第19話
『アン』から手作りチョコをもらって嬉しかったが、悠人は心穏やかではなかった。
バレンタインの今日、彩が渡そうとしている本命はいったい誰なんだ?
悠人は、ほんの少し期待をもって学校へ行った。
一日中ソワソワして、授業中も心ここにあらずだった。
授業が終わると、悠人はある女の子からメモを渡された。
そこには「授業終了後、体育館に来てください」と書いてあった。
早く部活に行きたい心を押さえて、悠人は体育館に行ってみた。
そこには、同じクラスの女子生徒が待っていて、自然と体育館の裏に導かれた。
そして、
「チョコ受け取ってください」と手渡された。
悠人は驚いたが正直に
「俺は好きな子がいるので義理チョコだったらいいけど本命チョコは受け取れないよ」と言った。
「バ~カ!義理チョコに決まってるでしょ!」と笑って言うので
「だよね」と悠人も笑って答えた。
その女子生徒の真意はわからないが、しばらく雑談をして別れた。
まさか、このやり取りを彩が目撃してショックを受けているとは悠人は知る由もなかった。
その後、悠人は急いで部室に向かった。
なぜか彩は部室にその日は現れなかった。
悠人は彩がチョコをくれるのではないかと少しでも期待した自分が惨めになった。
では一体誰に彩はあげたのか?
彩の本命はいったい誰なのか?
失意のまま、自宅に帰って、『マシュウおじさん』宛にもらった彩からの手作りチョコを改めてみたが、どうしても食べる気にならなかった。
それでも、心を奮い立たせて、『アン』にお礼の手紙を時間をかけて書いた。
翌日のポストに新聞と一緒に入れておくためだ。
『アン』が抱いている『マシュウおじさん』への期待は裏切りたくなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます