彼女と天使とバレエ+巡礼 ー物語を彩るトゥシューズについて少しだけー

 読者の皆様、志戸呂玲萌音です。

 日頃は『彼女と天使とバレエ+巡礼』をご愛読頂きありがとうございます。

 この場を借りてお礼を申し上げます。

 今回は、バレエを題材にしたお話には欠かせないトゥシューズについて、ごく簡単にご案内させていただきますので、お読みいただれば幸いに存じます。



1.トゥシューズの歴史 ――誕生と進化――


 15〜16世紀のルネッサンス期、バレエはイタリアで生まれました。

 つま先で立って踊る技法は、19世紀初頭に始まったといわれています。トウシュー ズで本格的に踊ったのは、1832年に初演された「ラ・シルフィード」で、主役を演じたマリー・タリオーニでした。 シルフィードとは空気の精という意味で、つま先立ちながら踊ったタリオーニは、軽やかにふわふわとステップを踏み、まさに妖精のようだったと言われています。

 この頃からロマン主義バレエの流行が始まり、妖精や精霊のような軽やかさがバレエに求められるようになりました。

 この時代のトゥシューズはまだ柔らかい作りをしていました。それが現在のように固くがっちりとした構造へと進化したのは、それから約半世紀後に誕生したクラ シック・バレエの時代でした。

 短く張りのあるクラッシック・チュチュにより、足全体が見えるようになったこと、トゥシューズの進化。この二つの要因で、バレエの技術は飛躍的に向上しました。白鳥の湖、眠れる森の美女、ドン・キ ホーテなどでは、つま先で立ったままボーズをキープしたり、連続の回転をするようになりました。


2.トゥシューズの構造


 トゥシューズの表面は、サテンなどの生地で覆われていて、これが私達のイメージするピンクの可愛らしいトゥシューズでしょう。ですが、全体は布・革・紙などの様々な素材を組み合わせて作られています。

 今回は、各部の構造について簡単にご説明させていただきます。


 プラットフォーム:トゥシューズの先端の平らな部分です。

 ボックス:足指を包み支える部分で、硬く作られています。

 ソール:足裏の部分です。床と接する部分をアウトソール、足の裏と接する部分をインソールと呼びます。インソールは内部にシャンクという板状のものが入っています。


3.ポワントについて


 トウシューズを履くと、硬いボックスとプラットフォームにより足指が保護され、さらにシャンクが足裏のアーチを支えてくれるため、足指をまっすぐに伸ばした状態で足の先端に全体重をかけて立つことが可能になりました。

 先端のプラットフォームを床との接地面とする状態を「ポワントで立つ」といい、バレエ特有の立ち方なのです。

 これに対し、ドゥミ・ポワントとも呼ばれるものがあり、本来のポアントよりも、半分ドゥミのつま先立ちを指し、ルルベとも呼ばれています。


4.トゥシューズでの動きについて


 トゥシューズによりグランフェッテ、ポワントでのポーズなど、表現の可能性が大きく広がりました。

 様々な動き、ステップがありますが、今回はパ・ド・ブレについてご案内させて頂きます。


 パ・ド・ブレ(Pa De Bourree)とはフランス語で「パ」はステップ、「ブレ」は詰め物をするという意味です。

 基本の五番ポジションから始め、横に移動するときは後ろ脚から動かし、すぐに前足で追いかけるようにします。足を床から離さず素早く細かなステップで移動します。足を閉じる・開く・閉じるというステップの繰り返しですが、そのつど重心を速やかに移動し、足を閉じて五番ポジションで揃えるときには、一つの足に見せなくてはなりません。

 パ・ド・ブレを美しく見せるためには、とにかく細かく動かすことが必要です。

 足の動かし方が遅く、鈍いパ・ド・ブレは重い印象を与えてしまいます。

 細かな動きをするためには、上体をしっかり引き上げなくてはなりません。

 また、パ・ド・ブレは、バレエシューズでやるのと、トウシューズでやるのとでは印象が大きく変わります。

 「3.ポワントについて」でお話ししましたが、ポワント立ちは、地面への接地面が狭いことが特徴です。

 そのため、より細やかで繊細な動きが可能となりました。

 バレエシューズでのドゥミ・ポアントより細かく足を刻みやすいのです。

 これが、空気を漂う妖精のような動きを生み出しました。


 パ・ド・ブレは移動のためのステップですが、優美で繊細なパ・ド・ブレは趣があり、舞台を情感深く盛り上げてくれます。


4.トゥシューズを履くために


 バレエを習う方なら誰でも、トゥシューズを履いて踊ることが夢でしょう。

 ですが、トゥシューズを履くためには、バレエシューズによる訓練が整っていることが必須です。

 上体の引き上げが出来ている、基礎が身についている、プリエをしてもぐらつかないなど、様々な条件があります

 ポアント立ちは指先だけで体を支えなければならないので、バレエシューズで踊る以上に引き上げが重要です。体重のコントロールも欠かせません。

 開始年齢は十歳から十二歳以降が適切と言われています。


 以上、拙い文章ではありますが、トゥシューズについてご案内させていただきました。

 今後とも『彼女と天使とバレエ+巡礼』をご愛読いただけますようお願い申し上げます。



※【補足】用語の解説;パ(Pas)について。


 パ(Pas)は、フランス語で、ステップや歩みなどを意味する単語で、バレエのステップやバレエにおける動き、踊りの種類という意味でも使われます。パ・ド・ブレ、パ・ド・バスク、パ・ドゥ・シャなどがあります。踊りの種類としては、パ・ダクシオン、パ・ド・ドゥなどがあります。

 これらについては、別の機会にご説明させていただければと思います。


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