第8話 眷属化
そんな和やかな事をやっている時だったが、もう一つ気になることがある。
すごく。
先ほどの獣が熊の内臓を喰った後、肉も食っていたが、満足したのか毛づくろいをし初めたと思ったら、今度は寝そべって毛づくろいをしている。
完全にくつろいでいる?
うん。いいんだけどね。
どうやら、自分たちを敵だとは思っていないらしい。
こちらも、敵となる生物は少なくて助かる。
流石に銃の発射音には驚いていたようだったが、再び戻ってきたらこの様子だ。
すぐ近くで食って寝る。
気になる・・・。なぜ去ろうとしない?
こんな獰猛そうな生き物が目の前にいる。
それだけでも気になるが、私の体を噛んだ時から、獣が変化しようとしている事がもっと気になる。
この惑星と私のエネルギーを取り込んで、生物としての有り方が変わろうとしているのだ。
吸血鬼としての遺伝子は時として他の生物に大きな変化をもたらす場合がある。
吸血鬼に噛まれ、遺伝子情報を取り込むと、普通ではない生き物になってしまう。
その遺伝子やエネルギー、体質、その時の状況で多様な変化をもたらす。
始祖に近い者の血を受け、吸血鬼と地のエネルギー大量に取り込めば、同族の吸血鬼になる。
そんな条件がある為、同族を増やす事は、力を持った者でないとできない事であり、大変な作業なのだ。
それが今、目の前で起ころうとしている。
この獣はそのうちこちら側の生物へと変わるだろう。
その前に、試練が訪れる。どのような生物でも、こちら側として生まれ変わる時には大きな変化が必要であり、その裂けるような痛みと大きなエネルギーの奔流にかき回される。
それは時として、飢餓によりその生物の精神と生命を失う程である。
おもしろい。
そのような大量の遺伝子の注入もなく、同族へと変化する様は見たことがない。
それは未知である。
獣から従えるべき使いとして変種させることはある。
同族を作る時とは違って、吸血鬼の血から作った霊薬と、ナノマシンを少しばかり注入するのみで作る。
筋肉の構造を変える事無く、精神構造を変革させて作るだけなので、元からある程度のエネルギーを持っていなければできない。
それはワーウルフ等の眷属を作る時だが、条件が揃っていなければ補ってやらねばならず、悲惨な結果となる場合が多い。
この獣の場合は、非常に珍しいモノが見られるか、見たくない結果として終わると思う。
数時間後に大きな変化が見られるだろうが、今は、体の中でウイルスが増えるがごとく、吸血鬼の血が増えていることだろう。
やがて起こる変化を楽しみにしておこう。
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