第13話 たぬき伯爵、お姫様とおしゃべり?する

「カール様、あなた、たぬきさんの獣人なんですか?」


目の前のお姫様が、僕の目の前でにこにこしながら話しかけてきた。

ここはジーメンス家の応接間である。

僕の対面のソファには商業国家オルロヴァ太守のお姫様、アイナ・オールブリンクが座っていた。アイナは艶やかな銀髪をツインテールに纏めていた。

薄い桃色のワンピースも愛らしく、お世辞抜きで可愛い女の子と言えるだろう。


「え、ええ。僕は狸獣人族です。」


「まぁ! 私の国にも獣人族の方はいらっしゃいますけど、お友達にはいなかったの。ねえ、カール様!」


アイナがぴょんと立ち上がって、僕の隣に座った。


「カール様、その、しっぽ、触っても良い?」


アイナが手をわきわきさせながら体を寄せてきた。

僕はしっぽを守るようにしながら後ずさりした。


「姫様、や、やめてくださいー!」


「ど~~~~~~ん!」


アイナがガバっと僕の上に覆いかぶさった

ひいいいい、助けて~~~。何なのこの人~~。


「あらあら、二人とももう仲良くなったの?」


義母ははが居間に入ってきた。

その顔は何か微笑ましいものを見ているかのような表情だ。


「あ、カール様のお母さま!」


アイナがぴょんと、体を起こした。

僕はよろよろと体を起こした。もともと癖毛の髪の毛がさらにボサボサになってしまった。

うー、酷い目に遭った。


「アイナ姫様、カールと仲良くしてくださいね。これ、うちのメイドが作ったお菓子なの。是非召し上がってくださいね。」


メイドのメアリーが僕達の目の前にケーキと紅茶を置いた。


「美味しそう! 頂きまーす。」


アイナは美味しそうにケーキを頬張った。

元気な人だなぁ と思いながら、僕はふうっと息を吐いた。


「あれ、カール様は食べないんですか?」


「あ、いえ。後で頂きますよ。お客様である姫様が先に食べていただいた方が良いかなと思うので。」


「ふぅん…」


アイナは僕の顔を覗き込んだ。

(ち、近いです…!)


「な、何でしょうか…?」


「カール様っておいくつなんですか? 見た目は可愛いのに、やけに大人びていますけど。」


「えーっと、一応10歳と半年…ですね。」


「まぁ、私より2つも年下なのね。…そうだ、お母さま!」


アイナが僕の義母ははの方を向いて背筋を伸ばした。


「私、カール様のこと、カール君ってお呼びしても良いですか?」


「あらあら、もちろん良いですよ。」


義母ははがにっこりと笑いながら答えた。


義母上ははうえ~~~~、何認めちゃってるのー!?)


「ありがとうございます! カール君!」


アイナが僕の方に向き直った。


「カール君! 私の事は姫様、じゃなくて、アイナと呼んでください! 私、カール君と仲良くなりたいの!」


「え、ええええ!?」


またこれですか…?!

何かこれ、前にも遭遇したような…


「え、ええと、アイナ様…」


「様はだめです!」


「アイナ…さん…」


「ア・イ・ナ!」


「…アイナ。」


「わー、カール君、やったー」


アイナがガバっと僕に抱き着いてきた。

そして僕のしっぽをもふもふと触ってきた。

あの、その、ちょっと当たってます。

アイナ姫、もうちょっと羞恥心とか、遠慮とかそういうのをお願いします…










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