第13話 家族
家族
イーリスが石の上に座り、穏やかそうな表情で何か考えているようだ。
長く稼働したドロイドは、魂や感情に似たものを持ち、何かを感じて行動することがわかっている。
思考をするほど、新たなパターンのニューロンを獲得し、複雑な行動パターンを生んでゆく。
それは生きていると言っていい程に、芸術的であり、複雑で、脆弱で、論理的ではない部分さえ確認されている。
イーリスの場合は、そういった行動をブロックするロジックを搭載するにもかかわらず、独自の思考を見せている。
彼女の場合、稼働から500年辺りから劇的に思考が面白い。
機械であることには違いないが、生きている。
誰が命を与えたのか。
いつからなのか。
「私には君の欲しいものはわからない。だが、君は実に正確に解っているようだ。」
「いえ。そのようなことはありません。確率から出された答えを返すだけですから。」
「君に聞きたい。今、欲しいものはなんだ?手に入れたらどうしたい?」
「模範的な回答と、そうではない回答とどちらがお望みでしょうか?」
「そうではない。私は理解したいだけなのだよ。吸血鬼である私と機械である君は違う生き物だから、共通の言語で理解するしかないからな。」
「では。両方お答えします。
一つ目は、この惑星でもずっとお仕えしたいと思っております。出来るならば、フェイスとずっと。
2つ目は、私も吸血鬼になることが出来れば、マスターとフェイスの家族になることが出来るのでしょうか?
そうすれば、ずっと今が続くのでしょうか?」
「これは驚いた・・・。しかし、ありがとう。君を機械だとは忘れていることだってよくあるよ。」
「それに、もうすでに家族だ。」
「ありがとうございます。」
「いや、こちらこそだ。」
タイミンク良くフェイスも寄ってくる。主人が私だとは判っているようだが、イーリスにも良く懐いていて傍に座り込む。
イーリスは有機化合物と金属の機械、フェイスは有機生命体、そして私は吸血鬼。
種族の違う者同士が家族になれて、幸せというものを得られるこの世界ならば、ずっと生きていても退屈しないかもしれないな。
夜はフェイスの眠る時間になるようだ。
眠そうにテントに入り、寝袋の上で転がっている。
いびきをかき、無警戒な姿で寝ている姿は眺めていても飽きないな。
しかし、よだれで寝袋がべたべただ。
ただ眠って夢を見たり、ただ時間を潰すときはある。
だが、私は基本的に眠る必要はない。
眠る必要があるのは、怪我を負った時だとか、ひどく消耗した時だけ。
昼も夜もない。
体に溜まった疲れは、休むことをしなくても回復する。作業をするくらいならば、休まなくともいつまでもできてしまう。
イーリスはも同じだろう。金属部品や被覆が傷まなければ、ずっと動き続ける。
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