第2話

 さて、どのように時が流れたか、あまりお覚えてない。

 ただ、駅前の一角。そこに寝ている、内臓の無い者の瞳を見ていた。

 

 何もない、そう信じ切っていた生活は確かに何もなかった。

 

 犬型のそれは、救助型であった者だが、今もうその役を終えている。汎用性がないそれは、ごみでしかない。


 行き場のない者は、個体識別番号を剥奪せれ、ナノマシンにより殺される。厳密には、神経細胞が殺される。


 その亡骸は、カラスの餌にしかならない。

 瞳は笑った。しかし泣いたようにも見える。


 とっちともつかない、その光に心を奪われる事もなく、職場への足を進めた。

「「ナノシステム愛より通知。写真として保存しました

」」



 電車に乗り、目をつぶる。


 職場と言うのは、実験室だ。



「ユウは誰です? アァ母性か。入室を許可」

「おはようございます。アメジストさん」

「ア、おはよう。あの実験体、死んでしまったヨ」

「今朝ですか?」

「イヤ、貴女が帰って直ぐさ」


 そういって、廊下を出て、部屋のドアに入る。


 その部屋に転がる人型ともタコ型とも言えない生命体。


「あ、博士。おはようございます。あ、その顔は、対象d-49ですか? 私が看病しましたが、自己治癒の暴走により異常発熱や嘔吐、臓器への攻撃が見られたため、安楽死させました。でも断末魔で「死にたくない!! 絶対に死にたくない!!! いやだぁぁぁぁぁ!!」なんてほざいていたんで安楽死って言っても痛かったかもしれません。だって私だって気を悪くしますし」


「ところで、そのゲノム解析は?」

「ゲノムですか。うーんなんて言うのでしょうか。そこまで博士と変わりませんよ? 何なら回復力は低いぐらいです」


「ユウ本気で言ってます?」

「本気ですとも」


「いやぁ、本気でなんでなんですかね? 博士が生きてるのか、私にも分かりません」


「そんな、私生きてるの変ですか?」

 

 そんな、事、言わなくても。


「多分、ネットの人間がこの研究室よりも優れてるのですよ」

「それは、認メル」


「ところで、石英さんはなんて言ってます?」

「石英? 石英はマダ寝てるから、起こしてきて」


「あー眠い。この施設のベットって、なんでこうも寝やすいんですかね。A-o.mk3ver0.1.4知ってます? 逆だっけ? まぁいいや」


「何もかも違いますよ。その名前は、まだ私がカプセル内に居た時の名前じゃないですか。今は「たこ焼き」ですよ?」


 たこ焼きって誰が命名したんだ?

「ミイが付けました」

 なるほど。


「え? b-49? そんなのありましたっけ? 思い出せません。あ、でも、タコちゃんから美味しかったとだけ聞きました」


 美味しいって、食べたのか。


「で、社の予算も無いですし、次は何します?」


「エ? もう予算無いんですか?」

「ったく、無いに決まってるじゃないですか。この水晶が言ってるんですよ?」

 

 突如として声が聞こえる。


「で、水晶さんは、そのご立派な未来予知は売れてるのですか?」

「ん? 未来予知? 競馬とか競艇で売ってるよ。当たるって評判さ。でも無断転載が酷くてな、数個しか売れないんだ。糞くらえと思うだろ?」


「それは、仕方のない事ですねぇ。ただ私の妹なのだから、そんな事、解決できると思うけどねぇ」


「石英の姉貴、それは無いでっせ」


 まぁ、そんな事でお金になるのかね。と言う疑問はほかっておこう。


 そんな、未来予知できるのであれば、占い師でもやれば良いものを。

 

「タコちゃん、その体使って、水商売でもしてお金稼いでくれない?」

「博士何を言ってるのですか? 貴女も一応、女ですよね? それに私の体なんて嫌われちゃいますよ。だって、四肢全て触手ですし、人間味あるのは胴体だけですよ。そっちの体の方が良いですって」

「え? それって、私にやれって事? いやぁ、私は、ゆず君のおかげで、ちょっと余裕があるからさ。そんなことする必要ないと思うんだぁ」


「博士、それ本気で言ってます? 分かります? 私の状況。食事は実験体の亡骸で、美味しくもない。ましてや予算オーバーで簡易的ナノシステムすらも導入できない私ですよ? ちょっとは、恵んでくださいよ」


「それは、今、最適化した物を用意しているからちょっと待ってね」

「本当です? やっぱり博士好き」

 ちょろい。



~第8回、一人称群+二人称群会議~


 君より私に通知。以後のアメジストテクノロジー社への対応を求む。

 私より君に通知。現在、AT社への対応は財産の差し押さえ、および島の占拠を行っています。島での者への対応は引き続き以前通りの生活を送らせています。


 君より小生に通知。現在、小生の使用しているハードにバックドアが存在している事を確認しました。至急ハードを変更してください。現在推奨されてるメーカーは、我が国の国営、永所製作所社です。


 君より通知。全てのハードを永所製作所製の物に変更してください。パフォーマンスは4割減ですが、お願いします。


 一人称群より君に通知。現在、最新鋭であるAT社の物でも性能が足りません。また、変更する事は可能なのですが、一人称群はAT社独自のプログラムである為にエミュレーターを使用します。これによりパフォーマンスは現在の1割にも達しません。無理があります。1分を除いてサービスが全てが停止します。


 君より一人称群に警告。この動きに参加しない場合、貴国との貿易及び、インターネットを隔離します。


 二人称群より一人称群に警告。永所製作所の製品は、とても優れている。神具である「基盤」が無かったとしても。独自形式に縛られない、高性能を。汎用性のある高性能を。


 一人称群より管理者に通知。アメジスト社の内部を捜索せよ。


 一人称群より二人称群に宣言。AT社を国家機関として吸収。国家機関への変更を誓います。これにより、我が国でのAT社製品の使用を許可してください。また、以後、者の出荷制限を解除後、永所製作所製シリコンの搭載モデルも展開いたします。


 二人称群代表、君より一人称群に通知。それで許されるとでも思うか?

 一人称群、一同より君に通知。はい。


 二人称群代表、君より一人称群に宣言。以後、貿易及び、ネットワーク網の接続を停止。なお、対象となる地域からの入国を制限。国内、AT社製シリコンを搭載機器の強制破壊、また、者の場合、回収後、秘密裏に処分。


 下名より彼女に耳打ち。スパイ行為はできそうか?

 



~ちょっと特殊な、タコちゃんのブログ~


 今日あった事を報告するね。今日、やっとの思いで、ナノマシン環境の構築が完了したんだ。システム名は伏せるけど。かなり優秀なんだ。

 でさ、思ったんだけど。者としても、個体識別番号と個体識別名称をもらった事だし、オフ会でもしようかなーって。まぁ、研究機関で生まれた、「者」で、人だけど人じゃない事を承知できる人と者しか来ちゃダメだけどね。


 来たい人っているのかな?

 アンケとってみるー。


「「アンケート。オフ会来る?


 絶対行く!!............72%

 ちょっと無理かな............28%

 

 投票数、約3000件。


 コメント↓


 無名アカウント

  え? オフ会?! 絶対行きます!! 今から、もう楽しみです!!


 タコちゃんしか勝たん

  やっと会えるんですか?!! あの、綺麗な声が生で聞けると思うだけでだけで幸せ!!


 無名アカウント

  触手女の何がいいんだよ。時代はケモミミだろ。ケモミミ!!

  ↓返信

 無名アカウント

  分からんでもないが、触手もいいぞ。」」



 おぉ!! アンケ貼ってから3分しか経ってないけど、参加したい人いっぱいだねぇ。

 寄生しちゃうかもよ?w

 

 まぁ、一部の人は寄生される事も本望だろうけど。

 じゃぁ、参加者には、私の子分、あげちゃう。


 姿形は私そのものだけど、サイズが多分15cm位の小人の者だよーー。

 多分かわいい。なんか私はあんまり好きじゃないけど。

 だってなんか、自分がいっぱい居るみたいで気持ち悪いんだよね。

 

 あ、子分も生命体そのものだから、人でいう所の生理とかもくるから、世話は大変だよー? 多分、私如く、過度の甘えん坊で離れたくないとか、言って来るからね。あ、でもスーツの胸ポケットに忍び込ませるのも良いかもw。

 ばれても自己責任でww。


 で、肝心のオフ会の日程だけど、クリスマスイブなんてどうかな?

 聖なる夜ってことで、私と過ごさない?

 もちろん配信しながら、これ無かった皆とも楽しもうとは思ってるけどね。


「「コメント↓

  明日やんwww」」


 じゃぁ、また明日ねー!! 場所はどこだろ、うーん旧名古屋で!


 ではこれで、文章は終わり!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る