第8話 セリフのベクトル

キャラは誰に対してセリフを発しているのか。


このテーマもシナリオ制作にあたっては当たり前の話でしょう。けど、自分のために整理します。


キャラは「その場にいるキャラ」に対してセリフを発します。会話、相談、会議などなどシチュエーションは様々あるにせよ、キャラは本人含め(独り言)その場にいるキャラに話しかけます。


そしてキャラは「読者」に対してもセリフを発しています。キャラが読者に直接話しかけていないにせよ、読者はキャラのセリフから色んな情報を得ます。キャラの感情だったり、その場の雰囲気だったり、はたまた状況の説明だったりと物語の進行に必要な情報がセリフには詰め込まれています。創作するに当たり、難しさを感じるのはこちらの場合ではないでしょうか。「もっと読者を意識して」なんてよく聞かれるワードだと思います。


セリフは「その場にいるキャラ」と「読者」という二つの存在に対してベクトルを持っている。


「その場にいるキャラ」に対してのみに向けたセリフになるなら、「こいつら何は話してんの?」と読者は物語から置いてけぼりをくらいます。


一方、「読者」に対してのみに向けたセリフになるなら、「自然な会話になってねえんじゃねえ?」と物語からリアリティーが失われます。


自分は全部説明しないと気が済まないタイプなので後者のパターンに陥りがち…。


悪意はないんですよ? だって説明しないと読者に対して失礼じゃないですか。作者の意図をきちんと受け取ってほしいんです。受け取ってほしい情報をスルーしちゃって、この先の物語が楽しめなくなったら嫌じゃないですか? 誰が責任をとるんですか? 私、取りたくないです。だから責任を果たすため説明するんです。


でも、この過剰な配慮が逆にリーダビリティを妨げるのでしょうね…。


説明を過剰にしてしまう自分にとって読者の想像力を信じることが必要なのだと思います。


自分は説明を過剰にする店員さんに対して「そこまで説明しなくてもわかるよ。バカにするな」とか思ったことがあります(決して口に出していません)。同じことを自分は創作でもしているのでしょう…嫌だ嫌だ。


読者に対して礼儀を尽くす意味でたくさん説明したら、逆に失礼ってなんだか皮肉ですね。説明好きな人は気をつけましょう。

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