第17話 製鉄

 製鉄には精錬の工程が一番大切であるが、そのための作業がとても大変だ。作業もたくさんある。

 大きめの作業場を建てて、一度にある程度作らなければ、非常に効率が悪い。

 リアクターで熱を作り、多少強引に精錬するが、それでもある程度の広さは必要になる。

 雨のしばらく無い日を選んで築炉し、原料を入れてゆく。川で採取した石灰石や石英もその一つだ。圧縮した空気を送るためのコンプレッサーをビークルの整備キットで代用する。


 リアクターで作ったエアプラズマによって、炉の中は高熱の湯が溜まってゆく。タングステンの道具で時々スラグを取り出して捨てる。


 高温すぎて危険になる前に止めたり、反応を見ながら熱風を送ったりして精錬してゆく。

 吸血鬼の体とテクノロジーが無ければできない作業が続くが、極めて速く進んでいく。


 およそ1トン近くの材料が消え、ほぼ溶け切ったころには、辺りは火山のような熱気に包まれ、イーリスも近寄らない。


 時間と共に湯の中の不純物が還元されてゆく。

 サンプルを少し取り出して、イーリスに見てもらうと、かなりの還元がされていて、この世界の鉄の鉄に近づいていた。

 更に圧縮した空気を送る。

 リアクターの力押しだが、とても楽しい。

 硫黄や炭素が燃焼し、添加した鉱物と共にスラグと取り出される様は、吸血鬼の宗教にある地の底の監獄のようだった。



 最後には炭素比率が1%未満の高純度にまで達し、粘土の炉が限界に来るほど熱かった。

 すこし冷えてある程度粘るくらいまで待ってから炉を壊してゆく。

 粘土を練っては積み上げて、何日もかけて乾燥させては積み上げて作った炉が、役目を終えて壊されてゆく。

 壊しながら、まだ柔らかく熱い鉄を切り分けながら引き出してゆく。

 この熱のある間にある程度小さく分けておくと、運搬もモノづくりに便利になる。

 普通の生物には出来る作業ではないが、この放射能も克服した船外作業服があれば可能となる。



 出来上がったものは純度は高いが、高すぎるくらいのものの方があとから添加するクロムやモリブデン、チタンなどが扱いやすくなるだろう。


 フルタングステンのナイフなども作りたいが、それはある程度設備が必要なので、しばらくは無理なのが残念だ。



 2度目の精錬に入る。

 方法は全く同じだが、今度は炭素比率2%程度の物を作る。

 目的の道具のほとんどはこの固い鋼が主要となるので、たくさん作るつもりでいる。

 炉は、一度目の炉の粘土をもう一度使う。捨てるところは少なかった。

 作業は同じだが、取り出すタイミングが違うだけだ。

 同じ鉱物から作るが、安定した材料ではないため、結局は同じ作業を繰り返し、目的の物に近づくまで続く。

 鉱石を分析し、添加物の量を多めに用意し、加熱してサンプルから再度添加物を投入する。

 空気の調節とスラグの回収。

 精錬の作業が3日になるか、4日になるかの差でしかない。

 合間でイーリスが乾燥させた粘土の壺を炉の熱で焼いておいた。


 製鉄の作業が終わり、900キロの鉄が出来た。

 初めての割にはいい結果が出来たと思っている。


 だが、精錬の間、フェイスの相手をしてやってないので、少しむくれ気味になっていた。

 切り分けてすぐ、何もかもそのままに、川で魚を捕ってきて、残った貴重な塩の残りの数日分を残して、大量の魚の塩焼きを鉄の熱で作ってやった。

 これにはフェイスだけでなく、イーリスも驚いていた。


 ふー。しばらくは鉄から離れたい。




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