第4話 老いた父

 自分の父親は明治生まれの男で、一度計算した事があるが、明治43年に生まれたらしい。

 父親の戸籍謄本を取り寄せれば判るだろうが、調べたとして、彼の子供である事に変わらない。

 母親とは19歳、離れていた。母親は父親の籍には入っておらず、いわゆる、妾腹という状態で自分は、この世に生を受けた。

 本妻には子供がなく、というより、子供を作れる状態ではなかった。身体障碍者であった。もしかすると、本妻さんとしては「仮腹」のつもりで産ませたのだろうか。

 調べれば、もしかすると、会った事もない「異母兄弟」がいるかも知れないが、調べたとして、その「異母兄弟」が生きているかどうか。

 父親は明治の男である。少なくとも、子供は昭和の初めか、終わりの頃の生まれだろう。

 商売が繁盛している時は、女遊びが派手だったらしい。

 一度、母親が若い愛人のの所へ行って、刃傷沙汰になったと笑って話していた事があったが、もう少し、生きている時に聞いておけば良かった。

 亡くなったのは今から、46年前の事で、自分が11歳の時だった。

 数年前に脳梗塞を患い、半身不随であった。

 それを無理やり、元の会社の番頭の男が入院させて、半月後に亡くなった。

 母親はよく、その番頭と病院が結託をして殺したんだと言っていたが、今となっては本当かどうか。

 享年64。

 自分の年が57歳だから、後、7年で同じ年になる。

 同じような体型で、病院で怪我をしてCTを撮ってもらったら、小さな梗塞があるらしい。

 詰まらないようにして、生き延びたとして、後、20年前後か。

 父親の事を思い出すと、自分の余生の残り時間を思うようになった。

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