第36話 隣国の姫君〈王妃side〉
「──と、こんな事があったのです」
同日のお茶の時間。
午前中の出来事を今度はヴィクターに話して聞かせた。
そして言われたのは……。
「そうですか。それならもう、新しい婚約者を
「そんな事をして……クラウンは大丈夫かしら?」
「考える暇など無いほうが早く忘れられるのでは?」
「……それもそうね」
そうは言ったが彼からは、クラウンの新しい婚約者は『隠されていた隣国の第三王女』としか聞かされていなかった。
時期が来れば教えると言われているが、やっぱり気になる。
「その……姫のことなのだけど。今どこに居るかとか、どんな女性なのかとか、何か教えてくれても良いのではなくて?」
「そうですね。そろそろお伝えしたほうが良いかもしれません」
そしてやっと聞くことができた彼女の話は、次のようなものだった。
隣国の第三王女の名前はマイティー・オフショアー、十九才。
コンシール侯爵の孫娘として我が国で内密に育てられていたらしい。
隣国国王の意向から、将来は王族復帰が叶うようにと英才教育を施されていた彼女は、どこに出しても恥ずかしくないほど優秀な令嬢となっていて、今回クラウンの妃にと打診したところ『育った国で将来王妃になれるならそれは喜ばしい』と快諾されたのだった。
これはクラウンの失態が起こると予見されるより遥かに前から計画されていたに違いなく、裏返せばフォックス公爵家が手を回しグレイシアをヴィクターの嫁に取り戻す計画の切り札だったのだろう。
忌々しい事この上無いが、クラウンの不祥事が発覚して廃嫡にならない為にはこの状況を受け入れるより他はなかった。
話に聞く限り、歴史、算術、政治、経済、外国語、会話術やダンスに楽器、果ては護身術まで……すべて教師が絶賛したと言う。
どこを取っても文句の付けようがない女性なのだから、クラウンの妃が彼女であり、側近にヴィクターとヒポクリットがいる限り、クラウンの政権は揺るがないだろう。
ただ、どうにもこうにも違和感がある。
何がしっくり来ないのかしら?
その答えが出たのはクラウンとマイティー王女の結婚が発表された後の事。
隣国の国王が彼女を第三王女と認め、国同士の繋がりを強固にする目的も含めた協定締結まで済んだ後だった。
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