第111話 ゲームシナリオにおける読みやすさ
前回に引き続き、自分が携わっているゲームのシナリオディレクターから頂いたフィードバックを引用します。
今回は読みやすいセリフについて。
ゲームのテキストは小説や脚本と違って独特の尺があると思います。
自分が携わってるゲームは16文字×3行の仕様となります。他のゲームだと長かったり、逆に短いというものもあると思います。
で、今回の備忘録の結論は先に言うとこの仕様に合わせ、読みやすいセリフを心がけてください、ということ。そのためのアドバイスを頂きましたので、いくつかご紹介します。
・読みやすいセリフ作りの肝は情報量のバランス。
自分が書いた元セリフを紹介します(一部ぼかしてます)。
<元セリフ>
そうかもしれませんけど…でも、
ありますかね? あの街に人気に
なれるような仕事が…
ディレクターは読みやすさを教授するため、このセリフを段階的に調整してくれました。
<調整案①>
そうかもしれませんけど…
でも、ありますかね?
あの街に人気になれるような仕事が…
一行目の「でも、」を二行目に、そして二行目の「あの街に人気に」を三行目に移し、まず見やすくします。ポイントとして「セリフ途中改行はなるべく少なく」が基本だそうです。次に
<調整案②>
そうかもしれませんけど…
ありますかね?
あの街に人気になれるような仕事が…
調整案①の一行目にある「けど」と二行目にある「でも」が意味的に重複してるため、「でも、」をカット。残る問題は三行目が17文字となっていること。これでは17文字目の「…」がセリフウィンドウに入りません。これを含めディレクターは、
「…これだと3行目だけに情報が集中しすぎており、1、2行目に漢字がない事も合わさって、「ブロック単位(セリフのウインドウ全体を見た時)」でセリフを眺めた時に読み手の視線が定まりにくいです。人は無意識的に情報量が多い方に目が向いてしまうものです。このセリフで言うと1行目から3行目につい視線が移ってしまい、2行目を読む視線が「滑る」のです。
…また、3行目はセリフの改行位置を変えただけですが、17文字になっています。
ということは、そもそも「書きたいセリフ」が17文字になるので2行に跨がせたということでしょう。しかし、そういう時はなるべく1行で収まるように(改行が少なくなるように)セリフ自体を調整すべきです。」(原文ママ)
と方向性を示して下さいました。この方向性に従い、
<調整案③>
そうかもしれませんけど…
あの街にありますかね?
人気になれるような仕事が…
③のセリフの解説は以下になります。
「最終的には「あの街に」を2行目に持ってくることで2行目の情報量を増やし、3行目の情報を減らしました。これにより3行目だけが突出して長くなることも防げて、ブロック単位でセリフを読みやすくなります。」(原文ママ)
言われてみればそうだなと思います。気づけよ…自分にツッコミを入れたくなります。ただ言い訳を挟みますが、物語を書き切ることで自分は一杯一杯になってしまい、読みやすいセリフまで気が回らない状態でした…。これも自分の実力不足です。しかし、こうして丁寧にポイントを教えて頂き、ありがたやです。
他にも、
・1行に収められるセリフは1行に収めた方が良い
・「漢字>数字>カタカナ≧ひらがな」(人が文章で目に付く情報量の順番)
・ひらがなだけのセリフはやや読みにくい
と細かいアドバイスも頂きました。
ただ以上のアドバイスはゲームシナリオに限った話なのかもしれません。小説も脚本も文章量の尺はあるにはありますが、ゲームシナリオほどではないですから。けど、読みやすいセリフ、文書はいずれの表現方法にも求められることだと思います。
以上のアドバイスがみなさんの創作のヒントになれば幸いです。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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