美少女と放課後デート

 何処に行こうかと話してた時に知ったのだが、俺と月姫は中学の学区の関係で違う中学だったが住んでる所は近かったらしい。もしかしたら知らないだけで、どこかで会った事があるのかもしれない。そんな事も思ったがそもそもこんなに可愛いんだから見かけていたら覚えてるはずだし覚えてないって事は結局会った事がないって事なんだろうな......


「ねぇ颯!どれも美味しそうでどれにしようか凄く迷ってるんだけど、颯はもう決まった?」


「えっ?」


「もぅ、初恋の付き合って初日の初デートで初放課後デートなのに違うこと考えてるでしょ?」


「い、いや......ごめん。なんで近いのに会った事が無いんだろなて思ってさ」


「それは、颯が見つけてくれなかったからじゃない?」


「なんだよそれ?まるで月姫は俺の事見つけてたみたいな言い方じゃないか」


「そ、それは......もう!そんな事より何にするか決まったの?そろそろ私たちの番だよ?」


 なんかごまかす様に話をそらされたが、確かにそろそろ決めないと周りに迷惑かけるな。


 俺たちは学校を出て何処に行くかって話をして、お互いの家の間にある商店街に来ていた。俺が商店街を過ぎた先にある住宅街で、月姫は商店街の真ん中ら辺から曲がった先の住宅街だったのだ。


 朝も通学に歩いた商店街だけど、今は月姫と一緒ってだけでなんかいつもより輝いて見えた。そして今、小さい頃からよく来てた商店街でも人気なジェラード屋に来ていたのだ。夏休みが終わったとしても今日は午前中だけだったし、外もまだまだ暑い。だから俺たちが来た時には、何人が並んでて俺たちも並ぶことにしたのだ。そしてあと少しで俺たちの番になるわけで、まだ後ろには数名並んでるから、あらかじめ何にするか決めといた方が良いって事になってたのだ。


「俺は、頼むのはいつも決まってるから問題ないけど、月姫はまだなのか?」


「今月限定とかあるから悩んじゃうんだよね~」


「そういえば今日からのがあるのか......忘れてた」


「いつも同じのらしいし忘れてても仕方ないよ」


「ところで今月は何なんだ?」


「スィートポテトみたいで迷っちゃうんだよね」


「どうせなら、ダブルにしたらいいんじゃないのか?それなら問題ないだろ?」


「そ、それは......」


 俺は一種類のシングルの予定だが、二種類のダブルもあるから悩む程でもないはずなのだが......もしかして月姫は......


「味が混ざるのが嫌なのか?」


「えっ?」


「ダブルだと、味が混ざるからそんなに悩んでるのかなと思ってさ」


「そうじゃなくて......足りないの」


「え?」


「だ、だから!三種類気になるから結局悩んじゃうの!」


「三種類で悩んでたのかよ......」


 俺は、そんな事で真剣に悩んでる月姫が子供っぽく見えて、思わずクスッと笑ってしまった。


「うぅ~、食いしん坊とか思われたくないから言いたくなかったのに......颯が笑ってバカにしてきた......」


 月姫は、恥ずかしそうにしてたが、俺が笑ったせいで、泣きそうな顔になってた。


「泣きそうにならなくてもいいだろ?そんなに悩むなら言ってくれたら良かったのに」


「えっ?」


「俺一種類だったから俺の方でもいいなら、一種類追加できるからそれで問題解決だろ?」


「いいの?」


「むしろ、それを断るとか思われてる方が悲しいんだけど?それに......お、俺たち」


「ありがとう!颯最高!大好き!」


「ちょ、ちょっといきなり抱きつくな!」


 さっきまで泣きそうな顔をしてた月姫は俺の言葉を聞いてパッと笑顔を取り戻し、いきなり俺を抱きしめてきたのだ。思えばまだ手も繋いでないのに抱きしめられたりと、なんか順番がおかしい気がする。それに月姫がこれからも、こんなスキンシップしてくるのかと思ったら、俺の理性がいつまで持つのかそれがすごく不安になった。それにさっきから周りの視線もかなり殺気立ってる人もいる。


「そ、それで月姫はどれが良いんだ?」


「えっとね......スィートポテトとラフランスとストロベリーだよ」


「なら俺が――」


「お次のお客様どうぞ」


 俺が選ぶ味を月姫に教えようとした時、ちょうど俺たちの番になり店員さんに声をかけられた。


「なら月姫が最初に注文してくれ。選ばなかった方と俺のやつで注文するから」


「わかったわ。すいません。ラフランスとストロベリーのダブルと、スィートポテトとチョコのダブルでお願いします」


「すぐ用意しますのでお待ちください」


 店員さんは、それだけ言って月姫が注文したジェラードを作り始めた。あれ?月姫に俺が頼むの言ってたっけ?


「なあ月姫、俺が何を注文するか教えてないと思うんだけど?」


「え?そ、そうだっけ?......あ、あの時私が聞いたのにやっぱりちゃんと聞いてなかったんだ!」


「あのとき?」


「ほらやっぱり!さっき私が話してたのに颯考え事してたって言ってたよね?その時に聞いてたんだけどやっぱりちゃんと覚えていなかったんだ」


「それはわるかった!」


 さっき、考え事してる時にも怒られたが、どうやらその時に俺は注文するものを無意識に答えてたみたいだ。それにしてもなんで月姫は俺が聞いた時一瞬焦ったような感じで、目を左右におよがせてたんだろ?


「はい!おまたせしました」


 そんないいタイミング?で店員さんは俺たちにジェラードの入ったカップを二つ渡してきた。俺は月姫にそれを受け取ってもらい代金を支払った。


 少し移動したら休憩用のスペースがあるから俺たちはそこへ行き食べることにした。俺が月姫からカップを受け取ると申し訳なさそうな顔を俺に向けてきた。


「その、おごってくれてありがとう」


「いいってこれくらい、それに......俺たち付き合うんだしこれくらい」


「付き合う、う、うん付き合ってるんだもんね......で、でもこれからは基本的に割り勘で行こ?じゃないと、私がその......申し訳なくて」


「わかった、これからはそうしよう」


 俺は月姫の案を受け入れることにした。クラスの陽キャの男子とかの会話を聞いてたら、「デート代がすごくかかる」とか「彼女と出かけるためにバイトしないとなぁ」って聞いてたから、彼氏が出すものなんだって思ってたし、付き合うとめっちゃ金かかるんだなって認識だったから、正直割り勘と言ってくれて凄く助かると思った。バイトはしてるけど、長期休暇の時しか基本してないし、だからと言ってそのバイト代をすべてデートとかに使うのも嫌だしな。


「そっちの食べるのもいいけど、俺の方に入ってる方も早く食べてくれよ?」


「ん?どうかしたの?」


「俺が食べれないという......い、色々あるからできれば先に食べてくれたら助かるなって話だ」


 月姫は俺がいきなり何を言い出してるんだってキョトンとした顔で俺の方を見てたが、何かに気が付き、ニヤニヤと意地悪でも思いついた子供のような笑みをしながら、俺の顔をじっと見つめてきた。


「あれ?もしかして緊張してるの?間接キスとか気にするのかな?」


「なっ!?そんなの気にするわけないだろ?」


「なんだ......少しは意識してくれてるかなって期待してたんだけどなぁ~」


 声色は少し残念そうだが、嬉しそうな表情で月姫は俺の顔を覗き込んでた。今日一日......というより、この数時間で俺は何度月姫にドキッとさせられてるんだろか。

 俺は、経験の無い恋愛知識を必死に脳内に並べ、何か仕返しできることがないか必死に考えた。ふと、あることを思いついた。でもこれ......俺も結構恥ずかしいし、万が一月姫がまったく気にしてなかったら、ただの自爆になりかねないんだよな......でも、このままされっぱなしも嫌だしな。


「なら、月姫は特に気にしてないって事か?」


「えっ?も、もちろんよ。それぐらいで緊張するわけないじゃない」


「そうか、ならこれも食べてくれ」


 俺はそう言って、自分のスプーンで月姫が頼んだジェラードを一口掬って月姫の口元に持って行った。


「えっあっえ?」


「どうしたんだ?これぐらい緊張しないんじゃなかったのか?」


「うっ......もっ、もちろん緊張してないわよ。ただいきなりしてきて驚いただけなんだから」


 そう言って、勢いよく差し出されたスプーンを月姫は咥え、ジェラードを食べた。


「どう?これで緊張してないってわかったでしょ?」


「そうだな、ならハイっ次の分」


 そう言って俺はまた一口分掬って、誰から見ても緊張して恥ずかしがってるのが分かるほど顔を赤く染まってる月姫に持って行った。


「い、いいわよそう何度も持ってこなくても!」


「なに、これくらい気にしなくていいから」


「なによ、そんな事しても私別に恥ずかしくないからね?」


 そう言いながらも、なかなか食べようとせず躊躇してる月姫を見て、俺は仕返しができたことを心の中で喜んでた。そりゃ最初の一口は、勢いで食べれて誤魔化せたとしても、二口目はそう言う訳にはいかないもんだろ?なにせ一度食べてもう来ないと安心したところに持ってこられるし、最初の勢いだってもう無い訳だから、どうしても意識してしまうはずだ。もし本当に気にしてないなら、そのまま食べて何か言い返してくるだろうし、食べないって事は、恥ずかしいし緊張してるって事になるわけだ。もしあっさり食べられたらどうしようかと思ったが、その心配は必要なかったみたいだな。


 俺はそんなに事を思いながら、必死に笑いそうになる気持ちを抑え、表情に出さないようにして食べるかどうか月姫を見ていた。


「はぁ、もう......そんなに食べて欲しいなら食べるわよ」


「えっ?」


 そんな俺の気持ちに気づいてるのか分からないが、諦めたような感じで軽くため息をついた月姫はさっきの勢いある感じとは違い、そっと小さく口を開いてスプーンの上にあるジェラードを食べた。その時の俺はまだ自分の身に何が起きるのかまでは予測してなくて、口の中のジェラードを食べ終えた月姫が発した言葉で俺は自分の過ちに気が付いた。


「私ばかりしてもらうのも悪いわよね?味見もかねてどうぞ」


「い、いや俺は大丈夫だから......」


「気にしなくていいんだよ?この二種類も美味しいから、颯にも食べて欲しいだけだから」


 そう言って、月姫はストロベリーのジェラードが乗ったスプーンを俺に差し出してきた。そう......俺は自分も同じ事をされるとは思っていなかったのだ。まさに身から出た錆とも言えるし、俺自身が全力で投げた特大ブーメランがまさに今戻ってきたのだ。


「もう、そんな事言わないで早く食べてよ。ラフランスも美味しいから、そっちも食べてもらいたいし、この暑さで溶けるのも早いんだからね?」


「わ、わかった」


 俺は、もう何を言っても敵わないと思い、差し出されたスプーンを口に運んだ。少し甘酸っぱいけど、とても美味しかった......と思う......正直味なんかよくわからなかった。


 そして、お互い食べさせ会った後二人して気が付いたみたいで、俺たちはなかなか自分のジェラードを食べれず、お互い何を話せばいいか悩み沈黙が続いた。この沈黙を破ったのは月姫だった。


「ねぇ、なんで私を好きになったの?」


「えっ?」


「だって、颯が私を好きになった理由教えてくれてないんだもん。気になるじゃん」


「そういえばそうだっけ?その......あれだ」


「あれって?」


「本人に直接言うのは恥ずかしいんだけど、初めて月姫の声を聞いた時、なんか耳に残ったし......どこか懐かしく感じたんだよな。初めて会ったのにおかしいよ......な?って月姫ど、どうしたんだ?どこか痛いのか!?」


「な、なんでもないよ......えへへ、凄く嬉しかっただけ。颯が私を好きなった理由聞けて良かった」


 月姫は、俺が好きになった理由を聞いて突然泣きだして焦ったけど、どうやら嬉しかったらしく、俺もなんか嬉しかった。


 ジェラードを食べ終えた俺たちは、色々なお店を見ながら歩いてたら後ろからいきなり声をかけられた。


「あら?月姫じゃないの」


「えっ?お母さんどうしてここに?」


 そう、声をかけてきたのは月姫の母親だったのだ。

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君の事を覚えてないけど、俺は再び君に恋をした 海音² @haru19890513

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