速、旅に出る準備を始めるイーリスは、どこか楽しそうで、相談してよかったと感じる。

 準備するものを聞いてみて、大体のものはイーリスの準備するものだが、馬車や武器の制作をしたかったので、任せきりになる。




 イーリスの希望で、機織り機も作っておいた。

 設計はイーリスがライブラリから、この地で手に入るもののから作れるように手直しして、図面化していた。パーツをひたすら作って、おもちゃを組み立てるだけだったので、調整もなく簡単に組めた。

 所々この世界では登場していないと思われる、シャトルのような機構が組み込まれていたので、いやな予感しかしない。

 組み立てて気が付いたが、すぐに分解出来て箱に隠せるように、再度作り替えるよう設計をし直してもらった。

 直ぐにたたんで隠せるようにね。

 直ぐに設計図が出来上がり、作り直してみると、それは絶対隠さないといけないと感じる物になっていた。

 まあ、イーリスだからね。




 今、汗だくで森で樹液を採っている。

 照りつける陽の光は恵みをもたらすが、寒暖差が激しいので日中は暑い。


 作業は、ひたすら皮に傷をつけては金具を差し込み容器を固定してゆくだけ。

 イーリスに教えてもらった通り、たくさんの木の幹から毎日採っている。

 数百本の木から何種類もの樹液と布の材料の採集。

 川で水汲みと鉱物の採集。

 なめし作業と製材と膠づくり。

 それが日課となる。


 合間で川で初めて発見した宝石の原石を利用してアクセサリーを作る。

 ちっょと恥ずかしくて、森の中で採集がてら座り込んで、コツコツと鎖を作る。

 繊細なチタンの鎖で繋いだネックレスなのだが、これがどうも難しい。

 イーリスのように効率よくできないが、やっていくうちに少しづつ要領をを得て上達していく。しばらくはいくらやっても鎖は作れなかったが、今は出来が良くなっている。

 繊細なものでも苦手と思うことは無かったが、難易度が高すぎたのかもしれなかった。

 それでもプレゼントできるのだからいいのだ。


 楽しい。

 出来上がりもそれを着けたイーリスの姿も浮かんでは消える。




 鉱物の採集が一通り揃ったので、次はガラスを作る。

 またその前にガラスの加工に必要なパイプや定規を作る。

 ついでに、イーリスの注文で、医療道具を作った。

 治具や化学反応用の瓶のスタンドやチタンのナイフ、メッツェン、鍋、ピンセット、ボウル、鉗子をたくさん作っておいた。

 ついでにチタンの包丁やスライサーの刃も作ったが完全にイーリス用になるね。


 ひたすら黒鉛のるつぼを使って、リアクターのエネルギーで焼いたり溶かしたりする。

 たくさん獲物の骨があるので、焚火で一度焼いて、砕いてさらに炉で焼く。

 イーリスが炭酸ナトリウムをたくさん作って、材料を混ぜては加熱してゆく。


 出来たガラスはひとまとめにし砕いておいて、木箱に貯めてゆく。

 大量の瓶やフラスコやビーカー、試薬瓶や試験管、ガラス管などの合成用の器具になっていった。

 成形はイーリスが完璧に作ったので、一定の基準で作られ、美しい仕上がりになった。

 それから、純度の高い透明なガラスを作って、棒状の素材をいくつか作っておいた。


 これで簡単な化学合成が出来るようになり、樹脂などが作れるようになった。

 この世界の化学はまだほとんど発達していない。少し間違えれば大変なことになりそうだ。


 次第に物が揃って、簡単な馬車とかも作り、そして、ついにネックレスも完成した。

 華奢な造りで、宝石をチタンの台が飾る。派手ではないくらいの方が良いと思って、1.5ミリのシンプルな3連の鎖をプルプルしながら頑張って作った。




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