第53話 sideラリサ-修行する (1)
「あふ…」
わたしは目を覚ました。
寝ぼけ眼のまま体を起こし窓の外を見ると、外の様子はとても良い陽気のようだ。
わたしは視線を室内に戻すと、同室のメイド・メアリーは既に部屋にはいなかった。
メアリーはジーメンス家に住み込みのメイドだから、もう既に家の用事をしているのだろう。
他にもメイドはいるのだが彼女たちは集落からの通いだし、ジーメンス家の屋敷の規模からしてそもそも住み込みで働く者はそれほど多くない。
(わたしとメアリー以外には家令のフリーデルと兵長のハンスとその他数名と言ったところだ。)
わたしの仕事はジーメンス家当主・カールの護衛であるが、今日はオフだ。
と言うかわたしは今日も護衛として働くつもりだったのだが、カールから休みを言い渡されてしまった。まあ確かに屋敷にいる限り今のところ危険な目に遭うことは無く常に護衛としてついている必要は無いのだろうけど、いきなり休めと言われても何をしていいかも分からない。
そう言えば前もいきなり休みにされたことがあったなあ。
たしかあの時はカールがアイナ様とわたしを市場に誘ってくれたっけ。あの日は楽しかったなぁ。今日はカールは何をしているのかな。
私はベッドを降りると、クローゼットから洋服を取り出した。
取り出したのは白を基調としたワンピースだ。今までは暗い服(戦いやすい服)しかもっていなかったのだが、集落にある洋服屋のおばさんに猛プッシュされて購入したものだ。
そう言えばこの服、カールが可愛いって褒めてくれたな。
わたしはカールに褒めてもらえると、凄くドキドキする。
いや、カールのとなりにいるだけで、凄くドキドキする。
わたしはそんなことをぼーっと考えながら、寝間着からこのワンピースへ着替えた。
ふと、わたしは鏡を見た。
青白い顔色と、紫色の長髪のわたし。色々な服を着こなせる愛らしいアイナ様とは大違いだ。その他の部分も…。
「わたしは、何をやっているんだろう…?」
わたしはふうっとため息をついた。
わたしはカールの護衛なのだ。
―――
わたしは部屋を出ると、ついいつもの癖でカールの執務室のほうへ向かってしまった。今日は休みだと言うのにな。
「あ、ラリサ。おはよう。」
わたしを呼ぶ元気な声が聞こえて来た。メアリーだ。
「おはよう、メアリー。」
「今日はそのワンピース着てるのね。とても似合ってるわよ。」
「あ、ありがとう。ねえ、今日はカール、様はなにをやってるのかな?」
わたしは褒めてもらえた御礼を言いつつも、ついカールの動向を聞いてしまった。
「坊ちゃんなら、今日はフリーデルを先生にしてお勉強されてるわよ。アイナ様も一緒だったかな。」
「そうなんだ?」
お勉強か。
ハルピュイアのロコがここに来た頃にはわたしも教師から言葉を教わったことはあるけど、フリーデルを先生にしてるって事はそういう内容では無いのだろう。
「うーん、それだとカール、様のところには行かない方が良いよね。邪魔になっちゃうもんね。」
わたしは少し視線を下げた。
「う~ん…」
メアリーが腰をかがめると、わたしの顔を覗き込んできた。
「な、なに…?」
「そうだ、ラリサ! ちょっと私と一緒に来て!」
「え、え?」
「いいから!」
メアリーがわたしの手を強引に引っ張った。
いったい何なのだろう…?
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