星系6A04EG621Yー2001 第3惑星

第11話 新たな旅立ち

 1人と1体と一匹はしばらく語り合った後、私とフェイスはテントで眠っていた。

 体力には余裕があったが、イーリスの勧めで眠ることにした。

 ポッドの墜落のダメージから休んではいないのだから心配をかけたのだろう。

 テントに入るとフェイスも入ってきて一緒に寝袋で眠る。


 思いの他フェイスは体温が高く、すぐに暑くなって寝袋を開いて寝だす。

 本来、フェイスは甘えん坊な気質であるらしく、くっつけて眠りたがった。

 眠っていると上に乗りたがり、顎を胸の上にのせて寝ていたかと思うと、起きた時には顔にのしかかっていた・・・。

 フェイス。



 時間は正午前だろうか。

 6時間は眠ったはずなのに、むしろ疲れたような気がする。

 くそう。


 元気いっぱいのフェイスを見ていると癒される気もする。

 寝ている間、イーリスがドローンの情報を整理していてくれたおかげで、端的にこの惑星を知ることが出来た。


 この惑星は質量が母星より少し大きく自転は少し早いため重力はほぼ同じか少し軽い、恒星を約428日で周回し、衛星は1つ。

 組成はほぼ鉄ではあるが、地表は酸素、ケイ素、アルマイト、鉄がが占める。

 大気の成分は窒素が76%、酸素23%、アルゴン0.1%、二酸化炭素0.08%。全体的に乾燥した大気をしている。

 放射線量は少ない。

 大陸が3つあり、一番大きな大陸の東の端にいる。

 文明のある地域は各地にあり、鉄が普及する途中である。

 工業は発達しておらず、まだ科学の力を知る前である。

 人口の総数は約1億2500万ほどあであり、最大の都市で100万である。


 大まかにはそんなところのようだ。

 辺境の惑星としては普通の構成だな。


 さて、ここからだな。

 近くの村で情報を集めつつ、大きめの町へ行ってみよう。

 運が良ければ、しばらく落ち着ける定住先が見つかるかもしれない。



 ここから一番近い村は、ここから30キロほど行けばある。

 人口20~50未満

 森林の中にある、農耕が中心の村のようだ。この地から近い事を考えると、辺境の端の村で交易も少ないだろう。

 そして、この村とは別の不定住らしき20人ほどの武装した集団が村に向かっている。

 どう見ても、村の住人とは異質な小汚い集団だ。


 画像からだが、傭兵か盗賊のようだ。

 武器は鉄の剣やナイフ、槍が主な武器か。木製の弓も持ってるな。皮の服を防具にしている。

 10頭ほど小さい馬がいるな。故郷の改良された馬と比べると野生を感じるな。

 軍の駐留兵にしては装備がバラバラ過ぎるし、バランスが悪すぎる。軍ではないとすると野盗だな。

 ならば、あれを滅ぼして情報を集めるのも良い。



「マスター。今、すっごい悪い顔してる。」


「むっ。そか?

 あれだろ、同じこと考えてるからわかるやつだろ?」


「フェイスも解るでしょ。マスターが楽しそうにしてる。」

 そんなことは無いが、久しぶりの戦いに高揚するのは感じる。

 無視するにしても、敵対する確率は高い。こちらに気づかれる前に奇襲する方が得でもあるのだ。

 そして、こちらは異星人である事を周囲から隠す必要もある点から、制圧は確実に行いたい。

 下手をすると、すべてを敵に回す恐れもあるからだ。


「ヴラドもあいつら食べたいの?」


「ああ。遠慮するよ。俺には熊の肉があるからな。塩を手に入れて、燻製つくろうぜ。」


「うまいのかそれ?」


「ああ。狩をして肉を食うのはこのためにある。お前も気に入るぞ。」


「マスター。香辛料が手に入らなければ作れませんよ。塩だけの時は、捨ててしまったじゃないですか。」


「この村で香辛料を買うことにしよう。私らがこの惑星の生物に似せるテストも兼ねてな。」


「では、ビークルに乗せれない荷物は隠して措いて、村と野盗の間まで移動ですね。」

 全く、パーフェクトすぎて油断できん。

 言い終わる前に、ビークルからミニガンや強力すぎるキャノンのケーブルを外したりしてるのだ。


「あっ。食いしん坊さんの肉はほとんどフリーザーに入れてあるので、出してあるものだけ食べたら出発になりますね。」


「ああ。早めに頼むぞ。腹減った。」



 しなっと、予定を繰り上げて詰め込んで、消化することに余念のない秘書かよ。

 呆れるほど予定を詰めるので、休む暇もない。

 休む必要のない体を持つと酷使されるものなのか。

 しかも、その秘書に逆らえない主人。

 その辺りは、軟弱な生物が羨ましく感じる時もある。


 イーリスがミニガンのケーブルを外してしまう。代わりに予定していたものを詰め込んだ後、隠すためのの物資とミニガンをやキャノンを詰めたケースを上から乗せて、湖近くの岩へ向かう。

 岩をレーザーソードでくり抜きながら、水で冷やして空洞を作り、鍵付きのチタンケースに物資を詰め込んで、大きな岩で塞いで隠す。

 重機でも持ってこないとどけれないほどの岩で塞いで、ポッドに戻る。


 イーリスが食事の用意をしている間、瓦礫を溶かす炉を作る。

 4基もあれば、半分は一度に作業が進むはずだ。

 築炉しては余熱を行って乾燥させていく。高温を発する燃料を使用する為、余熱も兼ねる。

 大きな岩をソードで切ったり粘土を作ったりしながら、崩れないように石を組む。

 食事を待っている時間もイーリスは無駄を作らない。


 ポッドに常備されている調理キットは簡易キッチンだが、燃料さえ補充できれば十分満足いく食事は作れる。

 脱出の際に出来るだけ物資は詰め込んであったので、しばらくは十分な量の調味料がある。

 その調味料はどの星系でも似たようなものだったが、少しづつ特徴の違うハーブや発酵食品から作られたものがあり、イーリスが収集したものを選んで詰め込んでいだ。

 その調味料は食欲をそそる香りとなって辺りを満たす。

 フェイスが気になって仕方ない様子で、イーリスの周りをうろうろしつつ肉のにおいがすると、よだれを滝のように流して肉の行方を追っている。


 ぶっ

 雷にでも打たれたかのようなとはかこの事か。

 腹ペコか。

 フェイス可愛すぎ。

 後でもふりたい。


 築炉は途中だが先に食事を済ませ、先ほどの食事に衝撃を受けてツヤツヤのキラキラになったフェイスとイーリスをこの場に残して移動する。


 武器はブラスター小銃とナイフを選ぶ。

 多分だが、強力すぎるだろう。

 サプレッサーもいらなかったかもしれない。


 移動は2時間ほど行った、道の脇の物陰にビークルを止めて、集団の方へ移動する。

 集団は警戒しながら移動をしていた。

 なぜか、前を警戒するよりも、追手が気になるらしい。

 どう見ても小汚い集団で、殺気を丸出しにしながら行軍する。

 後ろから拘束されロープで繋がれた人類を連れている。

 どうやら奴隷か何かだろう。

 しかし、拘束されたの人類の方が身綺麗なのは、元の身分が高いせいなのかもしれない。

 頭髪は長く櫛削られ、まとめられている。服こそ汚いボロをまとっているが、他とは違う長身で華奢な体躯などから明らかに違う雰囲気を持っている。


 なるほど。

 あの人類に似た容姿にすれば良いのか。



 先に奴隷を能力で幻惑で鎮静化した後で、盗賊どもをせん滅しよう。


 吸血鬼の能力を確実に利かすには夜がいいが、この程度なら時は選ばない。

 地のエネルギーを巨大な竜巻ほどの量を持った今では、力押しでも十分であろう。

 ブラスターをフルオートに切り替え、威力の調整をし、狙いをつけながら、集団全体を包み込むように魅了をかけてゆく。


 掛けられた相手は、疑うこともなく術にかかり、もう何も外からの情報を得る事は叶わないだろう。

 静かにトリガーを引き、端から1連射してせん滅していく。

 シュシュシュシュ・・・

 軽い機械音だけが手元で起きる。

 何秒もかからず、呻きをを残して絶命して倒れている。

 ほぼ最後の断末魔の叫びも上げられず死に絶えていた。


 道へ降りて行き、奴隷のロープを切ってそのまま村へ歩いて行かせる。

 フラフラとだが、このまま歩いて半日程度の距離なので、脅威さえなければ歩いていけるだろう。

 獣等は威嚇してある。


 死体を森の中へ引っ張り込んで、装備や金などの使えるものを漁る。

 と言っても、使える物はわずかであろうが。


 そして、一つの死体から情報を抜き取るべく能力を使う。

 死体を蘇らせ、抜き取るのだ。

 生きた状態の方が情報は確実なのだが、欲しい情報は十分引き出せれると思われる。


「起きろ。」言語ではない言葉で命令する。


「がああああっ。おおお。」


「苦しいか?」


「いあああううあああ。おおまえがあああまえががあああ」


「そうだ。俺が滅した。」


「おおおおのおのおのおおええええ」


「楽になりたいか。ならば答えろ。」


「あいなああにをだぁぁぁ」


「名前だ。お前の名前を言え。」


「きいいぎざあああまあああ」


「そら。言わぬともっと苦しいぞ。」


「があああががあがああ」

「ごごごあうううルス」

「あああ」


「ウルスだな。よし、楽にしてやろう。」

 死体をつかんで死体からウルスの精神を解き放つ。


「ウルスよ。貰ってゆくぞ。」

 名前がキーとなり死体から記憶のすべてを抜き取ってゆく。

 遺伝子構造等、膨大な情報が流れ込んでゆく。

 生まれた故郷の風景から、戦いに敗れて盗賊になり数々の非道を尽くしても、うまく回らない人生にあれて行く事に怒りを感じ、さらに非道を行う様が次々と・・・

 この者はそういった感情に支配されていたのか。

 少なくとも、死んで解き放たれた事により、想いは消えてなくなるはずだ。すでに無くなっているように感じる。


 他の死体からもいくつか抜き取る。

 主にはここの人類の情報なのだが、生活様式や軍事規模。階級制度や王族。通貨や物価。生物や化学。ありとあらゆる情報を調べる。


 中には元支配階級だった者もいた。

 ある者は、狩人。ある者は農民だった。

 戦争で住んでいた地を追われたり、戦争へ連れ敗れて行き場がなくり盗賊になる者が多いらしい。


 さて、後は体を擬態するための情報を集めよう。

 元からそれほど変わらない見た目ではあるが、出来るだけ合わせておこう。

 私と違う部分は、頭部はほとんど同じではあるが、やや丸みがあって、頬には肉が付いている。

 顎は少し角ばっている。

 肌の血色がよい。

 首は短く、肩は狭い。

 肩の後ろの骨は小さく平らである。

 肋骨は本数が多く、ずんぐりしている。

 腰骨は同じくらい。足はまっすぐ伸びている。

 体重は50キロから75キロくらい。

 身長は小さく、155センチから195センチの者がいた。

 そして、脆弱な精神。

 ざっとではあるが十分だろう。


 武器は、槍が多い。青銅の剣や鉈。短弓と長弓。ナイフ。

 背嚢、腰に袋。

 麻かリネンの服。皮の防具。革靴。皮手袋。

 銅の鍋、木製の食器。

 調味料は塩があればいい方。干し肉、固いパン。

 一人だけ鉄の剣を持っていた。



 種族の強さは環境に依存するが、この惑星では未開発であるが故の発展途上というところであろう。

 未だ発展の途中であるが故、未来は無限である。

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