第18話 海へ
しばらく土木作業ばかりだったので、今回はビークルに乗り海へ来た。
ここの海は温暖で潮の流れがあり、生物の密度はそれほど多くは無いが、豊かな生態系がある事をドローン調査で判っていた。
まぁ、そんなことよりも海だ。
潜って、中を散策したい。
魚や貝を喰いたい。
一応、水着の代わりのパンツも用意したし。
あ。イーリスもね。
ボインボインのバインバインなので上もあるよ。
返しの付いた銛と釣り竿も。
それから、イーリスがビール開発したー。
酒だー。イエーイ!
マスター・・・。
語彙力がダメダメですよ。
でもいいんですの。
今回は、わたくしが主役。
何と言っても、超ナイスバディのわたくしが水着なんですの。
さらに!
ふふふ。
ピルスナーの味が過去最高ですの。
冷えたピルスナーの初試飲!
これにはマスターもメロメロのはず。
呑むぞー!
あ。わたくしとしたことが・・・。
うおおおお。
なんだこれー。
めつちゃ水あるー。
しかも、砂のとこ広っろ。
それに、後ろから匂う肉の香りが・・・。
んー。
おなかすいたー。
これが海?
そんなことより肉ー。
ダメダメな1人と1機と1匹は砂浜に降り立つとすぐに食べ始める。
冷えたビールは野生の麦から作られたとは思えないくらいくせの少ない味になり、これから時々飲めると思うとうれしい限りだ。
フェイスがビールを飲んでる・・・。
とろーんとしてきて。喰っちゃ寝まっしぐら。
呑んで食べて、お腹いっぱい。
そろそろ正午過ぎ。
食べた肉が消化してきた。
ビールもいいが、こっからだぜ。
沖、1キロ先に小さな岩礁がある。そこまで泳いで行こうというものだ。
私が立ち上がると、イーリスがめんどくさそうに
「やっぱりやるんですかー。そりゃ、行きますけどね。」
今までいびきをかいて寝ていたフェイスも起き上がり、何かを察知して附いてくる。
銛を背負って、袋とロープを腰につけ、泳いでいく。
泳ぎは得意な方なので、全く苦にならない。すいすいと軽く泳いでゆく。
イーリスもさすがドロイドだけあって、無駄のない動きで美しいフォームで泳いでる。
フェイスも犬かきで泳いでるが、かなりのスピードで泳いでる。余裕があるというか、スピードが余って、くるくる回りながら泳いでる。
「フェイス。すごいなお前。泳ぎがうまいな。」
「へへっ。そうかな。」と言いながら
平泳ぎを始めてみんなの前に出る。
えええー。ウソだろ。
そして仰向きになり、ただぷかーっと浮いている。
もうわからん。どういうことですか?
こちらが追いつくと、また犬かきを初めて、たまに少し先に進んではぷかーっと浮いている。
これにはイーリスも呆れた表情で見ていた。
岩礁へ着くと、ひとまず上がって休憩する。
岩礁は海面から上はただの小さな岩に見得るが、下は裾が広く浅く広がって、潮が引いた時には、海面から出る部分も多くあるようだった。
海面から出ない部分のうち丘に向かう方は、深いところまで海藻の林が広がり、豊かな生態系を育んでいる。
沖の面では海藻が少なく、岩場の起伏のある崖があり、深いところまで続いているようだった。
イーリスは海藻に興味を持ち、拾ってみては分析して、持ち帰る物を探している。
袋を渡すと、あれもこれもと集めて行った。
私は沖の面の方へ行き潜る。
銛を手に持ち、獲物を探す。
すぐに獲物が見つかり、刺して捕ってゆく。
フェイスも潜ってきた。以前、ワニを捕ってきたが、直接見るのは初めてだ。
犬かきで獲物を探して、からのバタフライみたいな動きでものすごい速さで獲物に迫り、魚に追いついて、追い込んで噛みつく。
えええええーーーーっ。
おまえ。犬じゃないだろ。
と思いきや、捕った後は、ぷかー。
ホント。わからん。
安定した漁が出来て、袋いっぱいになった。
フェイスはお腹いっぱいになった。
イーリスも何だか嬉しそうに袋をのぞき込んでいた。
帰りは、イーリスとフェイスにつかまってみると、すごいスピードで泳いでくれて楽しかった。
もうね。犬とか、思えないんだよね。
すっかり遊んで、魚捕って帰ると、イーリスの作ってたスープが出てきて体を温める。
テントを張り、焚火を3つ作った。
1個は調理に使う焚火。
2個は海水から塩を作る。
大鍋に海水を入れて、ひたすら水分を飛ばす。少なくなったら足して結晶になるのを待つ。
マグネシウムもその時に分離して取っておこう。
イーリスは、袋から海藻を出して、持ってきたロープで乾かしてゆく。
他にも、綺麗な貝や鉱物をテーブルに並べて、優雅にビールを飲んでいる。
フェイスはいびきをかいて、テントで眠ってる。
塩を作る焚火の番をしながら魚を捌き、串に刺す。
流木を切ってはくべ、常に火力を保ってどんどん濃縮する。
リアクターでやってもいいんだけど、これ、やってみたかったやつ。
何もすることが無くなった時に、イーリスを誘って貝殻を探しに行く。
昼間にいろいろ見見たけど、いろんな種類の貝がいて、砂浜に打ち上げられている。
綺麗な色の貝や、変な形の貝。大きいものやつるつるの貝。
多様な生き物がここにはいて生活し、終えたらここに痕跡を残してる。
私もここで痕跡として残るのかな。
イーリスはどうしてるだろうか。
ここの月は大きく、青白い。
彼女とは比べられないが、とても美しいよ。
あの星の生物もこちらを見上げて、そんなことを思うのだろうか。
ドローンにこちらの画像を撮ってもらい、個人用のメモリーに転送した後、ドローンの履歴から削除した。
いつまでもこの時が続きますように。
と、イーリスがでかい砂金の粒を拾った。
そこでしばらく砂金探しになった。
ていうか、すげえ。俺。全然、わからんのだけど。
流石、ドロイド。
意外と塩の出来る時間がかかり過ぎるということがわかり、やっぱり電気の力を借りる事にする。
早い。というか、焦げそうだ。
十分綺麗な海水なのだが、少し赤みのある塩が出来た。
にがりを分離し、3日間で出来上がった量はなんと180キロ。
悪くない。
毎日、魚を捕って、貝もエビも食べた。
塩がたくさん取れて、村への交易品が出来た。
綺麗な貝殻や海藻と魚の干物もできた。
そしてなぜか砂金や宝石の原石を大量に拾った。
イーリスさん。
それで食っていけるんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます