第5話 毒殺!?

 それより、チャボットの毒の事を聞かなくては!




「殿下。チャボットの死因ですが、毒というのは本当なのですか?」


「何を今更……。獣医から報告が上がっている。──そうだな?」




 殿下が後ろに向かって確認をする。


 背後には銀髪の小柄な男子生徒が控えていて、即座に肯定の返事をした。




 殿下にあんな側近……いや、侍従?

 

 とにかくあんな人いたかしら?




 見覚えのない男子生徒を訝しげに見ていると、ルーザリアが私の視線を遮るように一歩、斜め前に進み出た。




「フールを変な目で見ないで下さい! 彼は勇気を出して私のために証言してくれたんです!」


「ルーザリアは優しいな」


「そんなぁ、私なんてぇ……」




 こんな場所でイチャイチャし出した二人を目の当たりにして、周囲に騒めきが広がる。


 無理もない。


 本来準男爵の娘は正式には貴族とも呼べない身分で、その彼女が自国の王太子と公衆の面前で恋人のように振る舞っているのだから。


 しかしこの二人にはそんなのは気にならないらしい。


 抱きしめられ見つめ合い、これからキスでもしそうな勢いだ。


 ほとほと呆れた私が焦点を奥へ動かすと……。


 あらあら、フールという男子生徒が殿下に鋭い眼差しを向けている。




 これは彼もルーザリア嬢に気があるのかしら?


 ずいぶんおモテになるのね。




 冷ややかな目で見過ぎたのか、クラウン殿下がこっちを見て、途端に眉をしかめた。




「人をがいしていなくとも、人がいつくしんでいた生き物をあやめるなど、やはり罰は必要だ。今すぐ認めるのなら、少しは軽くしてやらないでもない」


「いいえ、結構です」


「ほう。厳しい罰を受けたいのか? 変わっているな。いや、少しはチャボットに悪いと思ったのか?」




 相変わらず人の話を正しく聞かない御方おかたね。


 王妃殿下には申し訳ないけど、これでは彼の妃として支える気に成れません。


 やはり何があっても王太子妃はお断りしましょう。




「お言葉ですが殿下、私はチャボットを毒殺なんてしませんわ」


「今ごろになって、罰が怖くなったのか?」


「……信じていただけないようで残念です。ですが、一つ訂正するとチャボットの死因は、間違って餌に混じっていた針金を食べてしまった事故です」


「は? そんなのはデタラメだ!」




 クラウン殿下は今度こそ激昂げっこうした。




「なぜ素直に罪を認めない? そうやって嘘をいて……お前には罪の意識が無いのか?」


「そうやって私に罪をなすり付けて……そんなに王太子妃になりたいの?」




 調子に乗ってルーザリア嬢までののしってきた。

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