第62話彰人の世話係サラ
「彰人様この部屋を少しの間お使いください。誰も使っていなかった部屋なので少し埃っぽいですが……メイド達に明日までに清掃するよう伝えたのでごゆっくりお過ごしください」
御嬢瑞希の本邸に到着する。
リムジンを降りてそのまま御嬢瑞希に付いていくと俺の部屋よりも何倍も広い部屋へと案内される。
「もし何かあればサラをお呼びください彰人様の世話係として隣の部屋に待機させますので」
「そんな!?私にはお嬢様の安全を確保する義務が」
「サラ、それは別の者にやらせるからあなたは今から彰人様の世話係です。それとサラもし彰人様の身に何かあれば……分かってるわね」
「りょ、了解しましたお嬢様」
御嬢瑞希の前に跪き少し焦った声で命令を引き受けた。その後すぐに御嬢瑞希が部屋から出ていくのを眺め部屋には俺とサラと名乗ったメイドと二人っきりになってしまった。
「なんでこの私がお前なんかの世話係に任命されなければいけないのだ」
御嬢瑞希が部屋から出てすぐにサラという女が愚痴を零した。
「大浴場はこのまま真っ直ぐに行ったらある。それと毎朝他のメイドが部屋に食事を運んでくるが好き嫌いはせずにちゃんと食べろいいな」
色々と場所の案内をされるのだがやはり怒り気味である。
「あと急ぎでも何もない限りは私を呼び出したりするな。これはお願いとかじゃなく命令だ」
こんな所で問題でも起こして御嬢瑞希に迷惑をかけたくなかったのでこくこくと頷く。
「場所の案内は以上だ私は他の所に行くが何か聞きたい事があれば今すぐに聞けできる限りは答えてやる」
「あなたの事はどうお呼びしたらいいですか」
サラという名前だけは知ってるが、いきなり名前呼びも失礼な気がするので聞いてみた。
「普通にサラで呼んでいい、お嬢様や本邸にいる人間も皆そう呼ぶ。他には」
「それだけ聞ければ十分です」
「ならまた後で少し様子を見に来る」
「え……何もない限り呼び出したりするなって言ってたのにですか」
「お嬢様の命令だからだ」
サラは声を荒らげて扉を強く閉め出て行ってしまう。
そして翌朝御嬢瑞希が言っていた通りメイド服を着た方達が数人集まり部屋の清掃を始めた。
俺は邪魔をしないよう部屋から出ていく、昨日のサラの話じゃこの先に大浴場があると聞いていた。だが着替えなど持ってきてなかった俺は一度サラに相談しようと隣の部屋に行こうとしたのだが。
「隣ってこんな遠いのか」
歩いて数十分位経つが隣の部屋なんて存在しないと思っていた頃遂に扉が見えた。
扉をノックしてからすぐに扉が開かれた。そこにはサラが軍服を着て長い金髪をツインテールにしている姿だった。
「何の用だ」
「えっと大浴場に行きたくて着替えとかタオルは」
「だったら大浴場にお前専用の服が既に用意されてる筈だから大浴場に行ってそこにいる執事に伝えれば受け取れるはずだ」
「ありがとう」
サラにお礼を言って大浴場までの道を歩く。サラの部屋に行った時同様に長い道程だったが大浴場に着くことができた。
そして大浴場の入口に執事服を着た年配の男性が立っていた。
「城田彰人様ですね。申し訳ないのですがただいま大浴場はメイド達が使っており多少お時間頂きますがよろしいでしょうか」
「そうなんですねだったらまた後で来ます」
「お待ちをお嬢様から仰せつかってお預かりしている物が。こちら城田彰人様のご洋服とバスタオルでございます。私も席を外す事がありましてもしもの為に今渡しておいてもよろしいですか」
「ありがとうございます」
年配の男性から受け取り来た時同様の長い道程を歩いて部屋へと戻る。どうやら部屋を清掃しに来ていたメイド達はいなくなっており部屋には埃すらなくここに来た時とは断然に綺麗になっていた。ベッドなんか新品でも買ったようにようにふかふかで匂いを嗅ぐとお日様の匂いがした。
「城田様」
いきなり声をかけられ振り返る。そこに立っていたのはサラだった。だが格好がさっき会った時とは違って軍服からメイド喫茶等で見かけるフリフリのメイド服を着ていたのだ。
「朝食です」
「ちょっと待って今考えが全然追いつかないんだけどもしかしてサラ……?」
名前を呼ぶとサラはこちらを睨んでくる。
「朝から夕方まではメイドとしてここで働いているんだ……ううん働いているのです」
咳払いをしてサラは言い直す。
「他に用がなければ失礼します。また後ほど片付けに伺いますので」
サラは部屋から出て行ってしまうサラが運んできた朝食はカフェなどでよく見かけるテーブルに置かれていた。席に座ってサラが持ってきた朝食を口にする。
「彰人様」
朝食を食べている途中に御嬢瑞希が部屋にやってきた案内された時とは違って服装は制服に着替えていた。
「学校に向かう前に一度彰人様の様子を確かめたくて参りましたがどうですか私の家は」
「充分過ぎる程お世話になってるよ」
「ふふ……でしたらよかったです。また帰ってきたら会いに来ますね」
「そうだ、ちょっと待って!!」
「どうかなされましたか……?」
「久遠に心配しないでって伝えてほしいんだ。幾ら両親が了承してたとしても久遠は多分知らないと思うから」
「はい私から久遠様にしっかり伝えておきますそれでは行って来ます彰人様」
「うん、行ってらっしゃい」
御嬢瑞希を部屋から見送り、いつの間にか俺は亜梨沙姉ちゃんの事を少し考えなくなっていた。朝食を食べてから眠くなりベッドで仮眠を取っていた時の事。
「ふむ睡眠薬を少し盛りすぎたか……」
誰かの声が聞こえるが誰だ? 目を開けようにもぼやけていて誰が立っているのか分からない。
「今は安心して眠っていいぞ彰人」
「亜梨沙姉ちゃん……?」
頭を撫でられ、そこに立って頭を撫でていたのが亜梨沙姉ちゃんだと思って俺は呟く。
「すまんな私はお前の望む城田亜梨沙ではないんだ。だが安心しろお前に手出しする奴はこの本邸にはいない。それにもしお前に手を出す輩がいたら私自ら……だから今は安心してゆっくり寝て大丈夫だぞ……彰人」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます