第2話 細部へのこだわり

前回、ベテランと駆け出しライターとの一番の差は技術と言いました。


そのことを特に感じたのは細部へのこだわり。


あるキャラのセリフで「外部」「内地」と使用したら「外部」「地元」と直されました。他にも「優しい考え」が「甘い考え」、「こけ」が「コケ」。あとは「…」の数。沈黙のセリフのときは『「…」を〇個にして下さい』と言われたことがあります。


「ですます調」「である調」の使い分けもブレがあると判断されたら容赦なく赤ペンが入ります。


カッコいいと思って書いたセリフも「このキャラは〇〇ということが行動原理になっていて〇〇な過去があるから、こんなこと言わない」とボツ理由を追記されて、書き直しが命じられます。まあ、ボツ理由を追記してもらえるだけでいいですよね…心は削られるけど。


修正作業でありがたいことは上記のように、だからこう直しました、とコメントがついてくることです。


ほかにも、このセリフだとユーザーにこのように響き、それは誤ったキャラ性を伝わってしまうため、こう直してください、というのもありました。


修正箇所を見て思うことは、修正前のセリフでも意味が通じるところです。


斜に構えて修正コメントを見ると「別にユーザーそんなところまで見てないって…」「ディレクター、気にし過ぎだって…」と修正されたことの意味を深く考えなくなると思います。


ベテランのライターは「別にユーザーそんなところまで見てないって…」っていうところを徹底的に考えます。


少しでもユーザーへのストレスが少なくなるように、少しでもユーザーが物語世界に没入できるように、そのために細部までこだわる。


ここがベテランと駆け出しの一番の差だと思う。


今の自分に足りないところは、書いたセリフがユーザーにどう響くか、ということを考え抜くこと。


もちろん、ちゃんと考えてセリフを書いているつもりです。しかし、考え抜くところまでは至っていない。この「抜く」というところが難しい…。どこかで「これぐらいでいいかな…」「この表現でわかるよね…?」と妥協してしまってないか。


追及か妥協か。


前者を選べる者がライターへの階段を登れるのだろう。

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