2話 美少女は覗き魔に恋してた!?
「ねぇ颯、私と付き合って?」
......えっ? 今蒼井さんの方から俺に告白してきた?
俺は、いきなり抱きしめられた事に驚いてるのに、さらに告白まで......えっと、これは俺が望んでる妄想の世界なのか? 未だに理解できてない頭を必死に使って、蒼井さんの言葉の意味を必死に理解しようとしてた。
「ねぇ? やっぱり、さっきの話を聞いて私の事幻滅しちゃって、付き合えないかな?」
「そ、そんな事あるわけないだろ? 蒼井さんから言ってくれるなんて正直凄く嬉しいんだ。ただ、どうしても俺を好きになった理由がよくわからなくて......他に理由とかないのかな? なんて考えちゃったり?」
蒼井さんは、俺に半ば諦めた感じで確認してきたが、俺を抱きしめてる手は、不安や緊張からか僅かに震えており、蒼井さんが話し終わると、震えを隠すように抱きしめる力が強くなっていて、まるで離したくないと訴えてきてるようだった。
ただでさえ、蒼井さんが抱き着いてきて密着してるから、彼女からは甘酸っぱいベリーのような香りがしてくるし、俺を見上げながら見つめてくる潤んだ黒い瞳とその下に見える柔らかそうな唇と、蒼井さんが呼吸に合わせて強弱をつけながら押し付けられる彼女の二つの胸の膨らみ......そんな状態で、更にそんな不安で震えてる蒼井さんまで見せられたら、俺だって理性を保つのが限界になってしまう。
無意識に俺の腕は蒼井さんを抱きしめようと背中に回しかけていた。このまま蒼井さんを抱きしめ付き合えば、どれだけ幸せなんだろう。そんな事を考えたとき、脳裏にある疑問が浮かんだ。 そう、蒼井さんの理由が未だによくわからないって事だ。そんな疑問が浮かんだのと同時に、俺の腕は彼女の背中から離れ、気が付いたら自然と蒼井さんに脳裏に浮かんだ疑問をそのまま言葉にして問いかけていた。
「さっきも説明したけど、颯君にずっと見られてたら、だんだん意識し始めて、胸のトキメキが収まらなくて、私は颯君が好きなんだってわかったからだよ?」
「本当にそれだけなのか? なんか引っかかるんだよな......こう、うまくは言えないけど何か大切な何かがあるような......」
「そんな事言って、本当は私と付き合うのが嫌なんじゃない? 中途半端な返事よりはっきりして欲しいかな......ダメならダメで私もちゃんと諦めるから......」
「嫌とかそんな事思うわけないだろ? 逆に、俺みたいな告白しても無理だろって思って最初から蒼井さんと付き合うとかそんな事諦めてたぐらいさ。 それなのに、実は蒼井さんも俺の事が好きで、しかも告白までしてくれて嫌なはずなだろ? このまま蒼井さんと付き合えるって考えたら嬉しいに決まってんじゃん!!」
俺は思ってる事を蒼井さんに伝え、そして自分自身にも言い聞かせてた。だってそうだろ?普通に考えてこんなチャンス二度と無いんだし、それに蒼井さんの理由に疑問があるってより俺自身の中で、何か言葉にできない何かが引っかかってるってだけなのに、それで蒼井さんを不安にさせるのは間違ってる。蒼井さんがここまで想いを必死に俺に伝えてくれたんだ。俺も蒼井さんへの思いをちゃんと伝えないと。
俺は心の中でそう決意し、そっと俺も蒼井さんを抱きしめた。蒼井さんは突然抱きしめられた事に驚いたのか、蒼井さんの体はビクッと跳ねる様に震え、固まってしまってた。
「お、俺も蒼井さんの事初めて見た時から好きでした。 俺と付き合ってくれませんか?」
「ホントにいいの? 私と付き合ってくれるの?」
「俺と付き合ってほしい」
「う、うれしい......付き合えるんだ。わ、私......颯と......うっ、嬉しい......うぅ......」
蒼井さんは、そういって目じりに涙を受けべながら泣きそうな顔を必死に堪えながら、俺に微笑んできた。それでも、次第に堪えきれず蒼井さんは俺の胸でしばらく泣き続けた。
俺は蒼井さんの背中をさすりながら、ここまで喜んで泣いてくれる蒼井さんを絶対悲しませないと、そっと心で誓ったのだった。
しばらくして蒼井さんは泣き止み落ち着いてくれたみたいだったけど、なぜか俺に抱き着いたままだった。俺も流石にこのままは恥ずかしいく、できるだけ優しく話しかけるように蒼井さんに声をかけた。
「あ、あの蒼井さんそろそろ......」
「月姫......」
「えっ?」
「せ、せっかく付き合ったんだし、その......名前で呼んでほしいな......だめ?」
「ダメじゃないけど、その......今?」
「その......私達がちゃんと付き合ってるんだって、何かわかる事ないかなって思ったんだよね......もしかしたら夢なんじゃ無いかとか、こんなに嬉しくて幸せなのに気が付いたら全部幻で部屋のベットの上で目が覚めるんじゃないかとか考えちゃったり......」
「あお......月姫がそんなに不安に思う事は無いんじゃないかな?むしろその心配するのは俺の方だと思うんだが?」
なんで月姫がそんなに不安になってるのか俺にはわからなかった。だって、こんなに可愛くて学校でも人気者の彼女がなんで俺との事でって思うのは当たり前じゃん?
だけど今、目の前にいる月姫はどこか俺の言葉を聞いて一瞬ハッとした表情をしたと思えば何かを思い出し、悲しそうな表情を浮かべていた。そして、消え入りそうな声で、まるで自分自身に言い聞かすかのようににボソッとつぶやき始めた。
「わかってた事じゃん......大丈夫これは夢じゃなくて現実だし、これからまた始めればいいだけなんだ......そうだよね?」
俺は、月姫に何か言葉を返すべきか、それとも聞かなかった事にすべきか決めかねていた。だって、色々よく分からない事を言ってる部分もあったからだ。わかってた?これからまた?俺と月姫がちゃんと話したのは今日が初めてだし、顔を見たのも高校で初めてだから、言葉の意味が理解できなかった。もしかして昔どこかで会ったことがあるのか?
「な、なぁ月姫聞いてもいいか?」
「えっ? なにかな颯?」
「あのさ......」
俺が月姫に質問しようとした時、突然教室の扉が開いた。
「こら深風!まだ教室に......」
いきなり教室に入って来た星野先生は、俺を大声で呼び注意しようとしてたが、俺たちの方に視線を向けると、固まり言葉も止まりただこちらを見てるままだった。そりゃそうだ、まだ残ってる俺に説教しようとして教室に入ったら、女性に抱きしめられてるんだから、理解できず思考が止まることもあるだろう。と言っても、俺と月姫も突然の事に動けずそのままだった。
「お、お前たち!教室でな、何をしてるんだ!!」
星野先生は顔を真っ赤にして、怒りでプルプル震えながら俺たちに怒鳴ってきた。
「ほ、星野先生落ち着いて、別に何もないですから!」
「何もないなら、なんで抱き着かれてるんだ!......ん?よく見たら、蒼井か?!噂で何人もの告白を断り続けてるって聞いてたが、これはどういうことなんだ?」
星野先生は月姫に気がづき、驚いた様だった。月姫は星野先生の質問に何と答えるべきか悩んでるようだった。ただ......月姫さん?なんでこの状況でも離れてくれないのかな?いったん離れた方がいいと俺は思うんだけどさ?
そんな俺の心の声もむなしく、月姫は離れる事はなく何か納得したように一度頷いてから口を開いた。
「どうもこうも、はや......深風君にさっき告白して付き合うことになったんです。ずっと前から好きだったから、付き合える事が凄く嬉しくて抱き着いちゃったんです。ただ、その後あまりにも嬉し過ぎて思わず泣いちゃった私を深風君は、ただ優しく背中をさすりながら私が落ち着くのを待っててくれたんです」
「そ、そうか。でもな蒼井流石に教室でしかも今日は始業式だけだったから、時間的にも他の生徒が見る可能性もあるんだから気を付けないと、あらぬ誤解とかあったら大変だろ?」
「なるほど、先生ありがとうございます。確かに変な噂も嫌ですけど、そうやって他の女子が颯に興味を持って、颯の良さを知って近寄ってこられたら困りますし、それならこそこそせず見せつけたら良いって事ですよね?」
「ちょ、月姫それを言うなら逆だろ?俺が他の男子から命を狙われそうで怖いんだが?」
「もう!颯は自分の魅力を抑えすぎなんだよ?自分の魅力にもっと気づいて欲しいんだけど?そうだ!なら、明日から私が手伝ってあげる。そうしたら、一緒にいる事もできるし、周りにも見せつけれるし一石二鳥じゃない?」
「そうじゃなくてだな......」
「深風!そして蒼井!私の話をどう解釈しようがお前たちの勝手だけどな、私の前でイチャつくのはやめろ!ただでさえお前たちが帰らないから私は困ってるんだぞ!ほら、付き合う事になったんならこんな所にいないで、放課後デートでもして来い!」
俺と月姫のやり取りを見てた星野先生は痺れを切らした様で俺たちの話を遮り怒ってきた。俺と月姫はお互いの顔を見合わせ、ほぼ同時に星野先生の言った放課後デートを思い浮かべたのか月姫は耳まで真っ赤に顔を染め上げ、俺もまるで熱でもあるのかと疑いたくなるほど顔が熱くなってくのを感じた。
そして俺たちは、急いで自分の鞄を手に取り星野先生に一言謝って慌てて教室を後にした。
星野先生はどこか呆れながらも、フッと笑みを浮かべてた。俺が横を通り過ぎる時、星野先生は何かを言ってきたが俺はそれを聞き取れず、立ち止まり先生の方を振り向いたが、片手でシッシッと俺を追い払うように、手を動かしてた。
「颯早く行こ!」
「あ、あぁ」
俺は月姫に急かされ、急いで彼女の方へ駆け寄った。月姫は俺が追いついたら嬉しそうに俺の片腕に抱き着いてきた。
「ちょ、いきなり何してるんだよ」
「なにって決まってるでしょ?恋人つなぎもしたいけど、やっぱりこうやって歩きたいなって思ったんだけど嫌だった?」
「嫌じゃなくてだな......」
俺はこれを言っていいのか悩み言葉が出てこなかった。こんな可愛い彼女が嬉しそうに俺の腕に抱き着いてきて、更に......月姫の柔らかい胸の二つの膨らみが、俺の腕に押し付けられて俺の理性がものすごい勢いで削られてるとか言えるはずが無いだろ?世のリア充男子は、こんな事されても平気とかどんだけ凄いんだよ......
月姫は何かに気が付いたのか、小悪魔みたいな笑みをしながら俺にそっと囁いてきた。
「私の胸ばかり意識するなんて......颯のエッチ」
「んなっ!?」
「ふふっ、この後の放課後デートが楽しみだね」
そう言って、ニヤニヤしながら俺を見上げ俺に見せる笑顔が、とても輝いて見え俺は蒼井月姫が好きなんだと改めて再確認した。俺は、この後の放課後デートが楽しみで内心浮かれながらも、それを月姫にバレるのは恥ずかしく思い、表情には出さないように気を付けながら二人で、下駄箱まで歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます