Hidden Her Hearts ▼ Side R


 ……ユウが出ていった。二人ぼっちの部屋には重たい静けさだけが横たわっていて、あたしも舞佳も、なにも言えずにいた。

 舞佳はソファの上で、畳んだ両足を抱くようにして座っている。顔は見えないけど、どんな気持ちでいるのかは手に取るように分かった。もう二十年近くこの子の姉なのだから当たり前だ。

 だけど今、どんな言葉をかけてあげるのが正解なのか、思いつかない。

 こうなることは分かっていたはずなのに。あたしが寮母さんに見つかって、二人ともこの部屋にいられないとなれば、この子もすべてを打ち明けるしかなくなる。

 いずれは言わなければいけないのだから。この子だって、素直にならないといけないはずだから。

 でも、あたしは……非情だっただろうか。性急過ぎたのだろうか。

 舞佳は悲しみ、ユウは出ていってしまった。あの子もきっと悩んでいるのだと思う。あたしか舞佳、どっちを選ぶとかじゃなくて……たぶん舞佳のことを。

 どっちにしても、あたしが選ばれることなんかない。そう答えてくれれば、あたしは潔く舞佳に譲ってあげられる。

 ――大丈夫よ。ユウはきっと、答えを持って帰ってくるわ。

 あたしは普段通りのあたしを演じた。いつも通りの自分の声になるよう努力した。

 だけどもし……あの子が、あたしを選ぶと言ったら。

 あたしは、どうするのが正解なんだろう。

 この子の姉として……それとも、あの子の幼馴染として。

 どんな風になるのが、あたしの望みなんだろう――。


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