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しかし何はともあれ、私は自分にできることを頑張ってやらなければならない。
赤間さんからお願いされたこと…幽霊の右手をみつけるための情報収集、それをがんばる。
次にいつ赤間さんが会いに来てくれるのか分からないけれど、そのとき赤間さんへ良い報告がしたいから。
あれからこんな新情報が手に入りましたよって話して、赤間さんをいい意味でおどろかせて…あわよくば「こんな短期間でそんな重要情報を集めることができるとは…素晴らしいですねマナさん」なーんて赤間さんに褒めてもらいたい。
よーし! 幽霊の右手をみつけて成仏させ、ご近所の平和を取り戻すためにも、はりきって聞き込み調査を開始しちゃうもんねー!
てな意気込みで私は、赤間さんと約束した夜の次の日から、さっそくご近所での聞き込みローラー作戦をスタートさせたのである。
これ以上、仁見先生の医院の周辺が微妙に心霊スポットと化している疑惑が広がらないように慎重に気を付けながら、さりげなーく私は、いろんな人たちからあらゆる奇妙な情報を収集することに成功する。
では、私が苦労の末に(おばちゃんたちの井戸端会議に気を遣いながら混ざってみたり、スーパーやコンビニでの噂話に聞き耳をたてたり、近所の子供たちにアメちゃんを配りながら話を聞いたり…)集めた情報の内容をご紹介していこう。
① 夜、仁見先生の医院の近辺で、黒い人影を見たような気がする。
不審者だろうか、なんだか怖い。(ご近所さん3名)
② 夕方に散歩していると、ミッチー(柴犬2才)が、仁見先生の医院の近くに来るたび、変にハイテンションになる。(ミッチーの飼い主さん)
③ よく晴れた昼間、仁見先生の医院の方角の方に目を向けると、動く影のようなものが見えるときがある。(医院のお向かいのおばあちゃん)
④ ステファニー(メインクーン系雑種4才)がうちから飛び出していなくなってしまった、探して欲しい。(ステファニーの飼い主さん)
⑤ 権蔵(シェパード8才)が、散歩の途中で仁見先生の医院の近くまで来ると、座り込んで動かなくなる、理由が分からず困っています。(権蔵の飼い主さん)
⑥ 最近、近くのスーパーの野菜が高い、許せない。(患者さん)
⑦ 仁見先生ももういい歳なのに結婚しないのかしら、いつも自宅に引きこもってばかりみたいだけど大丈夫なの…?(患者さん)
⑧ どんどん寒くなって日も暮れるのが早くなったから、うちに早く帰るようにってよく言われる。
夕方になると、いろんなおうちからワンちゃんの遠吠えが聞こえてくるようになって、ちょっとこわい気がする。(小学生の集団)
⑨ 散歩しているとイイチコ(チワワ11才)がいつも、仁見先生の医院の方角をジッと見ていることが多い、犬にしか見えない霊道とかがあるのかもしれない…。(イイチコの飼い主さん)
はい、ザッとこんなカンジです。
うーん…まあそれなりに情報はたくさん集まったよね…。
野菜が高いとか、仁見先生の引きこもりっぷりを心配するとか、幽霊とは関係ねーだろって内容の情報も混ざってたけど、しょうがない、こっちは仁見先生の医院の悪い噂(すなわち心霊スポットと化してるんじゃないか説)を広めないように注意深く慎重にご近所さんたちから情報を聞き出しているんだから、ミックスジュース的にいろんなお味の情報になるのも仕方ないのだ。
最近なにか変だなと感じること、困ったことはないですか、って、そういう聞き出し方をしたもんだから、幅広い情報が集まっちゃったのである。
それにしても、こうしてメモにして書き出してみると…ペット系の情報が多く集まったなー。
仁見先生の医院のそばを定期的に散歩している人たちへ、バラバラに話をきいたっていうのに、なんか…仁見先生の医院の近くに来ると、変なリアクションを取るワンちゃんが多いことに引くなー。
これってイイチコちゃんの飼い主さんが言っていたように、ワンちゃんたちは人間には見えない霊道とかそういうのが視えていて、それに反応しているのかな、そのヤバイ霊道てのが仁見先生の医院のそばを通っているとか…?
で、その霊道ってのがあるせいで、右手を失くした幽霊もこの辺に引き寄せられてるなんてことも…?
えぇ…もしホントにそうだったとしたら、私には対処しきれないよ…伯方の塩ではどうにもならないことなんでしょ霊道って…? よく知らんけど。
あの頼りがいのある赤間さんだったら、たとえ霊道とやらが問題の大元であったとしてもどうにかできるのかな? んー…できそうな気もするぅーイケメンの力でなんとかしてくれそうな気がするぅー。
…って、そんなこと言ってる場合じゃなくて。
こんなワンちゃんてんこ盛りの情報ばっか集めても、赤間さんによろこんでもらえるのかどうか、分からない…。
幽霊らしきものを見たって人もいたけど、それは前回に引き続き、それほどNEWな情報じゃなかったし、幽霊の右手発見のための役に立てるレベルじゃなかった。
それどころかむしろ、いなくなった迷子の猫ちゃんを探してくれって、別の失くしものまでお願いされる始末だし…もう。
あーどうしよう、赤間さんへこんな情報結果を伝えて、がっかりされちゃったらどうしよう。
もちろん赤間さんは紳士で優しいから、仁見先生のようにプギャーって私のことをバカにしてきたり、露骨にがっかりした顔をしたりなんてことはなくて、そっと微笑んで「ありがとうございます」って言ってくれるのは分かってるけど、それでも申し訳ないな…もっと幽霊の右手の居場所の確信に迫る情報をゲットしたかったのに。
もうちょっと、別のいい情報が見つかるまで粘ってみようかな…。
って一人で悩んでいたところで、その夜、赤間さんは仁見先生の医院へとやってきたのだった。
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