第3話 合流


「天音、おっそーい!」


 それから無事にキャラクリと本当のゲーム初心者向けとなっていたチュートリアルを終えた私は、美紀とも無事に合流することができていた。

 キャラクリは基本的に現実の自分の身体と同じようにしか設計できないようだったが、唯一顔だけは自由にメイキングできるようになっていた。私はキャラネームに寄せるように猫っぽい顔にしたのだが、美紀はどうやら金髪碧眼という一種のテンプレのようなメイキングにしたようだ。


「絶対初期設定してたでしょ?」

「えへへ…………」

「えへへ、じゃないよ!あれほど言ったのに!」


 誤魔化すように笑う私を、可愛らしく叱る美紀。

 少しだけそんな茶番を繰り広げた後、私たちはOOOの話へと話題を切り替えた。


「それで、一時間で何か得られたの?」

「んー。ちょっと街の外を探索して、レベルも少し上げたくらいかなー」

「そっかー。まあ一時間だもんね」


 OOOでは、ゲーム開始地点を四つの場所から選ぶことができる。その四つはそれぞれ剣の街、槍の街、斧の街、槌の街と呼ばれ、それぞれその名前に対応した武器のスキル関連のイベントが多数用意されている。もちろん武器はそれ以外にもたくさんあるのだが、運営的にはまずは基本となるその四つの武器のどれかで遊んでほしいということだろう。

 ちなみに私たちが選んだのは槌の街で、なんとなく剣は混雑してそうだからと他の三つの武器から選んだ結果だった。


「序盤の敵は定番のスライムとかホーンラビットとかだったよ。まあ倒しても経験値とかはないわけだけど」

「レベルないって話だったもんね。……あ」

「……なに?」


 レベルと言えば、キャラクリの最中ですっかり頭から抜け落ちていたことがあった。


「そういえば、なんかキャラクリ始まる前にクエストみたいなの貰ったんだけど……」

「クエスト?」


 私の言葉にポカンと首を傾げる美紀。それを見た私は、まさかこれはと自分の鼓動が早くなるのを感じた。


「始まる前にクエストって、DLC(ダウンロードコンテンツ)とか?……いや、DLCがサービス開始一時間で来るわけないか。ってことは……」

「…………うん」


 その先は、もはや言葉も不要だった。

 美紀に促されるまま、クエスト一覧からそのクエストを確認する。そこにはやはり『能ある鷹なら爪を隠せ』というクエストが受注されており、その内容は……


『クエスト:能ある鷹なら爪を隠せ

 報酬:オーダースキル『能ある鷹は爪を隠す』

 クリア条件:アストラルオークを討伐するまで、基本スキル以外を使用しない。

 受注条件:① VR適性テストで最良判定を受ける。➁ OOO以外のソフトを起動した履歴がない。➂ フレンドがいない。』


「「オーダークエスト!」」


 二人で覗き込むようにその内容を確認した私たちは、興奮も隠さずに二人でそう叫び合った。

 そんな私たちの周囲にいたプレイヤーたちは、何事かと私たちの方を向いてざわめきだした。当然リリース直後にプレイしているようなプレイヤーはかなりモチベーションの高い人ばかりで、オーダークエストという単語に興味を示さない者などいないと言ってもいいだろう。そんな人たちに注目されてしまった私たちは、慌てて逃げるようにその場を去ったのだった。

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