第21話 あの夢へもう一度

「・・・ねえ、凛歌。あのさ・・・また歌いたい、とか思ったりしないの・・・?」



「え・・・・あ・・・・・まあ、思わなくはないけどさ。」



「そう・・・・。な、ならさ。もう一度、目指してみない?」


「え・・・・?」



僕は暫し、返答に窮した。確かに、何だかんだ僕は歌がまだ好きだし、ちょっとさっきだって、気持ちがいいなと思っていた。


でも、またチャレンジしたいとは思ってなかったのだ。まだまだトラウマを引きずってもいたし、僕はもういい年齢になってしまっていたし、それに何より僕にはもう、誰かを震え上がらせられるような、そして自分を納得させられるような歌を歌える自信はなかった。


もう僕にまたチャレンジするだけの体力はない。



「い、いや、無理だよ、もう。 僕はもういい年だし、もうそういうのはチャレンジするだけの勇気がないし。 ・・・・それに、もう僕は誰かの心を震わせるような歌を歌える自信はもう・・・ないんだ。」



「何言ってるの! あの車の中で聴かせてくれた歌、最高だったじゃない。初めて聞く曲だったけど、あの曲の荒々しくも強かな歌詞と、貴方の優しくてスッと入ってくるような歌声と歌い方・・・・どれをとっても凄かったわ。本当に、このまま夢を閉ざしちゃってもいいの?」


ジッと、僕の目を強く、そして問いかけるようにとわは見つめてきた。


なんだか自分の歌をそこまでよく言ってもらったのは久しぶりだったから、正直言って、凄く嬉しかった。 自分はもう歌を離れてかなり経っていたけど、まだ誰かの心に響かせることができたのか。まだもしかしたらいけるんじゃないか。 という、希望が持てた。


そして、おじいちゃんから力を与えてもらって築き上げた歌手になるという夢がまたこの時、少し心の中でグルグルと動き出したのを感じた。


「やるなら今しかないんじゃないの凛歌。 こうして、色々とリセットができてる今だからこそ、もう一度あなたの本当の夢にトライしてみるべきなんじゃない?」


確かにそうだ。多分、僕はまたこのまま一般企業に行っても、きっとうまくはいかない。でも、かといってこのまま放浪し続けても、資金がすぐに底を付く。


なら、ここでもう一度夢に向かってトライするべきなんじゃないのか。


いけるのか。いや、ここはきっといくべきなんだ。


最近はあまり挑戦で来てなかった僕の人生、もう一度ここで賭けてみてもいいんじゃないか。



そこから、僕は暫く唸った末、結論を出した。


「・・・・そうだね。・・・・うん、もう一度、夢に向かってトライ、してみるよ。」


うん、っと言いながら、笑顔でとわは頷いた。


「よーし。そうと決まれば、これからどうやってくか作戦会議ね。一緒に、じっくり考えましょ!」


こうして僕は、また夢を追いかけてみることにした。


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