第44話 メリディアナ、不時着する。視点、皇ニ
メリディアナが天界へ帰るまで......残り24時間。
ハワイの主要な都市で、手がかりとなる情報がないか聞き回った。
メリディアナの翻訳ツールで難なく会話が出来たものの、俺らの望むものは1つもなかった。
母親には部活の合宿と言い訳して問題ないが、文面が日に日に病んでいってるのがわかる。
合宿と認識しているとはいえ、俺もどこかへ攫われたのではないかと心配の声が朝昼晩と送られてくる。
実際、ネットにて俺ら家族の個人情報は拡散されており、夏休み明けの通学が億劫だ。
「皇二さん、今日皇気さんが見つからなかったら......」
だが、そんな先の話を考えているはない。
今目の前にある問題、皇気を助け出すことを解決しなければ。
一体どうすればいいんだ?
もう現実的に彼女にゴタゴタを済ませた後、誠心誠意で謝るなんて無理だ。
なら、彼女が消える前に今ここで伝えるべきか?
というか、俺は謝った先にもっと言いたいことが出来てしまっている。
それをこんな誘拐された弟を差し置いて、言ってしまって良いわけない。
それに、メリディアナは俺の事友達以上に思っていないだろう。
この気持ちは、彼女が消えるまで......いや、ずっと心の内にしまい込んだままの方がいいのだろうか?
「皇二さん、スマホから着信が......皇二さん!」
脳内で考えを錯綜させていると、ふいに小麦色に少し焼けた彼女の顔面が鼻先に近づく。
銀髪と合わさって、南国に住む天真爛漫な美少女というような印象を受ける。
あぁ、前までも確かに女の子ということで接近されると動揺していた。
しかし、今はそれとは違って鼓動がドキドキと鳴る感じだ。
案の定距離を遠ざけ、顔を反らした状態でスマホを手に取る。
すると、皇気からの着信があった。
「キラウエア火山って、ここから近いです! 行きましょう!」
俺の返答を待つこともなく、彼女は飛翔した。
彼女に情けなく掴まりながら、先ほどの通話を思い返す。
さっきの女の声、アブラヘルという屋上で会った天使と似ていた。
彼女が誘拐犯だとすれば、ハワイまで皇気が移動させられたのも不思議ではない。
「わかってます皇二さん、アブラヘルちゃんが犯人で多分間違いがないかと。彼女は危険です。教員がすぐに彼女を連行しないのも、何か魔法で感知防御を施しているのでしょう。キラウエア火山に到着したら、私より後ろにいてください」
メリディアナは見たこともないほど、神妙な表情を浮かべていた。
天使が禁止を無視して魔法を発動できるとしたら、どれほど強力になるのか、俺には想像もできない。
だが、彼女の顔を見るに身の危険が迫ることは確かだ。
なら、彼女も同様に危険な間に合う可能性がある。
それなのに後ろに居るなんて。
「メリディ……アナ! 君は俺のこと、どう思っているんだ?」
「え、いきなり何を?」
見上げると、彼女はコロリと表情を変えて沈黙した。
そして、ゆっくりと口を開く。
「私は、皇ニさんのこと……」
「くらえ!」
言いかけた直後、彼女の背が青い炎に包まれた。
片方の翼が焼け、飛行能力を著しく低下させる。
激しい痛みのせいか、落下に気づいていながらも制御ができないでいた。
「メリディアナ!」
クソ、俺が変なことを聞いたから。
あぁ、この速度で地面に衝突したら確実に死ぬ!
どうすれば、もう衝突のダメージは避けられない。
ならせめて出来る限りの減速を……。
俺は咄嗟に上着を脱ぎ、マンタの要領で突風に微小ではあるが対抗した。
しかし、結果は意味をなさなかった。
彼女が俺を守るために身を反転し、下敷きになった。
思えば、死ぬほど痛いのに抱えた俺を離さなかった。
「ハッ、運がいいな。死ぬと思ったのに」
不時着した目の前には、アブラヘルと悪魔にうなされて横たわる皇気の姿があった。
「メリディアナ、お前はそこで傷を治してくれ」
俺はもう、この現実から逃げない。
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