第23話
―― 彩ちゃんへ
こんにちは!いや、こんばんは!かな。
俺はユート……落合悠人です。
突然の手紙でびっくりだよね。
俺は彩ちゃんにずっと言えなかったことがあります。
彩ちゃんがマシュウおじさんと思っている人は……実は俺なんだ。
ずっと言えなくてごめんなさい。彩ちゃんは今、この手紙を読みながらきっと驚いてそして怒っているだろうね。
俺も最初はアン様が彩ちゃんだなんて知らなかった。
いつかアン様がマシュウおじさんに放送部に入ったと手紙に書いていたことがあったでしょ?
その時、俺は放送部の新入部員として入ってきた彩ちゃんが、もしかしたらアン様では?と初めて気づいたんだ。
こんな偶然があるんだって正直驚いたんだ。
でも、俺がマシュウおじさんだなんてどうしても言えなかった。
彩ちゃんの夢を壊してしまいそうだったし、俺だと知ってガッカリさせたくなかったんだ。
だから、俺はマシュウおじさんになりきることにした。
なりきって彩ちゃんを支えようと決めたんだ。
ほんと言うと俺の方が、俺の方こそ、彩ちゃんに支えられてると気づいたから。
俺は彩ちゃんにどうしても伝えたいことがあるんだ。
だからその前に本当のことを話しておきたかった。
彩ちゃんは怒って許してくれないかもしれないけど本当にごめんなさい。
この1年間、俺はマシュウおじさんとして放送部の先輩としてずっと彩ちゃんを見てきて素直で明るくて一生懸命な彩ちゃんがいつの間にか頭から離れなくなって気づいたら誰よりも大切な人になっていたんだ。守ってあげたいと思うようになったんだ。
俺は彩ちゃんが好きです。大好きです。
バレンタインデーの日にマシュウおじさんの手紙に彩ちゃんは本命さんがいてチョコを渡すつもりだと書いていたでしょ?
俺はもしかしてって期待して待っていたんだ。
放送部の部室にも行ったけど彩ちゃんはその日、部活にも来なかった。
俺はショックを受けて誰だか分からないけど本命さんに嫉妬もしちゃったよ。
バカみたいだろ。笑っちゃうよな。
諦めようと思ったけど、彩ちゃんに会ったらやっぱり気持ちにウソはつけないなと思って振られるのは覚悟で告白しました。
これが今の俺の正直な気持ちです。
一方的に伝えたけれど迷惑だったら忘れて下さい。
P.S.明日からは今まで通り部活の仲間として変わらずよろしくお願いします。
―― 落合悠人より
♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡
ホワイトデーの朝にポストに入れておくにはその日部室で彩に会うのに勇気がいるので、夕方彩が自宅に帰ったその後に、そっとポストに分かるように置いておくと決めて、夕方家に持って行っておいた。
幸い誰にも会わず、置いておくことができた。
(彩はこの手紙を読んでどんな反応を示すだろう)
もしも嫌われたらと思うと怖かった。
それでも、本当のことを言って謝らないといけないと思った。
そのうえで、彩への気持ちも告白したかった。
その夜、悠人はほとんど眠れず、新聞配達に出かけて行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
悠人はいつになく緊張して新聞配達をしていた。
彩の家に近かづくと、ますます緊張していた。
(昨日の手紙、読んだかな)
(プレゼント気に入ってくれてるといいんだけど)
(まだ気づいてないってことはないよな)
(今日、部室に彩ちゃん来てくれるかな)
(怒っているかな)
(あぁ~、ダメだ、ダメだ)
そんな気持ちを振り切ってペダルを漕ぐ。
遠目に彩の家が見えてきた。
(ん?)
誰かが走ってくるのが見えた。
その姿を彩と認めて、悠人は飛び上がりそうになった。
「ユート先輩~!」
と叫びながら彩が近づいてきた。
「あや……ちゃん」
俺は不覚にも泣きそうになった。
完
特別編 おまけがあります。
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