第11話

 彩は原稿ができてホッとした。

が、それもつかの間、早速原稿を読み上げるよう山本先生に言われ、原稿を読むたびにダメだしされた。


しゃべる速度。

アクセント。

鼻濁音の活用。

表情。

声の大きさ、抑揚……etc

これでもかこれでもかというほどに。


何度も読み上げるうちに新たな問題点を指摘される。

彩は山本先生が鬼かと思ったほどだ。

そんな辛い思いを彩は『マシュウおじさん』に手紙に書いて愚痴るのだった。


悠人は、彩からの手紙に


―― 実は私、マシュウおじさんの手紙がめちゃくちゃ楽しみなんです。

マシュウおじさんの手紙を読んだらすごく元気が出るんです。

だからパワーを下さい。お願いします。――


そんな風に書いてあるのを読んで、自分が頼られてることに、喜びを見出し、力になりたいとさらに思うのだった。

それと同時に、『マシュウおじさん』が自分であることを名乗れないジレンマも感じていた。

このまま『マシュウおじさん』に成りすませていいのか?

彩ちゃんをだましたことになるのでは?

答えが出ない悠人だった。


 悠人は、彩の頑張っている姿をいつも部活で見ていた。

コンテストに向かって頑張ってほしいと思った。

その思いに嘘はない。

そんな想いを込めて、精いっぱいの励ましの手紙を書いたのだった。

どうか、彩ちゃんの心が少しでも楽になって、目標に向かって頑張ってくれますように!

『マシュウおじさん』として、応援しよう!

そう思うのだった。

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