第52話城田亜梨沙の様子がおかしい
撮影用のセットには数人の他の出演者が既にセット内で何度か台詞を読み上げていた。
「それじゃあまずアイセブンのオーディションを行った時と同様にメンバーの方には演技をしてもらいます。昨日リハーサルで確認した動きに合わせてカメラリハーサルを挟むのでよろしくお願いします」
助監督の指示に従いカメラリハーサルが始まる。
「はぁー……」
「亜梨沙姉ちゃんどうかしたの溜息なんて吐いて……?」
「彰人君……ううんなんでもないよ……!!」
リハーサルの休憩中亜梨沙姉ちゃんの様子がおかしい事に気付いて声をかけたが亜梨沙姉ちゃんはなんでもないと言う。
「そう俺遠慮とかそんなの嫌いだから何か相談とかあったら言ってね」
「うん、ありがと彰人君」
「ねぇちょっと買ってきて欲しい物があるんだけど……」
また三島奏に頼まれる。昨日から休憩中ずっと三島奏に注文され買ってきているが大人しく従う。
「彰人さん……私も付いて行って……いいですか?」
急に後ろから声をかけられ振り返る。立花波華が声をかけてきたようだ。
「別にいいですけど、今度からいきなり後ろで声をかけないでもらっていいですか少し驚くので」
「……あ……!!ごめんなさい……」
立花波華と共に三島奏に頼まれた物を買う為撮影所の外にある自販機に到着。
「奏ちゃんから何を頼まれたんですか……?」
「これが欲しいんだって」
自販機の購入ボタンを押して三島奏から注文のあったおしるこを取り出す。
「おしるこ……?」
「そう、なんか知らないけど飲みたいんですって。てか夏間近に暖かいおしることか本当に飲むんですかね?」
「奏ちゃんおしることか飲まないのにどうして……?」
「何か言いました?」
「いえなんにも……あそうだ彰人さん亜梨沙さんと付き合い出したんですよね。おめでとうございます」
「私の顔何か付いてます?」
「その昨日から城田さんって呼んでたのに急に名前呼びになってたので」
「……!! ごめん……なさい……迷惑でしたか……?」
「いや迷惑とかじゃないんですけど少し不思議に思って」
「彰人君……!!」
「亜梨沙姉ちゃん」
亜梨沙姉ちゃんが小走りにこちらへと駆け寄ってくる。
「本番始めるから急いで戻ってくれって」
「ああ分かった。それじゃあ戻りましょうか」
立花波華からの答えは聞けなかったが、まあ別に名前呼びになってても気にしないでいいだろう。
本番が始まり場は緊張感に包まれる。
「はいカーット!!亜梨沙さんまた台詞間違ってるよ」
亜梨沙姉ちゃんが本番になってから助監督に注意される回数が増えた。
「今日はここまでしましょうか」
「ごめんなさい私のせいで」
「いやまぁ撮影は明日もあるんだし。けど亜梨沙さんも分かってると思いますがこのままて訳には」
「はい、はい明日までには」
亜梨沙姉ちゃんが助監督と何か話してるようだが気になって近付くが近付いた時には話が終わっていた。
大方予想はつくきっと今日の亜梨沙姉ちゃんの演技についてだろう。
「あーきーとさーん……!!」
「うわっと!?」
いきなり背中に湊心愛が飛び乗ってきた、いきなりだった為驚いてしまう。
「疲れました。このままおぶってホテルまで送ってください」
「私先にホテル帰ってるから」
「亜梨沙姉ちゃん待って」
亜梨沙姉ちゃんには声が届かず亜梨沙姉ちゃんはそのままスタジオから出ていく。
「あきとさん聞いてます……? あーきーとさーん」
「はい、はい聞いてるよホテルまでだな」
「はいお願いします」
湊心愛はアイドルらしく笑顔を向ける湊心愛をおぶってスタジオから出て撮影所の外に出る。
亜梨沙姉ちゃんが横断歩道の信号で立ち止まっていた。
「亜梨沙姉ちゃん?」
湊心愛をおぶったまま信号待ちしている亜梨沙姉ちゃんに近付く。
「彰人君と心愛ちゃん?」
「お疲れ様です亜梨沙さん」
背中からぺこりと頭を下げて亜梨沙姉ちゃんに挨拶する湊心愛。
「彰人君大変だね心愛ちゃんをおぶってホテルまで帰るの」
「ちゃんとマネージャーの仕事してるだろ」
「それ本当にマネージャーの仕事」
亜梨沙姉ちゃんが微笑んで答える。
「亜梨沙さん今日は何かあったんですか。ずっと演技に集中できてないって感じでしたけど」
「心配しないで明日には必ず元通りになってると思うから」
亜梨沙姉ちゃんは信号が青になると横断歩道を渡ってホテルへと入っていく。
「……彰人さん降ろしてください」
いきなり降ろせと言ってくる湊心愛の言葉を聞きホテル前で降ろす。湊心愛は俺の隣に隠れるように歩く。
「あの人達知り合いなのか……?」
「彰人さんよく分かりましたね」
ホテルへと入り湊心愛に声をかける。
「中学の同じクラスの男子生徒です……て言っても私がアイドルになって言い寄ってきた男子生徒の一人ですけど」
「私ああいう人嫌いなんですよね学校でも話しかけてこない癖してアイドルになった瞬間言い寄ってくるのって。だから中学でも友人は数人しか作らなかったんです」
「俺はそんな事情とか知らないけどやっぱ告白されたりするのか?」
「毎日中学に行くだけで告白してくる男子はいますよ。しかも毎回違う男子ですからもう一体何人から告白されたのか数えてません」
「アイドルも大変なんだなぁ」
「……彰人さんはどうなんですか」
「……俺?」
「だって亜梨沙さんと付き合いだしたんですよね……? それに……亜梨沙さんとかと付き合う前に前回行ったLIVEの最後に天花さんにも告白されてましたけど。やっぱり彰人さんも学校で告白されまくってるんじゃないですか」
「そんなにはない」
「そんなにはないって事は何人かからは告白されたんですね」
「それじゃあまた明日な」
「彰人さん答えて下さいよ!!」
「逃げるが勝ちって言うだろそれじゃあ」
湊心愛からの問いただされる前にホテルの自分の部屋へと戻るつもりだったのだが急遽スマミフォンに通知が届く。
「亜梨沙姉ちゃん……?」
画面には亜梨沙姉ちゃんと表示される。
彰人君ちょっとね大事な話があるんだ。
急いでさっきのスタジオまで戻ってきてくれない?とメッセージには表示されていた。
すぐ行くよと返事を返してそのまま撮影所へと走る。
撮影所のスタッフにスタジオの鍵を貸してもらい入ると真っ暗で何も見えない。
「亜梨沙姉ちゃん? 来たけど」
声をかけるがどこからも反応がない。
スマミフォンのライトをスタジオに灯す後ろから足音が聞こえ振り返るが誰もいない。と思ったら下から体に向かって何か当てられた次の瞬間バチバチバチという音と共に俺は倒れる。
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