第63話二体目


 朝食を食べてから眠気があって仮眠をとっていたつもりが起きた時にはもう既に夕方になりつつあった。


 ベッドから起き上がり部屋の扉を開けるとサラが立っていた。


「ようやく起きたかお嬢様がお前をお待ちしている私に付いて来い」


 サラに付いていく、サラの髪はツインテールをから会った時と同じロングストレートに戻していてメイド服から軍服に着替えていた。


「彰人様来てくださったのですね!!どうぞこちらに」


 サラに連れて来られた場所には御嬢瑞希の他にメイドや執事達が十数人横に並んでいた。


 御嬢瑞希に連れられて席に着く長テーブルには生まれてから初めて見るような食事が目の前に並んでいた。


「えっとこれは……?」


「私の勝手ごとですが彰人様と一緒に食事をしたくて、もしかして迷惑でしたか……?」


「別に迷惑とかは考えてないけど、それに俺は今ここでお世話になってる身なんだし何も言えないよ」


「よかった……本日はメイドではなく三ツ星シェフに直接料理していただいたので彰人様が気に入ってくれればよろしいのですが」


 そして長テーブルに並んでいた食事達をメイド達が近くに運んでくれた。


「いただきます」


 俺が手を合わせるていただきますと言うとメイドと執事達全員から視線浴びた。


「俺、何か変な事言ったかな?」


 傍に立っていたサラに聞いてみる。


「この家でいただきますは禁止されていて黙って食べるのがルールだ。なんでも何百年と続く御嬢財閥のしきたりらしい」


 それなら俺も黙って食べよう。


 だがやはり無言で食べるのは少しおかしな感覚があるどうやらこれが御嬢瑞希の普通なのだろう。


「大変に美味な食事でした。彰人様はどうでしたか三ツ星シェフに直接料理していただいた味は」


 正直に言うと味など食べている時に考えていなかったただ率直に美味しかったと言ってこの場を切り抜ける。


 そして食事が終わってから風呂に入りたいと思い大浴場に来てみたが大浴場の中に入ってすぐに広さに驚いた、大浴場の広さだけで俺の家位あったのだ。


「でも今日は久しぶりに少し穏やかに過ごせた」


 ここ最近亜梨沙姉ちゃんの事でずっと頭から離れなくて何も感じなかったのだ、だがここに来て少し変化があったのかもしれない。


 のぼせる前に大浴場の湯船から上がって部屋に戻る。閉まっていたはずの窓が開いていたのだもしかしたらサラが気を利かせて換気の為に開けたのだと思ってベッドに寝転ぶ。


「ずっとこのままって訳にはいかないからな」


 いい加減自分でも理解して分かってはいるのだがはりそう簡単には亜梨沙姉ちゃんの事は忘れられる訳がない。


「亜梨沙姉ちゃん」


 愛刀天花から受け取っていた写真を着替えたズボンのポケットから出す。ずっとポケットに入れっぱなしだったので少しくしゃくしゃになってしまった。


「……」


「おい、お前何やってる」


「……!?」


「これで昨日今日と合わせたら二体目だぞ」


 深夜ぐっすりと寝てる彰人をずっと眺めていた不審者の首をサラが短刀で斬る。首はゴロゴロと転がっていき胴体が寝てる彰人に倒れそうだったので受け止めすぐに窓から外に投げ捨てた。


「全くお嬢様や城田亜梨沙のお願いとはいえ御嬢財閥の本邸にこうも易々と簡単に侵入されたら……幾ら私でも寝てる時まで彰人を守る事は出来ないぞ」


「あ……あ……あっくん」


「まさか今回は首を斬られても喋れるのか。流石はアンドロイド一日でそこまで改造できる術も持ち合わせてる訳か」


 転がった首を持ち上げてサラは物音を立てずに静かに部屋から出ていく。


「いつまでもあっくんをここに閉じ込めていられると思わないで」


「別に私自身彰人をここに閉じ込めてる訳じゃない、お嬢様の計らいで今は彰人がここにいてるだけだ。それにもしも今後彰人がここから離れたいと言ったなら私が全力で手助けをする。私は城田亜梨沙から彰人の事を頼むとお願いされたからな」


「あの女は死んでもなおあっくんを独占する気でいるのね」


 最後に一言言い残して首は喋らなくなった。首と外に投げ捨てた胴体を回収して本邸にある大型焼却炉に突っ込んでサラは彰人の隣の部屋へと戻る。

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