第20話
バレンタインの翌日、悠人は失意のどん底ではあったが部活は休まなかった。
彩は部室に顔を出したが、悠人に対してなんだかよそよそしく感じた。
気のせいかと思うようにして、帰りがけに彩に思い切って声をかけてみた。
「すぐ帰る?」
彩は避けるように
「はい、美玖と約束しているので」と言いながら美玖の手を取って
「お先に失礼します」と言って二人して出ていった。
悠人は悲しかった。
(嫌われた? でもなぜ?)
◇◇◇◇◇◇◇◇
放送部の部室では、3年生のお別れ会の準備で賑わっていた。
部室に集まった、2年生1年生が、思い出のショートムービーを作る作業や、思い出のアルバムを作るために、部活の時の写真を集めたり、お礼のメッセージを書いたり忙しくしていた。
彩も今まで通り自然に接してくれるようになって悠人も安心するのだった。
お互い意見を交換しながら最高の『3年生を送る会』にしようと知恵を出し合っていた。
悠人と亮は、ショートムービーを作るのは得意分野だったので、意気揚々と音楽を選んだりしながら編集を行っていた。
春香と美玖と彩はイラストやシールなどでアルバムをデコレーションしながら、
「あの時は面白かった」とか「緊張した」とか思い出話で盛り上がりながら作り上げていった。
その甲斐あって卒業式の前日に部室で行われた『3年生を送る会』は盛大に賑やかに盛り上がった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
3月1日、この日3年生は卒業していった。
3年生が卒業すると、学校が少し静かになった気がした。
3年生が卒業後、早速部会が開かれ次回の部長、副部長を決めることになった。
亮が挙手して
「僕は部長に落合悠人、副部長に水野春香を推薦します」と言った。
彩と美玖は事前に亮からこのことは聞かされていて、異存はなかったのですぐに
「賛成!」と大声で言って拍手した。
悠人は最初は反論していたが満更ではなく春香と顔を見合わせて引き受けることにした。
早速、新部長に選ばれた悠人が挨拶を始めた。
「え~、ただいま部員の皆様の絶大なる支持を得まして新部長に選ばれました落合悠人でございます。僭越ながら一言ご挨拶を申し上げます。
え~、放送部は毎年入部が少ないのが難点でして来年度は部員総力をあげまして新入部員を増員し今の倍にしていきたいと考えております…………精一杯頑張る所存ですので皆様のご協力のほどよろしくお願いします。みんなで盛り上げていきましょう」と本気かどうか分からない至ってまじめな挨拶にみんな大笑いしていた。
「なんちゃって」と悠人も大笑いしていた。
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