君の事を覚えてないけど、俺は再び君に恋をした
海音²
1話 美少女は覗き魔に恋してた!?
「ねぇ、颯君......ありがとう」
ん、誰だ?俺の名前を呼ぶのは......ぼんやりとした視界の中、声の主を探し辺りを見渡してた俺の目の前に、顔がぼやけてよく見えない一人の少女が立っていた。少女は、身長や俺の名前を呼んだ時に聞こえた幼い声からして、小学生ぐらいの年齢と予測できた。
「ねえ!ちゃんと私の話聞いてるの?」
突然口調が変わり、背丈も少し伸び、声からも幼さがなくなってるように感じた。それより君は一体誰なんだ?......いや違う、俺は君に会ったことがある気がする......
ぼんやりとした視界の中、少女の顔は相変わらずよく見えないが、蒼く綺麗なロングヘアーをしたその少女を俺はどこかで会った事があるような気がする。でも......何時、何処であったのか思い出せない......
俺は、少女の顔をよく見ようと近づこうとした時、さっきまで周りが明るかったのに、いきなり真っ暗になり、空から大粒の雨と共に雷が鳴り始めた。俺は慌てて顔がよく見えない少女の方へ駆け寄ろうとした瞬間。
「颯なんか消えちゃえばいいんだ!! 全部……全部、颯のせいなんだから!! 嫌い、颯なんか大っ嫌い!!」
先ほども、きつい言い方をしていた少女だったが、その言葉には、優しさと親しみを込めた感じに聞こえてたが、今俺に大声で言ってきた声は、怒りと拒絶が混じった感じで、俺はその迫力に思わず怯んでしまい、その場で立ち尽くしてしまった。彼女は、突然目の前から消え、辺りから音や光が消え、暗闇に包まれた。
*
「コラ
俺は、突然耳元で大声が聞こえ、直立不動と言わんばかりにその場で立ち上がった。何が起きたのか、呆然としながら辺りを見渡したら.....ここは教室?
「二学期始まって初日に居眠りとは、深風はいつの間に私より偉くなったんだ?」
そう言って俺を少し見上げるように睨みつけながら、赤い髪を後ろで一つに纏めてる女性の先生は、腕を組みながら俺の方を見ていた。
「すみません。昨日遅い時間までバイトがあって寝不足だったんですよ。 決して星野先生より偉くなったとか思ってないです」
俺は星野先生に素直に謝罪した。星野先生は俺の謝罪を聞き、呆れた顔をしながら少し考え、何かを思いついたのか星野先生は悪戯を思いついた子供の様な笑みを浮かべながら俺に話しかけてきた。
「なら深風、是非先生にどれくらいバイトが忙しかったのか教えてくれないか? ちょうど今からほかの生徒は下校になるし、ついでに夏休みの宿題を職員室に運ぶのも手伝ってくれると先生すごく助かるんだよなぁ~」
そう言いながら星野先生は俺の方をチラチラ見ながら言ってきた。俺は、あからさま過ぎて一瞬断ろうかとも思ったが、流石に居眠りをしてしまった俺が悪いので、謝罪の意味も込め、宿題を運ぶことにした。
「わかりました。職員室まで運ぶの手伝います」
「流石は深風、話が早くて助かるわ。 それじゃ先生は先に職員室戻っとくからよろしくね。 明日から夏休み明けのテストするから皆も勉強しておくんだよ?」
星野先生は、最後に重大なことをサラッとみんなに伝えて教室を出て行った。あれ? 先生何も持って行って無かったような......俺は黒板前に積まれてる宿題に目が行った。......全部運ばないといけないのかよ!?
居眠りをした自分を恨みながら、クラスメイト全員分の宿題を職員室までやっとの思いで職員室に持って行ったら、星野先生から労いのお説教まで頂き、精神的に疲れながらも早く帰ろうと、足早に教室へ向かった。
教室の扉を開けようとしたその時、教室から何やら声が聞こえてきた。俺は興味本位で、扉を開けず教室の中を扉の窓越しから覗いてみた。どうやら男女の二人がいるみたいで、男子生徒は、後ろ姿しか見えなくて誰かわからないが女子生徒は知ってる人だった。
女子生徒の方は逆に知らなければこの学校の生徒を疑われるぐらい彼女は有名だった。名前は
もちろん俺もその男子の中の一人だ。俺が最初に蒼井月姫を意識してのは、彼女の鈴を転がす様な声を聞いた時、初めて聞いたはずなのに、どこか懐かしい感じがしてその時初めて胸がドキドキしてしまったのだ。それから気になり始め気が付いたらすっかり俺も蒼井さんが好きになっていつも蒼井さんを目で追ってしまってたのだ。
と言っても、彼女は学校でもトップクラスの人気者で俺なんかとは、住む世界が違う感じですら思え告白なんかしても失敗するのが目に見えてるし、そのせいで蒼井さんに嫌われたくない。それなら遠くから見てるだけで良いって思うわけだ。まぁラブコメで言うモブキャラの立ち位置がお似合いなんだよな俺は。
「あ、あの蒼井さん」
俺がそんな事を思いながら覗いてたら男子生徒のほうが話し始めてた。どうやら、この感じは告白する感じらしい。俺は内心、扉を開けなくてよかったと心の中で安堵した。そこでふと視線を感じた俺は、まさかと思い視線を感じる先に視線を向けると、まさに今告白されている蒼井さんと視線が合ってしまった。俺は慌てて隠れるようにその場にしゃがみ込んだ。やばい絶対バレた、この状況をもし蒼井さんが男子生徒に話したら......そんな最悪な考えが頭の中をグルグルと巡らせていたが、なぜか蒼井さんは見られてる事を男子生徒には教えず、何も知らない男子生徒はそのまま話し始めてた。
「本当は夏休み前に言いたかったんだけど......俺! 蒼井さんが好きなんだ。俺と付き合ってください!!」
「ごめんなさい。私、
「そ、そっか。......時間取らせて悪かったね」
男子生徒は、バッサリ断られたショックで、フラフラと歩きながら教室を出ようとしてた。俺は近づいてくる足音に気づき、バレないように静かにそして、急いで教室から離れた。
少し教室から離れた俺は、流石にすぐに教室に戻る気になれず、自販機でコーヒーを買って、少し時間をずらしてから教室に戻ることにした。
あれから、30分ぐらいスマホをいじって時間をつぶしてから教室に向かった。流石にこれだけ時間空けたんだし、蒼井さんも帰ってるだろうと思い教室の中に入った。
「遅い!! 私ずっと待ってたんだけど?」
「え......? な、なんで蒼井さんがまだ教室にいるんだ?」
「なに? 私が教室に残ってたら何か困る理由でもあるのかしら?」
そう言いながら、蒼井さんは少し眉間にしわを寄せ睨むように俺のほうを見てきた。やっぱりさっき覗き見した事を、怒ってるのかもしれない。
「悪かった。 たまたま教室に戻ったら告白されてる場面を目撃しただけなんだ」
「ふ~ん。 たまたまねぇ~何時もチラチラと私の事を見て来る、覗き魔の深風君が、たまたまねぇ~」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ? 俺が見てる事がバレてるのはわかったが、覗き魔は流石に酷くないか?」
確かに俺は、蒼井さんを見てることが多いのは認める。でも覗き魔はいくら何でも酷すぎじゃね?
「あれ? 深風君自覚ないのかな? まるで他の男子生徒と深風君が同じだと思ってるの?」
「いやいや、なんで俺だけ別枠みたいな言い方するんだよ? 別に他の生徒と変わらないだろ?」
俺は、冷静な顔でそんなことを言ってくる蒼井さんにわずかな恐怖を覚えながらも、必死に弁明をした。そんな必死になってる俺の姿を見た蒼井さんは、突然クスクスと笑い始めたのだ。
「ふふっ......ごめんね。本当に無自覚だったんだって思ったらおかしくてね。 だって、毎日ずっと深風君の視線を感じてるんだけど、それって私の勘違いだったのかな?」
「そ、それは......ごめん......蒼井さんがそう思えるほど俺が見てるって事だもんな。 普通に考えたらかなり俺キモイ事してるな......もう見ないように気を付けるからさ、都合の良い事をいうのはわかってるけど、その......クラスメイトや他の人には言わないでほしいんだ」
俺は、蒼井さんに指摘され自分がしていた事を反省し、なんて事してたんだろと思ったのと同時にそれがクラスの皆にバレたらと考えたら全身から嫌な汗が一気に噴き出し、俺は慌てて蒼井さんに頭を下げ必死に謝った。
「別に謝らなくてもいいよ? だって別に誰かに言うつもりもないし、それに......」
そう言って、少し沈黙が続き、俺は恐る恐る頭を上げ蒼井さんの様子を確認した。蒼井さんは何か考えてる様子で、俺はどうしたらいいかわからず、ただじっと見ている事しかできなかった。何分経ったのか、この沈黙の空気のせいで俺の中では時間の感覚すらわからなくなっていた。
「そう、それにね! 私も深風君の事、
突然何かを思いついたかのように話してきた蒼井さんの言葉の意味を、俺は理解できずただ目を丸くして蒼井さんを見ていた。は?突然何を言いだしてるんだ?好意的って聞こえてきたけど......蒼井さんが俺を好意的!?
「いやいやおかしいだろ!? だってどう考えても俺のしてた事ってかなり気持ち悪い部類のはずだよな? なんでそんな俺に好意的になるんだよ?俺が言うのもなんだけど、前提がおかしいだろ?」
「えっと、そ、それは......そ、そう!深風君は私の事だけをずっと見てくれるんだよ? まるで、お前は俺の獲物だって言わんばかりにずっと虎視眈々と狙ってる野獣みたいに見てくるんだもん。 そう考えたら、だんだん胸がドキドキしてきて、逆に深風君に変に思われないかってバレないように平常心保つの大変だったんだからね? それに私思ってたんだけど、深風君って独占欲や束縛心とか凄く強いんじゃないのかな? と、とりあえずそんな事があって私が、深風君に好意を持つのは別に変じゃないでしょ? それとも深風君は、こんな私の事嫌いになって興味も無くなったかな?」
まるで捲し立てる様に早く口で話す蒼井さんに、俺は僅かではあるが、昔こんな感じの事がどこかであった様な気がして思い出そうとしたが、まったく思い出せなかった。ふと、蒼井さんの方に視線を向けると、俺がなかなか返事を言わないからなのか、今にも泣きそうな顔で不安そうに俺の方を見ていた。
「ね、ねぇ深風君? なんで返事してくれないのかな? 流石にここでシカトされると私もつらいんだけど?」
「あっ!ごめん。 さっきの蒼井さんの早口で話す感じが昔どこかで同じような事があった気がしたんだけど、それを思い出そうとしたんだけど、まったく思い出せなかっただけなんだ」
俺がそう言ったら、一瞬蒼井さんがビクッと肩を震わせた。 あれ?なんで蒼井さんがそんなにびっくりしてるんだ? 肩を震わせた蒼井さんは、まるで何かに怯えるような瞳で俺の方をじっと見つめ少し声を震わせながら話しかけてきた。
「昔って......深風君は何か思い出せない事でもあるの?」
「ん? まぁ一応?でも多少はみんなあるだろ? そんなすぐ忘れちゃう程度のどうでもいい事だろうし気にしないんだけど、たまにふとそれがモヤっとする時があるぐらいかな」
「そ、そうなのね......
「ん? 蒼井さん何か最後言った?」
「えっ!? べ、別にだよ? それより深風君、酷いと思うんだけど?そんなすぐ忘れる事の方が、私の返事より大切なんだねぇ~?」
「そ、そんなつもりじゃ......」
「なら、今すぐここで教えてくれないかな?」
そう言って、蒼井さんは俺の傍まで近づいて来て、そのまま俺の背中に手をまわし抱きしめてきた。そして、見上げながら俺の顔を見てくる蒼井さんは真剣な顔で俺の顔をじっと見つめながら口を開いた。
「ねぇ颯、私と付き合って?」
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