第5話 再生

 しばらくの時間があり、背骨の神経が繋がったことにより、多くの情報が流れ込んでくる。

 しかし、繋がったとしても、体の大部分が傷んで、元の行動できるまでには、まだまだ時間がかかるだろう。

 だが、あまり余裕がない。

 次なる脅威が迫っていると能力が伝えてくる。


 獣もそれを感じ取ったか、その場で警戒を強めてそちらの方を凝視し、唸り声を洩らしている。

 彼にとっても脅威であるらしく、じりじりと下がってゆく。ピリピリとした感覚が伝わってきた。



 私の体の方は、神経だけだった修復から、外皮へ。外皮から血管。気管、消化器官、筋肉・・・。

 順番に再生してゆく。

 血管が繋がったとき、大量のエネルギーが流れ込んできたのがわかる。

 そのエネルギー量は、元の量を超える程、膨大であった。



 もしかしたら、切り離されている間に、何かの理由で体へと大地から吸収していたのかもしれない。

 体は切断された部分が潰れていた分、質量が少なくなったが、代わりに再生しようとエネルギーを吸収していたのかもしれない。

 その膨大なエネルギーにより、再生の速度を上げて体を再生させてゆく。

 エネルギーに余裕がある分、再生が早い。


 千切れた筋肉や砕けた骨、飛び散った肉片や血液までも吸収し、元の体へと戻ってゆく。

 途中、寄ってきた小型の敵性生物や微生物までも取り込んで、解析しつつ消化して、体の一部へ。


 悪くない。

 この惑星の生物は美味だ。


 微生物は面白い構造をしていた。

 変わったやつを見つけたのだが、単純なマクロファージや連鎖球菌ではあるが、外気に触れても活動していけるようだ。

 どのような環境があればそのような能力を獲得できるのか。

 しかし、大地から吸収しているエネルギーから考えれば、わかる気がする。

 小さな生物ほど恩恵を受ける質のエネルギーを膨大な量で埋蔵されているようだ。

 全力で再生しながらそんなことを感じていた。


 再生は完了しつつあり、大量の情報が流れ込んできた事で、溜め込んだエネルギーが膨大だった理由がかかった気がする。

 筋肉はこの切断された体の状況から、危機感を覚えて自立しようとしていたのだった。

 つまりは、自からの意思で大地からエネルギーを吸収しようとしていたらしい。

 ただ、重要な部分である心臓を失っていたので、吸収と再生しか行われない。そして、むやみに大量のエネルギーを内包する結果になったようだ。


 それはそれで危険なのだが、今回は助かった。

 こんな大量のエネルギーを、爆発的に開放する爆弾にならなくって良かった。

 食い散らかされて開放したならば、共に爆発に巻き込まれていたかもしれない。

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