Hidden Her Hearts ▼ Side M


 ……目を覚ますと、見覚えのあるトラバーチン模様の天井が広がっていた。辺りが白いカーテンで囲われているのを見て、学校の保健室だとすぐに分かった。

 上体を起こすと、随分頭がすっきりしていることに気づく。眠気も頭痛もほとんどない。久しぶりに清々しい寝起きだった。

 同時に、少しずつ記憶が鮮明になっていく……確か私は、保健室に連れてきてもらって、それから――。

 体が一気に熱っぽくなる。鏡を見なくても顔が赤くなっていると分かった。

 その時はぼんやりしていたけど……私、ジャケットと一緒に、スカートも脱ごうとしてたような……。

 でも、夢だったような気もする。なんか、凄くはっきりとした夢……昔のことも、見た。

 おままごとをしていて、お母さん役で、私……キスしたいって。

 ゆ、夢だよね? ただ、昔のこと、夢に見ただけよね?

 私、なにもしてないよね……?

 チャイムが聞こえてくる。スマホで時間を確認すると、丸々一時間分寝ていたことが分かった。

 画面を消すと、真っ暗なディスプレイに自分の顔が反射する――恥ずかしさに悶えている情けない顔だった。

 こんな顔では教室に戻れない……私はもう一度横になり、目いっぱいまで布団を引き上げた。ぎゅっと目蓋を閉じ、平常心を取り戻すまでベッドの中で丸くなっていた。

 ……なにもかもが、ちゃんと夢だったことを祈りながら。


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